カーボンニュートラルに貢献「LCCM住宅」の商品化が加速
LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅とは、建設時、居住時、解体時のCO2の削減に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生エネルギーの創出により、住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにする住宅のことです。
地球規模の温暖化が社会問題となっている中で、CO2排出の削減は、最も重要な政策課題の一つです。住宅業界でも脱炭素の取り組みを一層強化することが求められていることから、大手ハウスメーカーを中心に各社がLCCM住宅の商品化を進めています。
環境フラッグシップモデル発売。10月には鳥取県に「LCCM住宅」初のモデルを開設
住友林業は、優れた断熱性能や高性能な設備機器、大容量太陽光発電システムなどの創エネルギー機器を駆使した環境フラッグシップモデル「LCCM住宅」を4月に発売しました。
新商品の「LCCM住宅」は、同社オリジナルの木質梁勝ちラーメン構造である「BF(ビッグフレーム)構法」を採用し、幅560mmの大断面集成材と接合金物を用いることで、構造躯体を強靭化しています。
BF構法は構造部分(スケルトン)と暮らしに合わせて配置する内装・設備部分(インフィル)を分けて考える「スケルトン・インフィル」の考えに基づいた設計が可能です。そのため、家族の誕生や独立などといったライフスタイルの変化に合わせて間取りを容易に変更することができます。
長く住み続けることで、長期間にわたり炭素を固定し続けることができるのに加え、改修段階でのCO2排出量を削減します。また、柱や梁に使われる主要な構造部材は、生産段階である乾燥工程で再生可能なバイオマス燃料を活用することで、建設時のCO2排出量の削減にもつながるということです。
省エネの工夫では、南の採光面に「日射取得型複層ガラス」を、そのほかの面には、「日射遮蔽型真空トリプルガラス」を採用しています。また、高性能な断熱部材で建物全体を囲む「360度トリプル断熱」も取り入れているということです。
さらに、深い庇(ひさし)などを用いることにより、夏の強い日差しは防ぎ、冬場は光を効果的に室内に取り込むという季節ごとの室内への日の入りを調整するパッシブデザインで、CO2排出量の削減と暮らしの快適性を両立しています。
創エネや蓄エネでは、屋根の形状を工夫することで大容量の太陽光発電システムを搭載できるようにしており、蓄電池と併用します。また省エネルギーでお湯を作ることができる高効率給湯器といった環境設備機器も搭載し、光熱費を削減します。
同社では、LCCM住宅初となるモデルハウスを10月に鳥取県でオープンしています。モデルハウスは、木造2階建てで建築面積121.12m2、延床面積157.13m2となっています。テレワークスペースをはじめ、家族それぞれの居場所や効率的な家事動線にこだわった設計を採用。ウッドデッキでは食事のほかに、アウトドア体験や家庭菜園なども楽しむことができる提案をしているということです。
また、住友林業が運営する木の持つ可能性を独自の視点で研究しているWEBサイト「木の家Lab.」では、同モデルハウスを活用し、木が心と体に与える効用や、モデル家族が送る新しい暮らし方などをInstagramやYouTubeで発信していくということです。
「LCCM住宅」の本体価格は1坪当たり103万円からということで、住友林業では年間の受注目標を100棟としています。
最上位シリーズに異種勾配を可能にした設計プランとIoTサービスの採用でLCCMを実現
ミサワホームは、木質系工業化住宅の最上位ブランド「CENTURY」シリーズに、新たにLCCM住宅を実現した「CENTURY 蔵のある家 ZEH ADVANCE」をラインアップに加え販売しています。
同社ではこれまでもLCCM住宅についての商品開発を行ってきており、2010年にはコンセプト住宅「エコフラッグシップモデル」を発表。また、2011年には住宅業界初となる「ライフサイクルCO2マイナス住宅」を発売。2021年には、環境だけでなく、暮らしや健康についてもサスティナブルな住まいとして、2030年を見据えた未来住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」を発表するなどの取り組みを継続して行ってきました。
今回開発された「CENTURY 蔵のある家 ZEH ADVANCE」は、異種勾配の屋根形状や大収納空間「蔵」の配置を工夫するフレキシブルな設計プランの「スマートECOフォルム」を採用することによって、大容量の太陽光発電システムの搭載と斜線制限などへのプラン対応を両立させています。
また、太陽光発電システムなどで発電した電力の自家消費率を高めるため、同社のオーナー向けに提供しているIoTライフサービス「LinkGates(リンクゲイツ)」が、蓄電池や給湯器を自動制御します。
「リンクゲイツ」に搭載されたAIは、過去の使用電力量や太陽光発電量などのHEMSデータ、気象予測情報などを自動で分析し、翌日の発電量や使用電力量、余剰電力量をAIが予測して最適な利用を可能にするということです。同社では、初年度に年間700棟の販売を目標としています。