ICTやAIによる現場改革“i-Construction”とは?
i-Construction(アイ・コンストラクション)という言葉をご存じですか?初めて聞いた方もいれば、聞いたことはあってもどういう意味なのか忘れてしまったという方、理解が難しかったという方もいるかもしれません。
このi-Constructionによって建設現場は大きく変化しつつあります。住宅の仕事に関わっているならば、ぜひ知っておきたいキーワードです。
この記事では、i-Constructionの概要と具体的に実施されている施策についてわかりやすく説明していきます。
目次[非表示]
- 1.ICT、AIとは?
- 2.i-Constructionとは?
- 3.建設現場の課題
- 4.ドローンによる生産性の向上
- 5.ICT建機の可能性
- 6.3Kからの脱却
- 7.まとめ
ICT、AIとは?
本題に入る前に、i-Constructionを説明する際に理解しておいてほしいキーワードが2つあります。
ICT
Information and Communication Technology の頭文字をとったもので、情報通信技術と訳すことができ、遠く離れた人や物同士がコミュニケーションをとることを可能にする技術の総称です。
例えば、インターネットや電話などもICTに含まれ、広い意味で使われます。
AI
Artificial Intelligenceの略で、日本語に訳すと人工知能です。
AIは人間と同じように自ら学習するという特徴があります。内容によっては人間が行っていた作業をロボットに任せられるようになり、AIの発達はさまざまな作業の自動化につながるでしょう。
i-Constructionとは?
i-Construction(アイ・コンストラクション)とは、建設現場に“ICTの全面的な活用”などの施策を行うことで、生産性の向上を目指す取り組みのことです。目的はあくまでも「生産性の向上」であり、ICTの活用は生産性を向上させるための施策の一つです。現在はICTの活用は主に土木工事で行われているようです。
i-Constructionは2016年から始まり、2025年までに建設現場の生産性を20%向上させることを目標に現在進行形で行われています。
建設現場の課題
では、なぜi-Constructionという取り組みが行われるようになったのでしょうか。その背景には、高まる人材需要に対して供給が追いついていない建設業界の現状があります。
建設経済研究所によると、建設投資額は2010年から上昇しているにもかかわらず、建設業界の人口は1995年から減少傾向にあります。特に若者の割合が減少していて、建設業界の人口は今後も減少傾向が続くと考えられます。
(出典:2014年 国土交通省「「建設業就業者数の将来推計」(建設技能労働者の不足) 建設経済研究所」)
つまり、少ない人数で現在と同等もしくはそれ以上の仕事量をこなす、もしくは若者を建設業界に参入させる必要があります。そのために始まったのがi-Constructionという取り組みです。ICTの導入によって人間が行っていた作業の一部を機械が行うようになり、人間一人あたりの生産性が向上すると考えられています。これによって、少ない人数で今までどおりもしくはそれ以上の作業を可能にするでしょう。
ドローンによる生産性の向上
ICTが活用されている例の一つが、ドローンによる測量です。ドローンを使用することで建築物の空撮ができます。
また、撮影したデータを用いて建築物の3Dモデルを作成することによって、2次元の図面よりも完成図をイメージしやすくなります。
ここにAIの技術を導入すると、ドローンによる建築物の撮影を自動化でき、ドローンを操縦する労力が必要なくなります。
つまり、AIの発達は新たな労働力を生み出し、人間の作業量を減らしてくれるのです。手の空いた人材は人間にしかできない作業に時間を割くことができ、建設現場の生産性は向上していくでしょう。
ICT建機の可能性
ドローンによる測量のほかにも、ICTを導入した作業の効率化が行われています。その例がICT建機による施工です。
ICT建機で施工する際には必要な情報が操縦席のモニターに表示されるため、従来と比べて求められる操縦スキルが低くなります。建設業界で働いたことのない人でも少ない学習量で建機の操縦ができるようになるのです。
今までは熟練の技が求められていたため、限られた人間にしか建機を操縦することができず、新たな人材を確保しても建機を操縦できるように教育するのが大きなコストとなっていました。
ICTの導入によって建機の操縦をする人は熟練の技を持つ人だけではなくなり、人材登用の選択肢が広がるでしょう。
2019年に国土交通省が発表した「国土交通省におけるi-Constructionの取り組みについて」では、ICT土工の活用効果として、測量から工事完成までにかかる一連の作業時間が平均で31.2%削減できたという報告がされています。
(出典:2019年 国土交通省「国土交通省におけるi-Constructionの取り組みについて」)
3Kからの脱却
先述した2つの例でわかるように、人間の労働力を削ってくれるのがICTです。そうすれば、世間の建設業界に対するイメージ、いわゆる3Kとされている汚い、危険、きついといったイメージを払拭することができるでしょう。
AIが発達すれば人間が現場に出ることが減り、現場に出てもAIがサポートしてくれるため危険性が下がるといった効果が期待ができます。
国土交通省は現在の3Kを改善し、新3Kである給与がいい・休暇がとれる・希望が持てるといった魅力的な労働環境をi-Constructionの目標にしています。
まとめ
i-Constructionの概要は理解していただけたでしょうか。
今後はますますICTの導入が進み、建設現場の作業効率は向上していくでしょう。
また、AIがどこまで作業を自動化してくれるのかも注目です。将来的には無人の建設現場が当たり前になっているかもしれません。
しかし、技術の発展には必ずその技術を使いこなす人間が必要です。いくら便利なものがあっても使い方がわからなければ活用することはできません。
つまり、私たちがすべきことは技術を活用するための知識を身に付けることです。この記事がその手助けになれば幸いです。