住宅営業ノウハウ

土地の越境物には“覚書”が重要! 記載内容を紹介

工務店・ビルダーが敷地の現地調査を行う際に、越境物が見つかるケースは珍しくありません。越境物とは、土地の隣地との境界を越えた物のことで、塀やフェンス、樹木、電気の引込線、物置などが例として挙げられます。

越境物を放置したまま土地の購入や住宅建築を行うと、土地の境界・所有権について施主・隣人とトラブルに発展する可能性があります。

このようなトラブルを防ぐために、越境している隣地の所有者との間で覚書を取り交わしておくことが重要です。

この記事では、越境物に関する覚書の必要性や記載内容について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.越境物に関する覚書の必要性
  2. 2.越境物の覚書に記載する内容
    1. 2.1.①越境物の事実確認
    2. 2.2.②現状使用の承認
    3. 2.3.③越境物の撤去条件
    4. 2.4.④覚書の継承義務
  3. 3.越境物の覚書のひな形
  4. 4.まとめ

越境物に関する覚書の必要性

越境物の覚書は、土地の境界や所有権について、施主・隣人間のトラブルを防ぐために取り交わす必要があります。

敷地内に隣地からの越境物がある場合、そのまま放置しておくと、『民法』第162条に基づく時効によって、越境部分の土地の所有権が隣人に移行されてしまいます。

第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

引用元:e-Gov法令検索『民法』162条

土地の購入後や建築後に、越境物の所有権について時効が成立すると、隣人とのトラブルに発展するおそれがあります。

また、施主が所有する敷地に越境物がある場合、隣人に対して直ちに撤去を求めることはトラブルにつながりかねません。

建築への影響がなく(または軽微)、撤去に大掛かりな工事と費用が発生する場合などは、越境物の撤去要求ではなく、覚書の締結で対応するほうが円滑に進むと考えられます。

越境物の覚書を締結することで、越境の事実をお互いが認識して、越境部分の所有者や今後の撤去方針について合意を得たことを証明できるようになります。

このように、双方の土地所有者と覚書を取り交わすことは、隣人とのトラブルを防ぐとともに、所有権の取得時効を中断させる目的があります。

(出典:e-Gov法令検索『民法』)

越境物の覚書に記載する内容

越境物の覚書には、越境物があることの事実や将来の撤去などについて記載する必要があります。ここでは、覚書に記載する主な内容について解説します。


①越境物の事実確認

覚書には、土地所有者となる施主・隣人の双方が、境界線を越えた越境物が存在する事実を確認していることを記載します。

この際、越境物の内容(塀や引込線など)や越境箇所などを具体的に記載する必要があります。どのように越境しているかを把握しやすいように、確認図を覚書の別紙として添付することも可能です。


②現状使用の承認

覚書に記載が必要な項目として、「隣人が所有する越境物を現状のまま使用することを承認する」といった内容も挙げられます。

▼現状使用の承認に関する記載例

  • 越境物がある土地の所有者(施主)が、越境物の撤去や移動を請求しない
  • 現状使用を承認するのは、隣人が越境物の変化(建て替え・改築など)を行わない場合に限られる


③越境物の撤去条件

隣人が越境物を撤去する際の条件についても明示しておくことが重要です。撤去条件の例として、以下が挙げられます。

▼撤去条件の例

  • 隣人が将来的に建て替えや改築などを行う際は、自己の責任と費用負担によって越境物を撤去すること
  • 撤去後に越境部分の土地の所有権を主張しないこと


④覚書の継承義務

土地の所有者が変わる場合を想定して、取り交わした当該覚書の内容を継承することを記載しておく必要があります。

土地売買や譲渡などによって土地所有権が移転した場合には、作成した覚書の権利・義務を新たな所有者に引き継ぐため、不可欠な記載内容となります。

越境物の覚書のひな形

越境物の覚書に記載する内容は、越境物の状態や撤去を求める条件などによって異なります。ここでは、一般的なひな形例を紹介します。

▼越境物の覚書のひな形例

〇〇(隣地所有者)(以下、「甲」という)と、△△(敷地所有者)(以下、「乙」という)は、双方が所有する土地境界上の越境物について、以下のとおり合意した。


第1条

甲・乙は、甲所有の越境物(具体名)が、別紙確認図のとおり、乙所有の土地の境界線を越えて存在していることを相互確認した。


第2条

乙は、甲所有の越境物について、建て替えや改築等で現状変更しない限り、撤去請求をしないものとし、現状のまま所有・使用することを承認する。


第3条

甲は、甲所有の越境物について、将来に建て替えや改築等を行う際には、自己の責任と費用負担において越境物を撤去し、越境物の解消を図るとともに、越境部分の乙所有地について所有権を主張しないものとする。


第4条

甲・乙は、所有地を第三者に譲渡する際に、本覚書の権利・義務を当該譲受人に対して継承させるものとする。


※以下、覚書の締結日、甲・乙の氏名と住所を記載する

なお、覚書は2通作成して、双方の土地所有者の記名・押印のうえ、それぞれで1通を保管しておきます。

まとめ

この記事では、越境物の覚書について、以下の項目を解説しました。

  • 覚書の必要性
  • 覚書の記載内容
  • 覚書のひな形

工務店・ビルダーが住宅建築を行う際、施主の所有地に越境物がある場合には、越境物の所有者となる隣人と覚書を取り交わすことが重要です。

覚書の作成・締結によって、土地所有者の双方が越境物の存在を確認しており、越境物の撤去について合意を得たことを証明できるようになります。

覚書に記載する内容としては、越境物の事実を確認していることや、現状使用の承認、撤去条件、覚書の継承義務などが挙げられます。

越境物をめぐって将来のトラブルが発生しないように、境界確認時には越境物がないか現地調査を行い、覚書の締結準備を早期に進めておくことが大切です。

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