階段の寸法を決めるポイント! 住みやすい住宅にする階段設計とは
階段の寸法は、建築基準法によって高さや幅が定められています。
しかし、法律上問題がない最低限の寸法であっても、実際に上り下りしやすい階段とは限りません。また、デザインを重視するあまり個性的な階段を設計してしまうと、安全性や使い勝手の面が懸念されます。
注文住宅メーカーや工務店が気をつけるべきポイントは、安全性の確保はもちろんのこと、住む人にとって上りやすく不便を感じないような設計にすることです。
今回は、住みやすいと感じてもらえる住宅の階段の設計について解説します。
目次[非表示]
- 1.階段の寸法には規定がある
- 2.上りやすい階段にするポイント
- 3.プラスアルファで安全性を高める
- 3.1.手すりを設置する
- 3.2.踏み面には滑りにくい加工を
- 3.3.段差を見やすくする
- 4.まとめ
階段の寸法には規定がある
建築基準法では、階段の安全性を確保するために最低限の寸法を定めています。
小学校の児童用や劇場の客席用などにおいては、誰もが上り下りしやすい緩やかな寸法が定められていますが、一般的な住宅における寸法は次のようになっています (共同住宅の共用階段を除く) 。
階段および踊り場の幅:75cm以上
蹴上げ(けあげ):23cm以下
踏み面(ふみづら):15cm以上
踊り場位置:高さ4m以内ごと
階段の上りやすさには個人差があると思いますが、建築基準法の最低寸法で設計した階段では面積が小さく急な階段になるため、上りづらいと感じる人が多いといわれています。
たとえば、踏み面の最低の長さである15cmの場合、大人の足のサイズよりも小さくなるため、人によっては上り下りしづらいと感じるかもしれません。足をしっかり乗せられるほどの面積があると、安全性が高く、ストレスのない上り下りができるでしょう。
階段の寸法を考える際は、住む人が快適に上れて、女性や年配の方でも安全に歩けるような配慮が大切です。
上りやすい階段にするポイント
上りやすい階段とは、傾斜が緩く、“蹴上げ”と“踏み面”のバランスがとれた状態を指します。
蹴上げが高すぎてしまうと足を大きく上げなければならず、踏み面が小さいと足を乗せるスペースが十分でないため、転倒のリスクも出てきます。
身長によって上りやすさは異なりますが、住む人に配慮した階段にするためには、女性や年配の方でも上りやすい一般的な寸法での設計が安心です。
上りやすいといわれている階段の寸法は、次のように算出します。
蹴上げの2倍+踏み面=60cm
60cmは、日本人の標準的な歩幅と同じくらいのサイズであることから、老若男女問わず、上り下りしやすいとされています。
この計算方法で住宅用の階段を当てはめると、蹴上げが19cm、踏み面が22cmのときに60cmとなります。
合計が60cm未満の場合は踏み面が小さく小刻みな階段となり、60cmを超えてしまうと大股になってしまい疲れやすく、60cmほどが安全性ならびに快適性を確保できるというわけです。
ただし、この一般的な寸法と異なるサイズで設計する場合には注意が必要です。
特に踏み面が広く緩やかな階段にする際には、ほかのスペースとのバランスに注意しなければなりません。
緩やかな階段は上り下りの負担が少ないという利点がありますが、同時に蹴上げが小さくなるため段数を増やす必要があります。段数が増えると、建築資材のコストが増えるだけでなく、階段に広い面積を使うため、室内やリビングのスペースが小さくなるということも考慮しておきましょう。
プラスアルファで安全性を高める
住む人に安全かつ快適に過ごしてもらうためには、階段設計の細かな気配りが大切です。デザインに力を入れるだけでなく「あったらうれしい」と思ってもらえるような工夫を凝らすことで、住宅価値を高め、競合相手との差別化にもつながります。
階段は、住まいのなかで特に安全性が重視される場所となるため、女性や子ども、年配の方など幅広い世代でも安心して暮らせる階段を心がけましょう。
手すりを設置する
一戸建てやメゾネットマンションの場合、手すりを設置することは義務ではありませんが、安全性を高めるためには設置が望ましいといえます。手すりの高さは、大人と子ども用の2段階あることが望ましく、さまざまな家族形態で暮らす人にも高評価となるでしょう。
踏み面には滑りにくい加工を
階段の踏み面がフローリングの場合は、スリッパや靴下で歩くと滑りやすくなることがあります。滑りにくくするためには、踏み面の先に滑り止めテープを貼ったり、溝を掘り込んだりするという方法があります。
段差を見やすくする
階段が暗かったり、フローリングの木目で段差が見えにくかったりすると、踏み外しやつまずき転倒につながることがあります。階段の断面の配色を変えたり、踏み面の先に色をつけたりすることで、段差を見分けやすくなります。
また、階段が暗い場合には足元に照明を設置するなどの工夫も効果的です。
まとめ
リフォームや建て替え、注文住宅などで階段の設計を行う場合、建築基準法を守るほか、安全性に配慮することが大切です。デザイン性を重視しすぎるのではなく、誰もが上りやすい寸法で設計しましょう。
また、つまずき・転倒など、万が一の事故を防ぐためにも、子どもや年配の方に配慮したプラスアルファの工夫も考えましょう。手すりの設置をはじめ、滑り止めや照明設置など、こまやかな工夫が住む人の安全につながります。
信頼される住宅会社になるためにも、住む人目線の設計を心がけましょう。