マーケティング

商品企画は「見せる」から「暮らしが伝わる」商品開発へ進化

現下の市況環境は、やや持ち直し感はありますが、建築資材の高騰による住宅価格上昇局面にあり、今後の見通しについて予断は出来ません。また、コロナ禍の2年半を経てお客様の行動様式が変化しています。

従来のように多くの会社を観て回ることでの感染リスクを考慮され、事前に見学先を絞り込んで来場されるように変化したため、初回面談時の商品力と接客営業力の2つの差が大きくなっています。こうした環境下では商品企画の視点も大きく見直さざるを得ない状況にあります。

特に商品がもたらす「新たな暮らし」という視点での商品企画とその「暮らしが伝わる」モデル住宅の開発がポイントになっています。

目次[非表示]

  1. 1.商品企画は住宅という「モノを見せる」から新たな住まいでの「暮らしを見せる」視点へ
  2. 2.「暮らしが伝わる」モデル住宅のディスプレイ
  3. 3.お客様が自身の実現したい暮らしに気づいて行く「気づき共感営業」も併せて導入
  4. 4.受注棟数1.5倍、受注金額1.8倍、1棟単価1.2倍の成功事例
  5. 5.まとめ

商品企画は住宅という「モノを見せる」から新たな住まいでの「暮らしを見せる」視点へ

ほぼすべての住宅会社/工務店に於いて商品企画は、構造や性能といったハード面と、新たなプランや収納のアイデア、外観内観のデザインという「住宅というモノ」のソフト面で差別化を図ろうとしています。モノづくりの企業である以上そうした視点になることは止むを得ないことかもしれませんし、必要なことでもあります。

一方、お客様にとって、これから建てる住宅は半世紀以上に亘って続く暮らしの器です。時代の変化に対応し、さらにこれから先の時代を見通した、新たな「暮らしを提示」することが求められます。

本コラムでも2回に亘って新たな暮らしへ対応する商品企画の具体策を提示してきましたが、それらの「商品特長がもたらす新たな暮らし」をお客様へ体感体験を通じて分かりやすく提示することが前線では求められます。

つまり「どのような新たな暮らしが実現できるのか」という商品企画という「モノ」の開発がもたらす新たな暮らしという「コト」の提示です。住宅というモノを「見せる」から「暮らしというコトが伝わる」商品企画、これと連動した「モデル住宅の見せ方」、「暮らしを軸とした営業」という三位一体の考え方で商品企画をリンクさせて進める時代です。

「暮らしが伝わる」モデル住宅のディスプレイ

暮らしという言葉はよく使われるのですがこの漠とした概念は分かったようでわからないものです。
暮らしを因数分解すると

  1. 場   :リビングで
  2. コト  :家族でオンラインゲーム
  3. 登場人物:ご主人様、奥様、小4長男、小1長女と奥様の妹様ご一家(オンラインで参加)

というように「場」と「コト」と「登場人物」で暮らしになりますから、「どの場で、どんなコトを、誰としたいのか」でお客様の実現したいコト、実現したい暮らしが見えるようになります。

モデル住宅で「この場で、こんな楽しいコトが、家族で出来ます」ということが「見えるようにする」ことで、「この家族の休日の楽しみ方」という事例で「お客様を触発」することができ、「お客様ならどのようなことをしてご家族で楽しまれますか」という「個々のお客様が実現したいコト、実現したい楽しい暮らし」に気づき、ご一緒に組み立てて行くことができます。

先ず、モデル住宅に住まわれているという仮想家族を詳しく設定する必要があります。これによって「このご家族がこのように暮らしたいという根拠に基づいて、このモデル住宅はこのように設定されています」というモデル住宅の「設計根拠」、「コンセプト」を分かりやすく説明できるようになります。このように暮らし視点で落とし込んで初めて商品企画は「生きた商品力として機能」します。

商品企画意図が伝わるように、そこでの暮らしが見えるような本気のディスプレイで、この場で、この家族がこんな楽しい「暮らしを実現しています」という「暮らしが伝わる」工夫を徹底します。

お客様が自身の実現したい暮らしに気づいて行く「気づき共感営業」も併せて導入

「住宅というハコ」を買いに来ているお客様は、実は手に入れたいのは「住宅というハコ」ではなく「未来の暮らし」ということに気づいておられません。

そもそもお客様はご自身が実現したい暮らしに気づいていらっしゃいませんから、商品企画時には、その仕上げ段階のモデル住宅企画時に「楽しい暮らし、心豊かな暮らし」が伝わるようにディスプレイはじめ見せ方の工夫も含めて暮らしが伝わるように徹底します。

その上で、個々のお客様の未来の暮らしを触発し、気づいていただく気づき共感営業手法を並行して営業部門へ導入します。これによって、住宅というモノを「見せる」から「暮らしというコトが伝わる」商品企画、これと連動した「モデル住宅の見せ方」、「暮らしを軸とした営業」という他社と決定的な差別化が可能になる、三位一体での商品企画と商品運用の新たな展開が可能になります。

ほぼすべての住宅会社/工務店は、自社の特長としての構造や性能といったハード面と、新たなプランや収納のアイデア、外観内観のデザインという「住宅というモノ」の訴求に終始している中で、「お客様の暮らしを中心に考える」商品企画とモデル住宅での楽しい暮らしの見せ方、お客様を中心に置いた営業方式で「決定的な差別化」を生み出すことができます。

受注棟数1.5倍、受注金額1.8倍、1棟単価1.2倍の成功事例

FT社様は「暮らしが伝わる商品開発」と「気づき共感営業」の導入で前年同期比(1月~4月)の実績が受注棟数1.5倍(62棟)、受注金額1.8倍(22億6920万円〈税別〉)、1棟単価1.2倍(3660万円/棟〈税別〉)という実績を残されました。

特に顕著な特徴として価格上昇時期であったにもかかわらず価格対応を迫られることもなかったということです。また、従来はほとんどの案件で競合があったものが「会社名はお客様から出たことはあったが、これといった競合になっていない」「初回面談時に他社を突き放してしまったのだと思う」というご評価です。

まとめ

注文住宅事業の商品企画はモノとしての住宅視点から、「暮らしの器」としてのそこでの暮らし視点で、お客様を触発できる機能が求められています。

特にローコスト系の住宅と一線を画したビジネスをお考えの住宅会社/工務店には今後ますます重要になってくる視点です。

「性能とデザインが良いハコづくり」から「個々のお客様に生涯心豊かに、楽しく暮らしていただける住まいづくり」へと商品企画も進化する必要があります。30年ぶりの価格上昇場面です。この変節期をチャンスと捉えて商品企画を大きく変革しましょう。
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株式会社ハウジングラボ 松尾俊朗
株式会社ハウジングラボ 松尾俊朗
松下電工勤務で木造軸組改良工法(木と鉄の混構造/テクノストラクチャー工法)をはじめ様々な注文住宅事業形成手法を開発。ハウジングラボ設立後、様々な形態の161社の注文住宅事業サポートを実施。幅広い視点で各社の強みを活かした各社独自の注文住宅事業へナビゲート。

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