20年ぶりの貸金業法改正で何が変わろうとしている? 工務店の資金調達法

土地の仕入れやつなぎ資金を調達するとき、「銀行の審査が遅い」「必要なタイミングに資金が出ない」と感じたことのある工務店は少なくないはずです。
その背景には、これまでの法規制が法人向け融資の柔軟性を制約してきた側面もあります。2026年、金融庁は約20年ぶりとなる貸金業法の本格改正に向けた検討を始めました。
実現すれば、工務店やビルダーの資金調達の選択肢が広がる可能性があります。
この記事では、改正で何が変わろうとしているのかを整理し、銀行とノンバンクを使い分けた工務店の資金調達法を解説します。
20年ぶりの貸金業法改正で何が変わろうとしているのか?
まずは、検討が始まった法改正の方向性を確認していきましょう。
なお、現時点では検討段階であり、まだ施行されていない点に注意が必要です。
金融庁が改正を検討する
報道によると、貸金業法は2006年以来となる大規模な見直しが2026年に検討され始めました。
金融審議会での議論開始は2026年夏、改正法案の提出は早くて2027年の通常国会が見込まれており、現段階ではまだ施行前です。
企業の資金調達支援や成長投資の後押しが狙いとされています。
法人融資が柔軟になる
検討されているのは、一律に近い現在の規制を、借り手の属性や実態に応じた形へ見直す方向です。
報道では、大企業向けの協調融資への外国銀行の参加障壁を取り除くことなどが主な論点として挙げられています。
法人融資全体が柔軟になれば、中小企業や工務店にも影響が波及する可能性があります。
なぜ今、工務店の短期資金ニーズが高まっているのか
法改正の動きの背景には、工務店をめぐる資金環境の変化があります。
ここでは、短期資金のニーズが高まっている理由を見ていきます。
土地仕入れ・建売用地は意思決定の速さが勝敗を分ける
条件のよい用地は競合も狙っているため、銀行融資の稟議を待っている間に他社へ流れてしまうリスクがあります。
銀行の法人融資は、種類や審査内容によっては2週間から1ヶ月以上かかるケースもあり、仕入れの局面ではスピード不足が機会損失につながりやすくなります。
建築費・人件費の上昇で手元資金の必要額が増えている
建築コストの上昇も、必要な手元資金を押し上げています。
国土交通省の建設工事費デフレーターは、建設工事費の物価変動を示す統計で、建築コストの把握に使われます。
さらに、2025年の人手不足倒産は過去最多の水準にあり、建設業でも人件費や採用難が経営の負担になっています。
住宅市場の縮小局面では「資金調達力」が受注力に直結する
国土交通省によると、2025年の新設住宅着工戸数は740,667戸で、前年比6.5%減と3年連続の減少となりました。
着工が伸びにくい局面では、利益の出る案件を逃さず仕入れ、完成・販売まで資金を切らさない管理がいっそう重要になります。
資金調達力が、そのまま受注力につながる場面が増えています。
銀行融資だけでは間に合わない場面の判断基準
銀行融資とノンバンクは、場面に応じた使い分けが大切です。
銀行融資は低金利で長期の取引に向く一方、審査・稟議・担保評価に時間がかかるため、土地の決済日や仕入れ期限が迫る案件には間に合わない場合があります。
これに対してノンバンクは、銀行とは異なる審査基準を持ち、担保物件・事業計画・売却見込み・出口戦略を個別に見る傾向があるため、銀行で難しい案件でも検討の余地があります。
ただし、ノンバンクは銀行より金利や手数料が高くなりやすい点に注意が必要です。
短期で回収できるプロジェクトや、売却・借り換えの予定が明確な案件、粗利で金融コストを吸収できる案件に限って使うのが基本です。
「銀行融資が遅いからノンバンク」ではなく、「銀行=低コストの基幹資金」「ノンバンク=スピードと柔軟性が必要な短期資金」と役割を分けて考えることが重要です。
工務店・建売事業者が検討したい資金調達4つの選択肢
ここでは、工務店や建売事業者が検討したい資金調達の選択肢を4つ取り上げます。
それぞれの特徴を整理すると、次のとおりです。
選択肢 | 特徴 | 相性のよい場面 |
|---|---|---|
つなぎ融資・ブリッジローン | 本命融資や売却代金が入るまでの短期資金 | 土地決済・着工金・中間金・造成費の立替 |
不動産担保ローン | 保有・仕入れ対象の不動産を担保に調達 | 担保はあるが手元資金を厚くしたい場面 |
プロジェクト融資 | 案件単位の収益性を評価して調達 | 建売・買取再販・宅地分譲・収益物件建築 |
銀行×ノンバンクの二刀流 | コストとスピードを分けて設計 | 土地は銀行・建築はノンバンクなどの組み合わせ |
