【改正建築物省エネ法】省エネ基準の適合義務化と新たな断熱等級について解説
2022年6月に『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(以下、改正建築物省エネ法)』が公布されました。脱炭素社会の実現を目指す“2050年カーボンニュートラル”に向けて、日本を含む124ヶ国と1地域で、さまざまな取組みが行われています。
日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物の分野においても、カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ対策の取組みが急務となっています。
工務店・ビルダーは、新たな省エネ基準に対応するために、改正内容について理解しておくことが重要です。
この記事では、改正建築物省エネ法の内容や新設される断熱等級について解説します。
(出典:国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案 新旧対照条文』『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』/経済産業省『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』)
目次[非表示]
- 1.2022年6月に『改正建築物省エネ法』が公布
- 2.建築物省エネ法の改正ポイント
- 2.1.①誘導基準値の見直し
- 2.2.②省エネ基準の適合義務化
- 2.3.③省エネ性能等級5~7の新設
- 3.まとめ
2022年6月に『改正建築物省エネ法』が公布
2022年6月、改正建築物省エネ法が公布されました。
地球温暖化への対策が世界共通の課題とされるなか、日本では2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目標に掲げています。
また、パリ協定に基づく地球温暖化対策の具体的な目標として、2030年度に温室効果ガスを46%削減(2013年度比)することも掲げています。
改正建築物省エネ法は、建築物の分野における省エネ対策をさらに強化するために公布されました。
改正建築物省エネ法では、省エネ対策の加速および木材利用の促進、この2つを主軸としています。それぞれの具体的な取組みは以下のとおりです。
▼改正建築物省エネ法の主軸
省エネ対策の加速 |
①省エネ性能の底上げ・より高い省エネ性能への誘導 |
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②ストックの省エネ改修・再エネ設備の導入促進 |
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木材利用の促進 |
①防火規制の合理化 |
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②構造規制の合理化 |
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上記の改正内容のうち、次項では工務店・ビルダーに関わりが深いとされる、“誘導基準の見直し”“省エネ基準の適合義務化”“省エネ性能等級”について解説します。
なお、改正建築物省エネ法のポイントや工務店・ビルダーの対応については、こちらの記事をご覧ください。
≫ 省エネ基準の2つのポイントと改正建築物省エネ法による工務店・ビルダーの対応
(出典:国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』/国土交通省 住宅局『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』/経済産業省 エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』/外務省『日本の排出削減目標』)
建築物省エネ法の改正ポイント
改正建築物省エネ法の公布によって、建築物エネルギー消費性能誘導基準の見直しと、住宅性能表示制度による等級の新設が行われています。また、今後すべての新築住宅において、省エネ基準の適合が義務化されます。
工務店・ビルダーが住宅建築や販売を行う際には、法改正への対応が必要です。ここでは、それぞれの改正ポイントを解説します。
①誘導基準値の見直し
改正建築物省エネ法では、建築物の省エネ性能の誘導基準が見直されています。
誘導基準とは、省エネ性能向上計画の認定を受けるために、適合しなければならないエネルギー消費性能の基準のことで、建築物省エネ法で定められています。
一戸建て住宅においては、外皮熱性能(UA値・ηAC値)と、一次エネルギー消費性能の2つで水準が定められています。
2022年10月からは、外皮熱性能のうちのUA値と、一次エネルギー消費性能について水準が引き上げられています。
▼一戸建て住宅の誘導基準
画像引用元:国土交通省『性能向上計画認定制度 改正ポイント』
(出典:国土交通省『誘導基準の見直し(建築物省エネ法) 及び低炭素建築物の認定基準の見直し(エコまち法)について』『性能向上計画認定制度 改正ポイント』)
②省エネ基準の適合義務化
建築物省エネ法の改正によって、2025年までに省エネ基準への適合義務が住宅にも適用されることとなりました。
現行の省エネ基準は、断熱等級4かつ一次エネルギー消費量等級4を満たす住宅と定められています。
法改正前までは、この省エネ基準に適合する義務は非住宅に限られており、住宅の場合は届出義務または適合努力義務にとどまっていました。
改正前・改正後の適合義務は以下のとおりです。
▼省エネ基準への適合義務の範囲
画像引用元:国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』
(出典:国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』)
③省エネ性能等級5~7の新設
改正建築物省エネ法の公布に伴い、住宅性能表示制度における省エネ性能等級が新設されています。
法改正前の建築物省エネ法に基づく省エネ基準では、断熱等級4、一次エネルギー消費量等級5が最高等級となっており、これを上回る評価基準はありませんでした。
今回の法改正で、断熱等級4・一次エネルギー消費量等4級以上の適合が義務化されることに伴い、新たな基準として等級5~7が新設されました。
以下のスケジュールで、省エネ性能の上位等級が新設されています。
▼省エネ性能等級が新設されたスケジュール
公布日 |
新設された等級 |
2021年12月1日 |
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2022年3月25日 |
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国土交通省『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』を基に作成
今後の省エネ性能は、以下の等級によって区分されるようになります。
▼省エネ性能等級の区分
画像引用元:国土交通省『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』
(出典:国土交通省『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』)
まとめ
この記事では、改正建築物省エネ法について、以下の項目で解説しました。
- 改正建築物省エネ法の背景と主な内容
- 改正のポイント
2022年6月に改正建築物省エネ法が公布されたことで、建築物における省エネ対策の強化や木材利用の促進が図られています。
なかでも工務店・ビルダーと関わり深い改正内容としては、誘導基準の見直し、省エネ基準の適合義務化、省エネ性能等級の新設が挙げられます。
2025年までには、すべての新築住宅において省エネ基準(断熱等級4・一次エネルギー消費量等級4)への適合が建築主の義務となります。
工務店・ビルダーが住宅建築・設計を行う際は、これらの基準を満たしているか、現行の法律を確認しておくことが重要です。
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