【住宅建築前の地盤調査】法的義務と3つの調査方法を解説
工務店・ビルダーが新たに住宅を建築する際、その土地が建物の重さに耐えうるか、沈下のリスクがないかなどを確認するために地盤調査を実施します。
現地調査での目視確認で異常が見られない場合でも、軟弱地盤や液状化のリスクが潜んでいる可能性もあるため、地盤調査の結果に応じて地盤改良を行うことが重要です。
しかし、「地盤調査は法令で義務づけられているのか」「地盤調査の方法にはどのようなものがあるのか」と疑問を持つ担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、地盤調査に関する法的な義務の有無をはじめ、地盤調査の代表的な方法について解説します。
目次[非表示]
- 1.地盤調査に法的な義務はある?
- 2.地盤調査の代表的な方法
- 2.1.①スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)
- 2.2.②ボーリング調査(標準貫入試験)
- 2.3.③表面波探査法
- 3.地盤改良が必要になるケースがある
- 4.まとめ
地盤調査に法的な義務はある?
住宅を建てる際の地盤調査は、『建築基準法施行令』第38・93条によって定められています。
第三十八条 建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令』第38条
第九十三条 地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力は、国土交通大臣が定める方法によつて、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令』第93条
また、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』の第94・95条では、新築住宅供給事業者は、10年間の住宅瑕疵担保責任を負うことが義務づけられています。
第九十四条 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百十五条、第五百四十一条及び第五百四十二条並びに同法第五百五十九条において準用する同法第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
引用元:e-Gov法令検索『住宅の品質確保の促進等に関する法律』第94条
第九十五条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法第四百十五条、第五百四十一条、第五百四十二条、第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
引用元:e-Gov法令検索『住宅の品質確保の促進等に関する法律』第95条
住宅瑕疵担保責任とは、建築した住宅に瑕疵(設計ミス・欠陥など)があった場合に、新築住宅供給事業者が10年間にわたって補修・損害賠償を行う責任のことです。
しかし、住宅瑕疵担保責任の履行にあたっては、工務店・ビルダーが倒産していたり、賠償金が高額になり支払えなくなったりするケースも考えられます。このようなトラブルに備えて、工務店・ビルダーには住宅瑕疵担保責任保険への加入や保証金の供託が義務づけられています。
住宅瑕疵担保責任保険への加入には、地盤調査報告書またはそれに代わる書類の提出が求められるため、地盤調査が必要になります。
(出典:e-Gov法令検索『建築基準法施行令』『住宅の品質確保の促進等に関する法律』)
地盤調査の代表的な方法
地盤調査の方法は、大きく分けて3つの種類があります。専門家の意見を基に、建てる住宅の種類や地質に適した方法を選択することが大切です。
①スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)
地盤調査の一般的な方法として採用されているのが、スクリューウエイト貫入試験です。以前はスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていました。
この試験では、スクリュー状の鉄棒(ロッド)を地面と垂直に差し込み、所定の深さまでの沈み方(回転数、重さなど)から地盤の強度を確認します。敷地の4隅と中央の5か所を調査します。
調査時間は半日ほどで、ほかの調査方法と比べて費用を抑えやすいことが特徴です。ただし、10mを超える深さになると精度が低くなるため、大規模な住宅ではなく、一戸建ての住宅に用いられることが一般的です。
②ボーリング調査(標準貫入試験)
ボーリング調査は、アパートやマンションなどの大規模建物の地盤調査に用いられる試験方法です。
地面に円筒上の穴を掘り、地盤の強度や地質構造、地下水位の高さなどを計測します。土のサンプル採取によって、土壌汚染の調査や液状化判定などを行うことも可能です。
ただし、大型機械を搬入したり、やぐらを組んだりするため、作業に数日かかるほか、広い敷地が必要となります。スクリューウエイト貫入試験や表面波探査法より費用が高くなりやすいのが一般的です。
③表面波探査法
表面波探査法は、スクリューウエイト貫入試験よりも、効率的かつ高精度の地盤調査ができる方法です。
表面波探査法では、地面に微量の振動を人工的に発生させて、地面のなかで揺れが伝わる速さを検出することで、硬軟や強度を判断します。
前述した2つの手法とは異なり、地面に穴をあける必要がないため、重機が搬入できない場所の調査や、地盤改良後の確認検査に採用されています。
計測箇所は、敷地の4隅と中央の5か所で、調査時間は2〜3時間程度です。ただし、サンプル採取による土質調査や地下水位の調査には利用できません。
地盤改良が必要になるケースがある
地盤調査の結果、住宅を建てるための地盤が軟弱と判断された場合には、地盤改良工事を実施する必要があります。
地盤改良工事の主な方法は、以下のとおりです。
▼地盤改良工事の方法
工法 |
軟弱地盤の深さ |
工事内容 |
実施ケース |
---|---|---|---|
①表層改良工法 |
約2mまで |
地盤表層の土にセメント材を混ぜて地表面を固める |
勾配が少なく、地盤改良範囲が浅い地盤の場合 |
②柱状改良工法 |
約2~8m |
地面に複数の穴をあけてセメントを流し込み、コンクリート状の柱を造る |
不同沈下の可能性がある、または表層改良工法で対応できない場合 |
③鋼管杭工法 |
約30mまで |
地面に鋼管杭を打ち込んで地盤を強化する |
軟弱地盤が深い、または重機を搬入できない狭小地の場合 |
地盤改良が必要になる例として、地盤の一部に陥没が見られる、液状化や沈下のおそれがある、敷地・周辺が盛り土になっているなどのケースが挙げられます。
地盤改良工事を適切に行わずに住宅を建てると、自然災害で地盤が沈下したり傾いたりする恐れがあります。安全性を確保するためにも、地盤改良工事を適切に実施することが重要です。
まとめ
この記事では、地盤調査について以下の内容を解説しました。
- 地盤調査の法的義務
- 地盤調査の代表的な方法
- 地盤改良の工法・実施ケース
工務店・ビルダーが住宅を建てる際は、地盤の安全性や強度を確認するために、事前の地盤調査を実施することが義務づけられています。
建てる住宅や地質によって調査方法は異なりますが、一戸建ての住宅の場合は、スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)が採用されることが一般的です。
地盤調査の結果、軟弱地盤と判断された場合には、軟弱地盤の深さや地質に応じて地盤改良工事を実施します。
なお、建築後の瑕疵によるトラブルを防ぐために、地盤調査の内容や結果、地盤改良の必要性について施主にしっかりと説明しておくことが大切です。
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