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企業ブランディングの前に知っておきたい! 住宅業界が抱える課題とは?

住宅メーカーが自社のブランディングをする際、ファーストステップとして“住宅業界全体の現状”を把握しておく必要があります。

今回は、広報・PR担当者が、自社のブランディング対策を練る前に知っておきたい、住宅業界が抱える課題をご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.集客方法の変化
  2. 2.建築コストの高騰
  3. 3.市場の縮小
    1. 3.1.新築・持ち家離れ
    2. 3.2.新築住宅の着工戸数の減少
  4. 4.政府の施策
    1. 4.1.住宅ストック市場の推進
    2. 4.2.ZEH(ゼッチ)化
  5. 5.まとめ

集客方法の変化

2018年の国土交通省住宅局「住宅市場動向調査報告書」の“施工者に関する情報収集方法”に関する調査によると以下の割合となっております。

・住宅展示場:53.9%
・インターネット:が16.7%
・住宅情報誌・リフォーム雑誌:13.4%
・新聞等の折り込み広告で:9.3%

(出典:2018年度 国土交通省住宅局「平成30年度住宅市場動向調査~調査結果の概要~

また、住宅生産団体連合会の「住宅業況調査報告」によると、2019年4月~6月の見学会・イベント等への来場者数は、前四半期と比べ、全国平均では「増加」の回答割合が34%から12%、「減少」は23%から52%となり、減少しています。

このことから、ショールームや現場見学会だけでなく、インターネット広告、住宅情報誌や新聞の折り込み広告、チラシのポスティングなど、様々な方法で集客を試みることが必要だと思われます。

広告を出す際にポイントとなるのが、“どこの”、“どのようなターゲット”に情報を伝えたいのかを明確にすることです。

伝えたい情報がターゲットに届くように広告を出すことが重要です。

建築コストの高騰

住宅生産団体連合会「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の平均建築費単価の推移によると、建築コストは2012年の23.7万円/m2を底に、2014年は25.6万円/m2、2016年は26.5万円/m2、2018年は28.1万円/m2と、年々増加傾向にあります。

(出典:2018年度 住宅生産団体連合会「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」調査結果の要約及び考察

この建築コストの高騰の要因のひとつとして挙げられるのが、“住宅に求められる基本性能の向上“です。

住宅金融支援機構の調査「2018年度における住宅市場動向について」によると、消費者が住宅事業者選びで重視するポイントとして「建物の性能」が59.6%と、約6割もの消費者が高性能の住宅を求めていることがわかりました。

今後も、耐震性などの安全性・省エネ性・デザイン性などの面で、高性能の住宅へのニーズは高まっていくと考えられます。

(出典:住宅金融支援機構「平成30年度における住宅市場動向について」

市場の縮小

少子高齢化による人口減少・世帯数の減少、性能向上による住宅の長寿命化、新築・持ち家離れなどの要因により、今後も日本国内の住宅市場は縮小傾向が続いていくと予測されます。


新築・持ち家離れ

2013年に行われた国土交通省住宅局の「住生活総合調査」によると、最近5年間に持ち家へ住み替えた世帯の住宅の取得方法では、新築住宅は1998年の77.7%から減少し続け、2013年は60.8%になっています。

また、同調査の「今後の住み替え意向について」では、新築住宅への住み替え意向の項目で、2003年に現在持ち家の世帯が75.1%、現在借家の世帯が69.3%だったのが、2013年には現在持ち家の世帯が48.4%、現在借家の世帯が55.8%と減少しています。

持ち家への住み替え意向の項目では、2003年に現在持ち家の世帯が81.8%、現在借家の世帯が52.4%だったのが、2013年には現在持ち家の世帯が64.8%、現在借家の世帯が42.2%と減少しています。

以上のデータから、日本国内の住宅市場での新築・持ち家離れが進んでいると言えます。

(出典:2013年 国土交通省住宅局「住生活総合調査」


新築住宅の着工戸数の減少

2017年に行われた「野村総合研究所」の調査によると、新築住宅の着工戸数は2016年度の97万戸(実績値)から、2020年度には74万戸、2025年度には66万戸、2030年度には55万戸と減少していく見込みとされています。

また、同調査によると空き家数・空き家率は、除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年にそれぞれ2,166万戸・30.4%へといずれも上昇する見込みと報告。

空き家などの中古住宅を購入する世帯が増える可能性が考えられます。

大手メーカー各社は、このような日本国内の住宅市場の縮小を見据えて、海外事業・非住宅分野事業の強化を進めています。

(出典:2017年 株式会社野村総合研究所「<2017年度版>2030年の住宅市場 〜空き家率の抑制に向けて、早急な仕組みづくりが必要〜」

政府の施策

住宅ストック市場の推進

新築住宅の減少・空き家の増加が進むとみられ、政府は2016年3月に建て替えやリフォーム・既存住宅の流通を促進させる「住生活基本計画」を閣議決定しました。

計画では、新築住宅から“住宅ストック活用型”への市場転換を加速させ、既存住宅流通・リフォーム市場の規模を倍増して20兆円市場にすることを目標として挙げています。

これを受けて住宅メーカー各社は、新築住宅だけでなく、既存住宅の建て替えやリフォーム・改築を施した住宅の販売などの事業展開を進めていくと考えられます。


ZEH(ゼッチ)化

ZEH(ゼッチ)とはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、“使うエネルギー”と“創るエネルギー”を相殺して、年間の消費エネルギーの収支がゼロとなる住宅のことを意味します。

断熱性能等を大幅に向上させることで消費エネルギーを抑えるとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムを導入することでエネルギーを創り出し、最終的にプラスマイナスゼロになることを目指します。

政府は2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文一戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すとしています。

ZEH支援事業において、受注する住宅のうちZEHが占める割合を2020年までに50%以上とする目標を宣言・公表したハウスメーカー等は“ZEHビルダー”として登録・公表され、条件を満たした住宅には補助金が支給されます。

これを受けて大手メーカー各社は住宅のZEH化を進めており、今後も住宅の環境性能向上を促進させる支援は続いていくと予測されます。

まとめ

ここまで、住宅業界の現状と課題について紹介してきました。

人口減少、住宅の長寿命化、新築・持ち家離れなどの要因によって新築住宅の着工戸数は減少していき、日本国内の住宅市場の縮小は不可避となっています。

今後は、高まる高性能住宅へのニーズに応え、新築住宅にこだわらない住宅ストック活用型の事業を展開していく必要に迫られているといえます。

このような状況の中で、自社の強みはどのようなところにあるのかを分析し、企業価値を高めていけるブランディングを進めていってください。


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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