住宅営業ノウハウ

増築を行った際の登記は不要? 未登記のリスクについても解説

増築とは、既存建築物に建て増しをしたり、既存建築物のある敷地に新たに建築したりすることです。

工務店・ビルダーが増築工事を行う際に、施主から登記の必要性について質問されるケースがあるのではないでしょうか。

増築後に登記を行わない場合、さまざまなリスクが生じることがあるため、登記の必要条件について理解しておくことが重要です。

この記事では、増築に関する登記のルールをはじめ、登記が不要になるケースや、登記を行わない場合のリスクについて解説します。

(出典:国土交通省『参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度』)

目次[非表示]

  1. 1.増築後の登記は法律で定められている
  2. 2.増築登記が不要になるケース
  3. 3.増築登記を行わない場合のリスク
    1. 3.1.売却しにくい
    2. 3.2.相続手続きが煩雑になる
    3. 3.3.住宅ローンを組めない
  4. 4.まとめ

増築後の登記は法律で定められている

不動産登記法』第51条では、増築にあたって建物に関する登記内容に変更があった場合には、建物表題部変更登記(以下、増築登記)を行うことが義務づけられています。

第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『不動産登記法』第51条

上記の“第44条に掲げる事項”には、以下のような項目が挙げられます。

▼増築登記が必要になる項目例

  • 家屋番号
  • 建物の種類・構造・床面積
  • 建物の名称
  • 付属建物の住所・地番・種類・構造・床面積
  • 建物が共用部分や団地共用部分などである内容

増築によって建物の構造や床面積などに変更が生じた場合には、1ヶ月以内に法務局にて登記内容の変更を行うことが必要です。登記を適切に行わない場合には、同法令第164条において10万円以下の過料が科せられるおそれがあります。

(出典:e-Gov法令検索『不動産登記法』)

増築登記が不要になるケース

前述したように、増築登記が必要になるのは、建物の種類や構造、床面積などに変更が生じた場合です。不動産登記法上の建物に該当しない場合、増築登記は不要です。

不動産登記規則』第111条では、建物の定義について以下のように定めています。

第百十一条 建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『不動産登記規則』第111条

建物であるか否かは、3つの要件によって判断されます。

▼不動産登記法上の建物の要件

  1. 屋根および周壁を有している
  2. 土地に定着している
  3. 目的とする用途に使用できる

屋根・周壁がないものや土地に定着せずに取り外し可能な設備などは、建物には該当しないため、増築登記を行う必要はありません。

ただし、建物の床面積が同じであっても、自宅を店舗に改装するといったように使用目的(種類)が変わる場合には、登記内容の変更が必要です。

増築登記が必要・不要なケース例は、以下のとおりです。

▼増築登記が必要・不要なケース例

登記変更が必要

  • 同一敷地内に居住用の離れを新たに建てた
  • 既存の建物に屋根付きのサンルームを造った
  • 平屋住宅を2階建てに改築した
  • 木造住宅の一部を鉄骨に改修した

登記変更が不要

  • 敷地内に一時的にプレハブ住宅を建てた
  • 移動式の倉庫(物置)を新たに設置した

(出典:e-Gov法令検索『不動産登記規則』)

増築登記を行わない場合のリスク

増築後に登記が必要なケースでありながら、登記を行わない場合には、過料が科せられるだけでなく、以下のようなリスクが考えられます。


売却しにくい

増築後に登記内容の変更を行っていない場合、売却時に手続きがスムーズに進まない可能性があります。

増築登記は、建物の広さや権利関係などについて公的な証明書として使用されます。登記が適切に行われていない建物は、所有権が誰にあるのか明示されていない状態です。

このような不動産を売買する場合、所有権や構造面などのさまざまなトラブルにつながるおそれがあるため、買主にとって不安材料になります。

不動産の売却時に増築未登記の箇所がある場合には、買主から増築登記が求められるケースが一般的です。


相続手続きが煩雑になる

増築時に登記を行っていない場合、トラブルの原因になったり、相続手続きが煩雑になったりすることもリスクの一つです。

増築登記を行っていない場合、増築した部分の所有権が誰なのか分からず、相続時にトラブルが発生することが考えられます。

また、相続する際は所有権移転の登記が必要になりますが、相続のタイミングになってから増築登記を実施するとなると、相続手続きが煩雑化したり、時間がかかったりする可能性があります。

未登記部分がある場合は、早めに登記を済ませることが重要です。


住宅ローンを組めない

登記が行われていない建物の場合、建物を担保として新たに住宅ローンを組むことはできません

登記が行われていない建物は、増築によって建ぺい率や容積率が変わっていたり、所有者が明確でなかったりするため、担保価値を適切に把握することが困難です。

このような建物に対して融資を行うことは金融機関にとってもリスクとなるため、未登記のままでは住宅ローンを借りられない可能性があります。

まとめ

この記事では、増築を行った場合の登記について以下の内容を解説しました。

  • 増築登記の義務
  • 登記が必要・不要になるケース
  • 増築登記を行わない場合のリスク

建物の増築によって、種類や構造、床面積などに変更が生じた場合には、1ヶ月以内に増築登記を行うことが義務づけられています。

適切に登記を行わない場合には、10万円以下の過料が科せられるほか、売却がしにくくなる、相続手続きが煩雑になる、住宅ローンを受けられないなどのリスクがあるため注意が必要です。

工務店・ビルダーが住宅の増築を行う際は、登記が必要なケースかどうかを確認したうえで、施主に対して適切に説明を行うことが重要です。

LIFULL HOME'Sでは、工務店・ビルダーさまの業務にお役立ていただけるさまざまな業務支援サービスを展開しております。詳しくはこちらをご覧ください。

 ≫ 業務支援サービス

  業務支援サービス|LIFULL HOME’S Business 注文・分譲一戸建て|工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社向け業務支援ポータル|ライフルホームズの集客・販促・営業・人材確保 業務支援サービスの一覧です。 LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て


編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

関連する最新コラム