住宅営業ノウハウ

中級以上の住宅の購入層を受注する「気づき共感営業」という手法

注文住宅市場の中でローコスト住宅が占める割合が高まる傾向にあります。特に最近は中高級住宅とデザインも性能も遜色ないようなローコスト住宅も出現し、「住宅のクラスレス化」も進んでいるように見えます。

さらにここへ来て外的要因で建築資材の高騰が進み、お客様も営業も「価格優先」思考に陥りがちになっています。

このような流れの中で、改めて中級以上の住宅の購入層(以降、中級層以上)への対応について考えてみたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.中級層以上の客層が潜在的に求めているもの
    1. 1.1.①「安全/安心/快適」分野
    2. 1.2.②「生活利便性」分野
  2. 2.多様化したお客様の「心豊かな暮らし」の実現
  3. 3.中級層以上のお客様獲得には「気づき共感営業」手法が最適
  4. 4.初回面談終了時に事実上受注が決まる
  5. 5.価格上昇局面での受注のためにも
  6. 6.まとめ

中級層以上の客層が潜在的に求めているもの

お客様が新たに住まいづくりを進めるなら次の2つの分野のクリアは必要条件です。


①「安全/安心/快適」分野

耐震性や温熱環境、VOC対策等の「安全/安心/快適」な住宅であることはある程度の幅はあっても全ての客層で対応する分野です。

②「生活利便性」分野

部屋数、収納量、家事動線等の「生活利便性」が確保されていることも程度の差はあっても全ての客層で必要な分野です。

ローコスト層であってもこの「安全/安心/快適」と「生活利便性」の分野をお客様へ提供することについては必要条件ということになります。そのため、「ローコスト住宅」と「中高級住宅」の差が分かりづらくなり、無意識の内に住宅業界が「住宅のクラスレス化」を生み出し、ローコスト住宅全盛期と言っても良い状況を作っています。

ここで注目すべき点はこの2分野はお客様の「現状の生活の不満と不安の裏返し」の分野であるということです。

「不満と不安」という暮らしの「マイナスの領域」の解消だけであれば「安い方が良い」に決まっています。中級層以上への対応は「仕様を上げる」ことぐらいの対処になってしまいます。

また、多くの部材メーカーもローコスト化対応を進めており多少仕様を上げても「差が見えない」状況で設備部材の仕様アップでは決定的な差別化はできない状況です。

ということはこの顕在化している2分野以外の「暮らしの『プラスの領域』分野」を切り拓く必要があります。これが実現できると大きなアドバンテージを握れるということです。「お客様が望むプラスの領域は何ですか」とお客様に尋ねても答えは出て来ません。お客様も気づいていない潜在化している分野への対応が中級層以上の客層を獲得する十分条件です。

多様化したお客様の「心豊かな暮らし」の実現



お客様が気づいていないご自身の「心豊かな暮らし」という潜在化している暮らしの「プラスの領域」の実現が中級層以上の客層への住まいづくり対応です。

「安全/安心/快適」のように会社側が「この性能で」と決心すればそれを訴求するだけですから話は簡単です。「生活利便性」についても「お客様に聞けば要求してくれる」のでこれも簡単で、あとは予算内でどこまでできるのか程度の話しです。

これに対して「心の豊かさ」は個々のお客様ごとに異なる上に「聴かれても答えられない」部分ですから「ご本人に気づいていただく」ための新たな営業手法、接客手法が必要になってきます。

中級層以上のお客様獲得には「気づき共感営業」手法が最適


初回面談が住宅受注成否の80%以上を占めているということは、素肌感覚としてもご理解いただけると思います。この初回面談で中級層以上の層を確実にキャッチアップする営業手法が「気づき共感営業」です。

従来の営業では「自社の特長(構造/性能面が主体)」を「説明/訴求」することを主眼に置いて、モデル住宅については全般を流して案内しています。

お客様は先ず自身の「話を聴いて欲しい」というのが本音です。内容的には数分間程度のことが多いので、「お客様を受容れてお話をお聴きする」ことで少なくとも個々のお客様のご関心の方向が分かります。

