経営・マネジメント

住宅メーカーの経営改善のために!着目すべき経営データとは?

住宅メーカーが会社の経営状態に悩み、改善させたい場合、まずは自社の経営データを正しく把握する必要があります。

今回は、住宅メーカーが赤字受注をなくして経営を改善させるために、経営データのどこに着目し、どう対応していけばいいのかを見ていきたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.実行予算
  2. 2.限界利益
  3. 3.会計基準
    1. 3.1.日本会計基準
    2. 3.2.米国会計基準
    3. 3.3.IFRS(国際財務報告基準)
    4. 3.4.JMIS(修正国際基準)
  4. 4.収益認識基準
  5. 5.まとめ

実行予算

会社の経営上、売上高にとらわれてしまうこともあると思いますが、経営改善のためには“利益”を重視することが大切です。
いくら売上高が高くても、費用がかさんで赤字になってしまったのでは意味がありません。

利益を重視した経営をするために、建設業において重要なのが“実行予算”の作成です。

建設業においては、現場ごとに生産するものが異なるため、かかる原価も異なります。
その場合に、実行予算を作成することにより、事前にどのくらいの原価がかかるのかを明確にでき、現場ごとの“利益目標”を設定することができます。

着工後も、実行予算と実際の原価の発生額を比較することにより、利益目標を下回っていることが早期に発見できれば,利益を取り戻すための迅速な対応が可能になります。

実行予算を作成する際には、実行予算と実際の原価があまりにかけ離れることのないよう、精度の高いものを作成することも重要です。

完工現場での収支結果の過去データを参考にして、正確な実行予算を作成しましょう。

限界利益

一般的に、利益といえば営業利益を指すことが多いですが、経営改善のためには“限界利益”を判断基準とすることが重要です。

営業利益は「売上高-(変動費+固定費)=営業利益」、限界利益は「売上高-変動費=限界利益」という計算式で算出されます。

固定費とは、売上高がゼロであっても毎月必ず発生する費用のことです。例えば、機械の減価償却費や製造現場の人件費などが固定費にあたります。

変動費とは、売り上げにともなって発生する費用のことです。
例えば、材料費や外注費が変動費にあたります。

算式を見てわかるとおり、営業利益と限界利益の違いは、売上高から固定費を差し引くか差し引かないかだけです。
この違いが、経営改善のためには非常に重要になります。

一般的に、営業利益がマイナスの場合に赤字といわれ、営業利益が赤字になるような案件は引き受けないと判断してしまいがちです。
しかし、営業利益が赤字になったとしても、限界利益がプラスになる案件ならば、受注を検討してもいいでしょう。

例えば、売値が1個500円、変動費が200円、固定費が900円という商品があるとします。
この場合、1個あたりの限界利益は「500円-200円=300円」でプラスになります。

この商品が仮に2個しか売れなかった場合、営業利益は「1,000円-(400円+900円)=-300円」で赤字になります。
これは、一見すると営業利益が赤字となるため、受注をやめるべきと判断してしまいがちです。

しかし、さらに受注して商品が4個売れた場合、営業利益は「2,000円-(800円+900円)=300円」の黒字になります。

商品がいくら売れても、固定費の額は変わりません。
売り上げに応じて増えるのは変動費のみであり、限界利益がプラスであれば、売れれば売れるほど営業利益もプラスになるのです。

以上のように、限界利益がプラスかどうかは、その案件を受注するかどうかを判断する基準となります。
ただし、限界利益がマイナスとなるような案件は、いくら受注しても会社の利益にはつながりませんので、当然引き受けるべきではありません。

会計基準

企業は、株主や債権者などの利害関係者に、自社の経営成績や財政状態を報告するために財務諸表を作成します。
その財務諸表を作成する際のルールとなるのが、“会計基準”です。

日本で採用できる会計基準は、現在4種類あります。

日本会計基準

日本の会計基準は、1949年に制定された「企業会計原則」を中心とした日本独自の会計基準です。その後も新たな論点について会計基準が追加設定されています。

実際に日本の最も多くの企業が採用している会計基準が、日本の会計基準です。

米国会計基準

アメリカの財務会計で用いられる会計基準で、FASB(Financial Accounting Standards Board:財務会計基準審議会)基準書、FASB解釈指針などから構成されています。

米国の証券市場に上場する日本企業は、必ず米国会計基準に準拠した財務諸表を作成・公表しなければなりません。

IFRS(国際財務報告基準)

IFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)とは、国際会計基準審議会によって設定される会計基準で、国ごとに異なる会計基準を統合した世界基準の会計制度です。

2005年からEU域内の上場企業には適用が義務化され、日本でも130以上の企業が採用しています。今後も、IFRSを導入する企業が増えていくと考えられます。

海外に子会社のある企業は、IFRSを導入することで会社間すべての会計指標を統一させることができるので、経営管理がしやすくなります。

また、日本の会計基準よりもIFRSに慣れている海外の投資家からの資金調達がしやすくなるというメリットもあります。

JMIS(修正国際基準)

JMIS(Japan's Modified International Standards:修正国際基準)は、日本版IFRS(J-IFRS)ともいわれ、IFRSを日本企業向けに調整した会計基準です。

日本独自の会計基準は国際市場での影響力がなく、海外展開や海外からの資金調達を考える場合は、自社でどの会計基準を選択すべきなのかを検討する必要があります。

収益認識基準

日本の会計基準では、工事の収益認識基準として、工事の完成・引き渡しの日に収益と費用を計上する「工事完成基準」と、工事進捗の程度に応じて収益と費用を計上する「工事進行基準」があります。

工事進行基準は欧米諸国では一般的となっていますが、2009年の4月からは、日本においても原則として適用する基準とされています。

工事進行基準では、進捗状況に応じて収益と費用を計上しなければならず、詳細な見積もりも必要になるので、工事完成基準よりも複雑で負担も多くなります。

しかし、工事進行基準が適用されることで、工事中の修正や追加の要望もその都度計上できるようになり、完成後に大きな赤字が判明するのを防ぐことが可能になりました。

工事進行基準を取り入れるメリットは大きいといえます。

また、2018年3月30日に企業会計基準委員会より「収益認識に関する会計基準」および「収益認識に関する会計基準の適用指針」が公表され、工事進行基準の会計処理が改正されたので、注意が必要です。

まとめ

ここまで、住宅メーカーの経営改善のためには、経営データのどこに着目し、どう対応していけばいいのかを見てきました。

利益重視の経営のためには実行予算を作成し、限界利益を受注の判断基準とすることが重要です。さらに、自社で採用すべき会計基準を検討する必要があります。

赤字受注をなくし、経営改善のために必要となる解決策を講じていくことが大切です。


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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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