それぞれ解説していきます。
つなぎ融資・ブリッジローン
本命の融資や売却代金が入るまでの短期資金を補う方法です。
土地決済・着工金・中間金・造成費など、入金の前に支払いが発生する場面と相性がよい資金調達です。
ただし、返済の原資と時期が曖昧なまま使うと、かえって資金繰りを悪化させるリスクがあります。
不動産担保ローン
保有している不動産や仕入れ対象の不動産を担保に資金を調達する方法です。
銀行は低金利が期待できる一方で審査に時間がかかりやすく、ノンバンクは金利が高めでも審査・実行が早い傾向があります。
担保はあるが手元資金を厚くしておきたい場面で活用できます。
プロジェクト融資
過去の決算書や会社全体の財務だけでなく、土地仕入れから建築・販売・出口までのプロジェクトの収益性を評価する融資です。
建売・買取再販・宅地分譲・収益物件建築など、案件単位で利益計画を組み立てる事業者と相性がよい方法です。
銀行×ノンバンクの二刀流
土地代金は銀行、建築資金や追加の造成費はノンバンク、販売後に繰り上げ返済または銀行へ借り換えといったように、コストとスピードを分けて設計する考え方です。
短期資金を単なる「高い借入」と見るのではなく、案件獲得・工期短縮・機会損失の回避につながる事業コストとしてとらえる視点が大切です。
建設・不動産に強い資金調達パートナー|選ぶべき理由
最後に、資金調達のパートナーを選ぶ視点について解説します。
建設・不動産事業では、土地の仕入れ、建築工事、販売・賃貸による資金回収までに時間差が生じるため、工期や資金回収のサイクルを理解した相手を選ぶことが重要です。
ここでは、建設・不動産事業の資金調達先として「LIFULL Investment 不動産事業融資」がおすすめできる理由を解説します。
過去の決算書だけでなくプロジェクトの実効性を見てくれる
資金調達では、担保評価や過去の決算内容だけで判断されるケースもあります。
しかし、不動産事業では「その案件に収益性があるか」「販売・回収の見込みが立つか」「事業者に実行力があるか」といった、プロジェクト単位での見極めも重要です。
「LIFULL Investment 不動産事業融資」は、担保評価だけでなく、事業者の実績やプロジェクトの実効性も重視するとしているため、案件ごとの採算性を踏まえた資金調達を相談しやすい点が特長です。
買取再販資金・収益物件の建築資金・一戸建ての建築資金など、不動産事業者のさまざまな資金ニーズに対応している点も魅力です。
銀行融資と組み合わせやすい
建設・不動産事業の資金調達では、銀行融資だけで必要資金をすべてまかなえないケースもあります。
たとえば、土地代金は一般の金融機関で調達し、建築資金は第二順位の抵当権で対応するなど、案件に応じた資金調達の設計が可能です。
銀行融資を否定するのではなく、銀行とノンバンクを使い分ける「二刀流」の選択肢として活用できる点は、不動産事業者にとって大きなメリットです。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで振り返っておきましょう。
Q:貸金業法改正で工務店の資金調達はすぐに変わりますか?
A:現時点では検討段階で、まだ施行されていません。議論の開始は2026年夏、法案提出は早くて2027年の通常国会が見込まれています。実現すれば法人融資が柔軟になり、土地仕入れやつなぎ資金の選択肢が広がる可能性がありますが、当面は現行制度を前提に資金計画を立てることが大切です。
Q:なぜ今、工務店の短期資金ニーズが高まっているのですか?
A:条件のよい用地は意思決定の速さが勝敗を分けるうえ、建築費や人件費の上昇で必要な手元資金が増えているためです。住宅着工が減少する局面では、利益の出る案件を逃さない資金調達力が受注力に直結します。
Q:銀行融資とノンバンクはどう使い分ければよいですか?
A:銀行は低コストの基幹資金、ノンバンクはスピードと柔軟性が必要な短期資金、と役割を分けるのが基本です。ノンバンクは金利が高めのため、短期で回収できる案件や出口が明確な案件に限って使うと、調達コストを抑えやすくなります。
Q:工務店が検討できる資金調達の選択肢には何がありますか?
A:つなぎ融資・不動産担保ローン・プロジェクト融資・銀行×ノンバンクの二刀流などがあります。案件の性格や入金のタイミングに合わせて選ぶことで、機会損失を防ぎながら資金を切らさない調達につながります。
執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。