「自社特長を分かってほしい営業」と「自分の話しを聴いて欲しいお客様」という真逆のベクトルのぶつかり合いをお客様中心の考え方を優先して初回面談をスタートします。その後もお客様の関心のある部分であっても、そこで「実現したいコト」は何かと問われてもお客様は答えられませんから「触発」という手法を用います。

具体的には「モデル住宅の『住人ご家族』がこういうコトを実現されたいということでこうしています」ということが各部屋のご案内の出だしです。お客様には常に「このモデル住宅に住むとしてという視点でご覧ください」と「自分ごとに置き換えての視点」で「自分たちならどうしたいのか」という住いづくりにリアリティを持っていただきながらご案内を進めます。

ご案内の仕方も「観るだけ」ではなく「体感体験」を中心として「気づき共感営業6ステップ」という「なあるほど」と分かりやすいステップで「なぜここをこの住宅のご家族はこのようにされたのか」ということが伝わるようにします。このようにモデル住宅のリアルな暮らし視点の「触発」による案内で「気づき」を得ていただきながら「お客様ならどうされたいのですか」という視点でご案内を進めます。

初回面談終了時に事実上受注が決まる



モデル住宅の案内はお客様「ご自身が住むとして」という視点でモデル住宅を観ていただきますので、ご関心のない部分を案内すると集中力が途切れます。お客様が集中出来る時間は長くとも40~60分程度です。

従ってせっかく当社に来ていただいたのですからと、大空間で自社の安全/安心/快適の説明がしやすいリビング、ご主人様のご関心がある部屋/部位、奥様のご関心がある部屋/部位の3か所に絞ってご案内します。

これ以上の触発は情報過多でオーバーフローとなり、気づき共感につながらず逆効果になります。

自社のメイン部分のリビングとご主人様と奥様がご関心のある部屋/部位で新しい住まいでの暮らしで「実現したいコト」が見えれば確実に受注につながります。逆に考えればたった3カ所だけですから次アポ、次々アポでさらに気づき共感営業を積み上げることができればもう盤石です。

その間に敷地の確認、もしくは土地紹介も進め、金融機関との資金計画の確定なども併行して進めながら「安全/安心/快適」の構造/性能面や、収納の工夫や動線などの「生活利便性」についてもご納得をいただいて受注を確実なものにします。これらの情報をベースに「暮らしフィット設計」で初回プレゼンでの受注を実現します。

価格上昇局面での受注のためにも

総花的なモデル住宅ご案内を行うと価格にセンシティブな昨今の状況では「あれもこれも採用したい」では価格ストライクゾーンを外してしまい土俵に乗れないという事態を招きかねません。

また、価格優先として付加価値部分をそぎ落としては差別化できず、魅力もありませんから受注できません。「暮らしの重心」に絞ってお客様に住宅購入という消費ではなく「こういう暮らしを実現したい」というお客様にとって魅力的な「実現したいコト」への「ここだけは」という「投資」をMax資金計画内で促します。これが他社差別化にもなり付加価値に対する対価を得ることにもつながります。

まとめ

中級層以上の客層を受注する「気づき共感営業」という手法は「従来の住宅営業」とは異なる部分が多い、と感じられるかもしれませんが、お客様の暮らし視点で考えてみるとごく当たり前の肩の力が抜けた自然な流れでの住宅営業手法です。

「不満と不安」という暮らしの「マイナスの領域」の解消のみという従来型の住宅営業から、個々のお客様の「楽しい暮らし、心豊かな暮らし」という暮らしの「プラスの領域」をお客様と共有化することで他社と差別化し、中級層以上の客層の支持を得ることが可能になります。その具体策として「気づき共感営業」手法の導入をお勧めします。

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株式会社ハウジングラボ 松尾俊朗
株式会社ハウジングラボ 松尾俊朗
松下電工勤務で木造軸組改良工法(木と鉄の混構造/テクノストラクチャー工法)をはじめ様々な注文住宅事業形成手法を開発。ハウジングラボ設立後、様々な形態の161社の注文住宅事業サポートを実施。幅広い視点で各社の強みを活かした各社独自の注文住宅事業へナビゲート。

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