住宅の断熱性能向上待ったなし!省エネ性能2025年度義務化へ
断熱性能底上げを目指す第一歩、省エネ性能2025年度義務化へ
政府は4月22日、住宅の省エネルギー化を促すための関連法案を閣議決定しました。一時はこの法案の提出先送りが取りざたされていましたが、住宅業界団体からの早期義務化を求める声が強く、一転してこの通常国会での成立を目指すとのことです。
これまでこの省エネ義務化はオフィスビルなどが対象でしたが、この建築物省エネ法改正案については、一戸建て住宅や小規模ビルなどすべての新築住宅・非住宅の建物に対して、2025年度からの断熱性能の省エネ基準適合を義務付ける予定です。
日本の住宅の断熱性能は、国際的にも低いとされており、住宅性能の底上げは急務でした。もともと省エネ基準達成のゴールに設定していた2020年から遅れること5年、断熱性能の底上げに向けてやっとスタートラインに立つことができたといえます。
まず、2025年に省エネ性能義務化、そして、この先に見据える目標は2030年の新築住宅のZEHレベル義務化です。この省エネ法案が成立となれば、多くの住宅会社が新築住宅の断熱性能向上を図ることはほぼ間違いありません。エンドユーザーにとって、断熱性能の向上はさまざまなメリットがあります。
まず、「光熱費の低減」です。昨今、エネルギー価格が上昇傾向にありますが、国際情勢の先行きが不透明ということもあり、電気料金などは今後も上がり続け、さらに家計を圧迫する可能性があります。
しかしながら、断熱性能が高ければ、冬季でも部屋の温度が下がりにくく、暖房機器等の省エネ、電気代やガス代の節約につながります。
二つ目に「住み心地の向上」も期待できます。部屋間の温度ギャップを抑えることは、冬場の不快だったコールドドラフトやヒートショックの予防にも寄与します。居住者の健康を守る上で、高い断熱性能は必須です。
国土交通省は今後の性能向上を見据え、23年ぶりに断熱性能の上位等級を新設する予定です。新設となるのは、断熱等級「5」「6」「7」の3つ。それぞれZEHレベル、HEAT20のG2レベル、G3レベルとなっています。今回焦点となっている省エネ性能については断熱等級4に相当します。
昨今の建築資材価格の高騰、性能向上への舵取りは慎重さ求められる
住宅会社が断熱性能の向上を目指す上で、ボトルネックとなりうるのが昨今の建築資材価格の高騰です。ウッドショックに始まり、今や構造用の木材だけでなく、合板や鋼材などさまざまなモノの価格が高騰しています。
販売価格の値上げに踏み切る住宅会社も多く、性能向上はさらなる住宅価格上昇を招く可能性が高いです。エンドユーザーが住宅価格の高騰についていけないことも想定され、この舵取りには慎重さが求められることでしょう。
しかし、イニシャルコストは高くなったとしても、エンドユーザーに対してはライフサイクルコストをベースに訴求していきたいところです。光熱費やメンテナンスコストの低減といったユーザーメリットは、イニシャルコストを上回って多くあるはずです。
新築住宅の次に焦点が当たると考えられるのは、既存住宅です。国土交通省「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」によると、、全国にある住宅ストック約5千万戸の中で省エネ基準を満たしているのは1割にとどまるとのことです。
しかしながら、家全体の断熱改修はコスト面や技術面においてハードルが高く、リフォームに対する施策、支援も求められています。
省エネ住宅を優遇する住宅ローン登場
省エネ性の高い新築住宅を支援する銀行も現れました。この銀行はインターネット専業のソニー銀行で、5月9日にはグリーンボンド(環境債)を発行したことを発表しました。
このグリーンボンドで調達した資金は、省エネルギー性に優れた建物を対象とした住宅ローンに充当するとのことで、このようなグリーンボンドの発行は国内銀行初の取組みです。
ソニー銀行は既に2022年2月より、商品・サービスを通じたサステナビリティへの取組みとして、環境配慮型住宅への住宅ローン特別金利をスタートしていました。この特別金利は「新築ZEHマンション」が対象でしたが、今回はZEHなどの一戸建て住宅も対象となる予定です。
断熱性能の高い住宅の普及は、世界が抱えている環境問題解決の一助となるはずです。多くのZEHを建設している積水ハウスやセキスイハイムといった大手ハウスメーカーでは、自社オーナー宅で発電した電力を買い取って自社の事業用電力として活用するなど、最終的には100%再エネで賄うことを目指すRE100加盟に向けた動きも活発化しています。脱炭素社会達成は社会的な目標でありますが、住宅業界が世の中を先導するような存在となっていきたいところです。