売上高に気をとらわれすぎてない?経営改善は財務の仕組みが重要
黒字の企業でも資金繰りの失敗で倒産せざるを得ない「黒字倒産」という言葉もあるほど、売上高が良いのになぜか資金繰りが苦しくなるケースがあります。
会社の存続を大きく左右するものは、ずばり財務の経営力です。
今回は資金繰りの重要性を解説するとともに、経営改善に向けたポイントをご紹介します。
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売上高と利益と資金の役割
会社を経営していくには、資金のやりくりが非常に重要なポイントになります。
会社を経営していると「売上高」「利益」「資金」とそれぞれ違った役割を持つお金が発生します。
このお金の役割を勘違いしていると資金繰りが苦しい状況になり、従業員に支払う給与がなくなったり、仕入れができなくなったりと窮地に立たされる場合があります。
それぞれの役割を見ていきましょう。
売上高
商品やサービスを提供し、得た代金の全額を「売上高」といいます。
この中に人件費や製作コストなどの経費も含まれています。
利益
売り上げから、かかったコストを引いたものが利益になります。
コストとは商品を作るために素材などの元を仕入れた商品原価と人件費や光熱費、消耗品費、広告宣伝費などのかかった経費のことを指します。この利益が会社を大きくする財源になります。
資金
仕入れや製造、販売、雇用など会社の経営活動をするお金のことを指します。数ヶ月先の収支を見通して計画的にやりくりをするお金になります。
これらの経営に関わるお金の役割についてしっかりと認識をすることが、経営改善の近道といわれています。
売り上げが良いのに経営が悪化してしまう仕組み
会社の売り上げが下がったわけではないのに、厳しい財務状況を生み出してしまう場合があります。その原因はさまざまなことが挙げられます。
近年、建設業界は全体的に厳しい状況が続いているため発注先からの値下げ要請を受けても積極的に請け負う「ダンピング」が横行して利益を下げてしまう傾向が問題になっています。
ダンピングとは採算を無視して安売りしてしまうことを指します。
ライバル会社に仕事を取られないよう安売りをして仕事を請け負い、少ない利益で苦しい経営状況に追い込まれる建設業者が多くいます。
また、計画的な資金回収ができていなかったり、利益を見通さずに会社の拡大のために雇用を増やし新しく設備を購入したりと「売り上げ」ばかりを見てしまうことで資金が不足し、やりくりできなくなってしまう状況が経営悪化の引き金になっています。
例えば発注先から1億円近い大きな受注があっても、その分の仕入れができなければ資金不足により受注もままならなくなってしまいます。
利益が見込まれていても売上金を回収するタイミングを計画しなければ資金不足に陥る可能性があるので注意が必要です。
黒字倒産しないために資金繰り表を作成
経営を安定したものにするためには、まずは資金について把握することが重要になります。
経営者は意外と拡大戦力や事業について考えがちで、リアルな資金繰りについて把握できていないケースが多く見受けられることが実情です。
資金繰り表とは、お金の流れを把握するものになります。現在の資金を把握するとともに、数ヶ月先の資金状況を予測し、目標を立てます。
目標を達成するために資金計画を立てていくものを「資金繰り表」といいます。
資金繰り表には主に4つの項目を用意し、照合していきます。
営業収支
現金での売り上げや売掛金の回収など営業活動により入ってきたお金と、仕入れ金や人件費、経費、税金など出ていくお金を記入します。
財務収支
金融機関からの借り入れ、株式の発行や借入金の返済、配当金の支払いなど営業以外のお金の詳細を記入します。
経常収支
営業収支と財務収支を差し引くと今月の収支が出ます。
翌月繰り越し
前月の繰越金と経常収支を足したものが翌月の繰越金になります。
この資金繰り表の翌月繰り越し欄がマイナスになってしまうと資金繰りが苦しい状況を表すことになります。
マイナスになったタイミングで資金追加を検討することをおすすめします。
こうして資金繰り表で常に資金状況を把握することにより、早い段階で資金調達に行動を起こせるようになります。
この行動の早さが倒産してしまうか、経営改善できるかの分かれ道になることを頭に入れておきましょう。
資金を追加するには
やりくりに必要な資金が減ってしまったり、マイナスになったりした場合、資金を追加する行動をしましょう。
まずは"資金になっていない資産"を見直してみることがおすすめです。
"資金になっていない資産"とはどのようなものがあるか確認しましょう。
未回収の売上金
賃借対照表をチェックし、未回収の売上金がないかチェックします。
大量の在庫
倉庫などにたくさん商品が残っていたりしませんか? 廃棄処分するより安価で売ると案外売れたりするものです。
固定資産
生産性のない土地や事務所、設備などがないか確認しましょう。
有価証券
手形や小切手、株券など保有しておく必要があるか検討し、不必要なものは売却をしましょう。
これらの見直しをすることで、資金繰りが改善することもあります。会社の経営にとって必要か不必要かを見極めて行動することも経営者には重要です。
上記のような見直す資金がない場合は、金融機関に相談して融資を受けることが資金繰り対策の一つです。ここでも役立つのが先ほど紹介した「資金繰り表」です。
この資金繰り表から事業計画書を作成すると金融機関側としてもポジティブに判断しやすい材料となります。
まとめ
経営者は資金繰り表を活用して常に資金繰りについて意識を向けることが安定した経営のポイントと認識することが重要になります。