マーケティング

マーケティング担当者はわかっておきたい! 住宅に対してのシニア層の傾向

人口の約4人に1人が高齢者である超高齢社会の日本において、ビジネス市場におけるシニア層の重要度はさらに増してきています。

住宅市場においても、今後ますますシニア層の存在感が増していくと考えられ、住宅メーカーは、シニア層のための住宅に対して、多様なニーズを把握し対応していくことが、今後の成長のために重要な課題となります。

そこで今回は、シニアが住宅を購入する際にポイントとする点はどういうものなのか、住宅メーカーのマーケティング担当者が理解しておきたい、シニア層の住宅に対する傾向をみていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.エリア
  2. 2.アクティブシニア
    1. 2.1.コンパクトな住まいへの住み替え
    2. 2.2.快適な住まいへの住み替え
  3. 3.介護が必要なシニア
    1. 3.1.サ高住
    2. 3.2.リフォーム
    3. 3.3.介護保険制度を利用したリフォーム
    4. 3.4.耐震リフォーム
    5. 3.5.断熱リフォーム
  4. 4.シニアのメディア接触
  5. 5.シニア層の中の個を意識する

エリア

老後は空気がきれいで自然豊かな土地でゆったり暮らしたい、というシニア層のニーズはもちろんありますが、日常生活の利便性が高い“都心”に住み替えを希望するシニア層も多くいます。

都心は、交通の便が良く、スーパーなどが近くて買い物もしやすく、病院などの施設も整っていて、安心して生活できることが魅力です。

国土交通省による2013年の住生活総合調査によると、高齢者世帯が住宅及び居住環境に関して重要と思う項目では「日常の買物、医療・福祉・文化施設などの利便」が重要と回答した世帯が35.9%と最も多く、3割強のシニアが日常生活の利便性が高い立地を求めていることがわかります。

アクティブシニア

シニア層のニーズに応えようとする場合、すべてを一緒に捉えるのではなく、体の自由がきかなくなって介護の必要性のある場合と、まだまだ元気で趣味や様々な活動に意欲的なアクティブな場合とのニーズを分けて考える必要があります。


コンパクトな住まいへの住み替え

まず、アクティブシニア層が住宅の購入を検討するケースとして、子どもが独立して夫婦2人だけになり、掃除や管理のしやすいコンパクトな住まいに住み替えを希望する場合があげられます。

その場合、生活の利便性が高い立地に、コンパクトな間取りの一戸建てやマンションに住み替えることになります。

快適な住まいへの住み替え

また、自宅が老朽化したために、快適な暮らしを求めて住宅の購入を検討するケースがあげられます。

最近では、“シニア向け分譲マンション”の購入を検討するシニア層もおり、そこでは来訪者の受け付けなどのフロントサービスや、安否確認の見守りサービスが主なサービス内容です。オプションで食事・清掃・洗濯・通院の同行などのサービスも提供されます。シアタールームやフィットネスルーム、プールなど、施設によって様々な共用の娯楽設備が備えられています。

入居できる年齢は施設によって違いますが、自立した生活が可能なシニアが入居対象となります。有料老人ホームとは違い、自分の好みに合わせて自由にリフォームすることができます。資産として家族に残すことが可能で、売却や賃貸もできます。

様々なサービスや設備が整っていて、アクティブシニア層には快適な住まいといえるでしょう。

介護が必要なシニア

サ高住

介護が必要なシニアのうち要介護度がまだ低い段階の場合、有料老人ホームではなく“サ高住”(サービス付き高齢者向け住宅)に入居するという選択肢もあります。

サ高住とは、2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」が改正された際に生まれた、高齢者が安心して生活できるようサービスを提供する賃貸住宅です。シニア向け分譲マンションとは異なり、法的な登録基準が設けられています。

バリアフリー設計で、看護師や介護福祉士などのケアの専門家が少なくとも日中は常駐し、安否確認の見守りサービスや生活相談、掃除や買い物の代行などの生活支援といったサービスが提供されます。

入居できる対象者は、60歳以上の高齢者または要介護・要支援認定者です。有料老人ホームとは異なり、外泊や食事などの面で生活の自由度が高い生活ができます。


リフォーム

内閣府の2016年「高齢者の経済・生活環境に関する調査」によると、60歳以上の高齢者の83.9%が一戸建ての持ち家に住んでいることがわかりました。

マンションやサ高住に住み替えるシニアも多くいますが、シニアの8割以上が一戸建ての持ち家に住んでいるという現状では、快適に暮らすためや介護に適した住宅にするための“リフォーム”が有力な選択肢ということになります。


介護保険制度を利用したリフォーム

シニアに適した住宅にするためのリフォームとしてまずあげられるのは、“介護保険制度を利用したリフォーム”です。条件を満たしていれば、被保険者が必要なリフォームへの補助金が支給されます。手すりの取り付け・床の段差の解消・洋式便器への取り替えなどが補助金支給の対象となります。


耐震リフォーム

次にあげられるのは“耐震リフォーム”です。国土交通省による2013年の住生活総合調査において、高齢者世帯が住宅及び居住環境に関して重要と思う項目で、「地震時の住宅の安全性」が重要と回答した世帯が32.6%と2番目に多く、住宅の耐震性を求めるシニアが3割強いることがわかります。

耐震診断や耐震補強工事も、自治体によって対象となる建物や金額は異なりますが、リフォームへの補助金が支給されます。


断熱リフォーム

さらに、シニアに適した住宅にするためのリフォームとして“断熱リフォーム”があげられます。

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターによって2013年に発表された「冬場の住居内の温度管理と健康について」によると、断熱改修は睡眠の質の改善・アレルギー症状の改善・血圧の低下や安定化といった項目で、高齢者の健康に良い影響を与える可能性があることがわかりました。

断熱リフォームについても、高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業・次世代省エネ建材支援事業といった補助金制度があります。

また、断熱リフォームによって冷房・暖房などの光熱費の節約も期待できます。

シニアのメディア接触

シニア層が住宅の購入やリフォームに関して検討する際、どのようなメディアから情報収集するのでしょうか。

朝日新聞大阪本社広告局が企画し、ビデオリサーチが2015年に調査した「シニア層のメディア接触と生活意識調査」によると、シニアのテレビをみる割合99.5%、新聞購読率89.6%と、ほとんどのシニアがテレビと新聞から情報を得ていることがわかります。

また、新聞広告をみて、実際に商品を購入したシニアの割合が高いこともわかり、テレビや新聞広告がシニア層に大きな影響を与えていると考えられます。

また、同調査によると、シニアの77%がインターネットを利用しています。テレビや新聞ほどではありませんが、今後インターネットがシニア層に与える影響が大きくなっていくことは十分に考えられます。

シニア層の中の個を意識する

今回紹介したように、シニア層といっても、その中を細かくみていくと住宅に求めていることは細かく分かれています。

それぞれの要望にあったマーケティング戦略を検討・実施していくことで“シニア層の個”に対してアプローチができることでしょう。


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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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