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住宅市場の動向は? 最新情報から分かる求められる物件とは

2019年10月1日からの消費税増税にともない、注文住宅メーカーやリフォーム会社への駆け込み需要が予想されていました。

しかし、政府は注文住宅における経過措置や、増税後の“エコポイント”、“住まい給付金”といった負担緩和策を検討していることから、駆け込みは前回の消費税増税時に比べて減少しています。


駆け込み需要が終了したいま、住宅業界では増税後にどのような市場動向が見込まるのかを把握し、増税への対策案を考えなければなりません。


本記事では、増税が住宅市場にもたらす影響を解説し、変化しつつある消費者ニーズや、今後の住宅業界における課題点について考えていきます。

目次[非表示]

  1. 1.消費税増税による注文住宅への影響
  2. 2.中古住宅のニーズが高まっている
  3. 3.利益の確保と他社との差別化が課題
    1. 3.1.業務の標準化によるコストパフォーマンスの改善
    2. 3.2.競合他社との差別化
  4. 4.まとめ

消費税増税による注文住宅への影響

注文住宅には、消費税増税による経過措置が適用されます。

増税は2019年10月1日より施行が予定されていますが、注文住宅の場合に限り、2019年3月31日までに請負契約が完了していれば、引き渡し時期にかかわらず8%の消費税が適用されるという内容です。


経過措置は中古住宅やマンションなどのリフォームにおいても適用となり、2019年3月31日までに工事請負契約を交わしていれば、リフォームの完了が増税後になっても消費税は8%が適用になります。

一方、分譲住宅やマンションの売買においては、原則引き渡し時点での税率が適用になります。


つまり、住宅業界における駆け込み需要はすでに終了しており、2019年4月に入った時点で実質的には増税後の対応が必要になってきます。


(出典:国税庁消費税室「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」)


今回の駆け込み需要は、住宅業界にとって大きな利益となったわけではありません。

消費者側はすまい給付金やローン減税によって増税分を充当できるといった理由から、駆け込み需要での新築住宅着工戸数はそこまで伸びなかったようです。


駆け込み需要が期待外れとなったことで、今後の住宅市場は価格競争がさらに強まると予想できます。“買い手市場”へと傾いているいま、いかに消費者ニーズに対応し、柔軟な価値交渉ができるかが大きな課題となるでしょう。

中古住宅のニーズが高まっている

駆け込み需要による新築住宅市場の大幅な増加が期待できなかった背景には、消費者ニーズの変化も挙げられます。


現在、住宅市場は、少子高齢化による世帯数の減少によって縮小傾向にあり、新築着工戸数は今後も減少が続いていくと見込まれています。その原因のひとつには、住宅取得層である30代の平均年収や金融資産が大きく減少していることにより、新築住宅の購入が難しくなっているということが挙げられます。


さらに注目すべき点は、消費者が住宅に求める意識にも変化があることです。新築にこだわるよりもコストパフォーマンスやスペックを重視したいという理由から、中古住宅やリフォーム物件へと関心が高まりつつあります。


このような背景から、住宅市場は新築事業からリフォーム事業へと需要が移り変わっており、住宅メーカーや工務店などのさまざまな企業がリフォーム事業に参入しています。


今後の住宅業界に求められるのは、業界の枠にとらわれない多角的なアプローチです。住宅メーカーであれば、中古住宅をリノベーションしてワンストップで手がけるといったモデル構築などが挙げられます。

利益の確保と他社との差別化が課題

増税後の大きな影響となるのが、住宅業界の価格競争とサービス競争です。


増税にともなって、住宅メーカーのみならず、資材メーカーや流通会社などが価格改定を行う可能性が高く、原価上昇は避けられない問題です。しかし、価格競争により売価が上げにくい状況でありながらも、消費者からはさらなるコストダウンと品質向上が求められ、従来の価格交渉だけでは競合相手との差別化が厳しくなるでしょう。


コストダウンが重要視される状態において、住宅業界が生き残るためには、“コストパフォーマンスの改善”や“競合相手との差別化”が必要不可欠といえます。


業務の標準化によるコストパフォーマンスの改善

原価上昇が想定される状況下で利益を出すためには、業務効率化による生産性の向上が必須です。


たとえば工務店の場合は、営業プロセスや予算案の作成、受発注管理など一連の業務をシステムで管理することで、社内業務を効率化できます。その分、力を入れるべき業務に労力を注ぎ、サービスの向上を図ることで、売り上げ向上にもつながるでしょう。


建設業などの施工現場においては、業務の情報共有や事前準備に必要以上の打ち合わせを行っているケースも見られます。特に営業担当者はさまざまな企業との連携が必要なため、その管理は複雑になりがちです。


こういった管理を効率化するためには、ITツールの導入を検討する必要があるでしょう。


競合他社との差別化

買い手市場であるいまこそ、競合相手にはない強みを生かして差別化を図ることが重要といえます。


しかし、差別化といっても、住宅メーカーと工務店では差別化の視点が異なります。


注文住宅メーカーでは、新築分譲住宅の販売会社に比べて、デザインや耐震性などの特徴を売りにできたり、デザインが自由に設計できたりするという強みから差別化を図りやすいといえます。リノベーションまでのワンストップ対応をはじめ、住まいに関わるサービスを提供して暮らし全体をサポートしたり、耐震性、オール電化を強みにしている企業もあります。


一方、工務店の場合は、設計方法や使用する資材などに限りがあるため、競合相手との差別化が難しいといえます。しかし、予算内で柔軟な対応をしたり、地域密着型の対応で素早く施工ができるなどの対応をすれば、自社の強みとしてアピールできます。デザインや商品の差別化が難しい工務店では、親身な対応や消費者のニーズに対応できる提案力が重要となるでしょう。

まとめ

消費税増税にともない、今後の住宅市場は買い手市場となり、競合相手との競争が強まると予想されています。さらに、消費者のニーズが新築市場よりも中古物件やリノベーションに目が向けられていることから、安さよりも付加価値を求める時代といえます。


住宅業界が増税後にも継続的な利益を生むためには、消費者ニーズを捉えた新しい商品やサービスで競合相手との差別化を図るとともに、業務効率化によって生産性を向上させ、人件費や経費をコストダウンすることが重要といえるでしょう。



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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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