接客技術のポイントは「受容れること」+「お客様のメリットになる対応」
現状のような住宅価格上昇と新規来場者数の減少という局面での住宅営業は、「目の前のお客様を確実に受注する」ことが求められます。また、従来客層において価格面でのズレが生じています。
従来客層の中で所得的に下限近くの客層はより価格の安い住宅会社へシフトし、逆に上位の客層が従来は検討対象にしていた住宅会社が「意外に価格が高い」となって自社客層へと降りてきます。このような市況環境では特に「最初期のお客様に対する接客内容」が重要です。
「この会社はダメだな」という心象を与えてしまうのか、「自身のことをよくわかってくれて、この会社の特長は自身の住まいづくりに大きなメリットがある」という「受注へのアドバンテージを獲得」できるという位の差が生じてしまいます。
この接客技術は他業界の営業、特にエンドユーザーと接する営業においてはベテラン社員から新入社員まで全員が身に着けることが重要とされている接客技術ですが、住宅業界の営業は一般的に身に着けていない技術でもあります。
特に現状の価格上昇場面において「お客様を受容れる技術」と「ユーザーメリットで対応する技術」は重要な接客技術です。
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お客様は営業に自身の話を聴いて欲しい
総合住宅展示場でモデル住宅から出てきた直後のお客様に対して「接客を受けた営業への不満は?」という問いかけの調査をしたことがありますが「約6割」のお客様が「私の話をもっと聴いて欲しかった」「自分の考えていることを相談したかった」「一方的な説明を受けて、あとは土地と予算の話しばかりでいやになった」という結果がでました。
これは最初のコラムにも記しましたが「話を聴いて欲しいお客様」vs.「自社特長を話したい営業」という構図で営業が押し切っていることを物語っています。
特に最近ではInstagramの画像を見せて「こんな感じの家にしたい」とお客様が積極的に自己発信しても、営業が「話をずらして」いつの間にか自社の構造特長の話をしているなど、お客様中心の営業からのズレが生じています。先ず、この「話を聴いて欲しいお客様」を受容れる技術を修得しましょう。ただし、「一面的な言いなりの受容れ」ではなく、「徹底的に受容れるが言いなりにならず、お客様のためになるアウトプットをする」というプロの受容れ方の技術修得です。
お客様を「受容れる」技術
「お客様を受容れる」ことは重要な接客技術です。お客様を受容れることでお客様の関心事を理解できます。中途半端にお客様の話しをお聴きするのではなく、徹底的にその意図を理解できるまで受容れてお聴きします。
- 受容れてもらえた ⇒ 認められた
- 話をよく聴いてくれた ⇒ 重視された
- 意図を理解してくれた ⇒ 特別扱いを受けた
お客様を受容れる顧客満足度の3段階です。
お客様が話したい内容はInstagram画像を見せて話されるときにも表れているように、その内容は営業が期待する話の内容であることの方が少なく、営業が話をずらしたくなるような内容が多いものです。
そこを徹底的にお聴きして「意図を理解してくれた」とお客様が納得され「特別扱いを受けた」と感じていただくまで受容れます。その内容について現実的に出来る、出来ないということをその場でお答えする必要もありません。
先ずは受容れてお聴きすることです。お客様の話しで分からないところは「お聴きする」と教えていただけます。専門知識も異分野の知識も不要ですから新人でも実行可能です。
ただし、本気でお聴きする姿勢が重要です。本気でない「聴いているふりの演技」の場合は直ぐにお客様に伝わり見抜かれてしまします。
この「受容れる」ことが成功すると、その時点のお客様のお考えも理解することができますし、お客様は「聴いてもらえた」という満足感から、営業が主導権を持って進めることが可能になります。是非お客様を「受容れる」という接客技術を身に着けてください。
「聴いている」がお客様へ伝わる技術
お客様のお話しをお聴きして受容れる際に、「聴いています」ということを積極的に発信する必要があります。黙って無表情でお聴きしていると、「この営業は本気で聴いてくれているのか?」という疑問をお客様が持たれます。そこで「本気で聴いています」とお客様へ伝える営業の発信が必要です。
先ずは話の内容が分かったという発信は「うなずく」ことと、「メモを取る」こと、そしてこれは重要だという部分では「パッと明るい表情」になって、「メモに囲みを入れる」という表情と動作で「分かりました」を伝えます。お客様のお話の区切りでは、お客様の話された要旨をまとめて、お客様へ受け取った内容が間違っていないかを確認します。こういう「聴いている」という技術が「受容れる」を下支えします。
自社商品特長をお客様の暮らしのメリットへ置き換えて伝える
耐震性や断熱気密性能についての自社独自の技術や、性能についてお話ししただけではユーザーメリットとしてお客様には伝わりません。「ふ~ん、そうなんだ」程度の伝わり方です。
「耐震等級3というのは消防署や警察といった災害時でも機能を失わないようにという建物と同等という性能です」というのも一般的な話で多少の安心感に繋がりますが「固有名詞のお客様に伝わる内容」ではなく、あくまでも「一般論」の話しです。カタログやホームページへの表記はこれで良いと思いますが、営業は目の前の固有名詞のお客様の具体的な暮らしの場面のユーザーメリットで伝える工夫が必要です。
例えば消防士のご主人と奥様、2才、1才のお嬢様がいらっしゃるお客様の場合には、大規模災害時にご主人は職業的役割から2週間程度帰宅できないということも考えられます。
「大きな災害時にもガラス1枚割れないレベルの耐震と制震性能で家族を守る安全な住まいのため、避難所へ行って感染症のリスクや、幼いお子様が周囲の人たちにご迷惑を掛けないかなどの不安も全て払しょくできます。安心してご主人の帰りを待てます」という個々のお客様に対するユーザーメリットでお伝えします。
職業/職種は「個々のお客様へのユーザーメリットを考える」基本情報
アンケート取得時の「職業/職種」は「個々のお客様へのユーザーメリットを考える」際の重要な情報です。
例えば3交代勤務の看護師の奥様にとって「昼間熟睡できる寝室」は重要なポイントです。防音性能を使ってこのお客様へのユーザーメリットを組み立てることができます。職業について、アンケートでお答えいただけていない場合でも、職種なら口頭でお聴きしてもお答えいただけやすいと思います。
「SE」という職種なら在宅勤務がありそうだというように、ある程度の推察も可能です。このようにお客様の職業/職種から固有名詞でのユーザーメリットをお伝えする努力が必要です。常に目の前のお客様を中心に考えるということを実戦に落とし込む重要な接客技術です。「お客様のメリットになる対応」が出来るように取り組みましょう。
まとめ
集客減と価格帯の上昇という局面で重要な接客技術のポイントは「受容れること」と「お客様のメリットになる対応」です。「お客様の暮らしを中心に考える」という注文住宅営業の根底にある考え方を実戦で運用できるようにしましょう。これによって少ない新規来場者であっても確実に受注に前進させることが可能になります。
この技術はお客様を「認める」ことで、お客様を中心に置き、理解する住まいづくりの会社であるということを伝えるだけでなく、お客様の関心事などの分野で「自社商品特長」を個々のお客様メリットとして理解しやすい形で訴求することができます。ベテランから新人まで適切な研修と訓練をすれば実行可能な内容ですから是非取り組み成果を上げていただきたいと思います。