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建設業を対象とした3つの保険と補償内容

住宅建設に携わる工務店・ビルダーには、現場の事故・災害によって従業員や第三者との間でトラブルが発生するリスクがあります。このようなリスクに備えるには、建設会社を対象とした保険に加入しておくことが重要です。

ところが、「建設業向けの保険にどのようなものがあるのか分からない」という担当者の方もいるのではないでしょうか。

この記事では、建設業を対象とした保険を大きく3つに分けて、種類と補償内容について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.①第三者に対する保険
    1. 1.1.請負業者賠償責任保険
    2. 1.2.生産物賠償責任保険(PL保険)
  2. 2.②従業員に対する保険
    1. 2.1.業務災害補償保険
    2. 2.2.使用者賠償責任補償保険
  3. 3.③建物や資材に対する保険
    1. 3.1.建設工事保険
    2. 3.2.組立保険
    3. 3.3.土木工事保険
  4. 4.まとめ

①第三者に対する保険

1つ目は、第三者が負った損害に対する企業への賠償責任を補償する保険です。

工事中の事故によって他人をけが・死亡させたり、財産に損害を与えてしまったりした場合のリスクに備えられます。

第三者に対する保険には、主に2つの種類があります。

請負業者賠償責任保険

請負業者賠償責任保険とは、工事中に第三者や第三者の所有物に対して損害を与えた場合に、企業が被る損害賠償責任を補償する保険です。

工事中の対人・対物事故だけではなく、建設現場や資材置き場などの管理不行き届きによって発生した事故も補償対象となります。

▼請負業者賠償責任保険で補償を受けられるケース

  • 高層の作業現場から資材を落下させてしまい、通行人をけが・死亡させた
  • 住宅の建設中に重機が横転して、駐車場にあった自動車を損壊させた
  • 資材置き場に積んでいた木材が崩れ、通行人にけがをさせた


生産物賠償責任保険(PL保険)

生産物賠償責任保険とは、工事完了後の建築物に欠陥・不備があったことによって、顧客や第三者に損害を与えてしまった場合に、企業の損害賠償責任を補償する保険です。

工事中の事故ではなく、工事完了後に生産物(建築物・リフォームした設備等)に欠陥があった場合の賠償責任リスクに備えられます。

▼生産物賠償責任保険で補償を受けられるケース

  • 排水管の工事に欠陥があったことが原因で水漏れが発生した
  • 工事の欠陥によって外壁材が剥がれ落ちて、入居者にけがを負わせた
  • 電気工事の配線不備によりショートして、火災が発生した

②従業員に対する保険

2つ目は、建設工事中に従業員に事故が起きてしまった場合に、公的な労災保険(政府労災保険)に上乗せして補償を受けられる保険です。“労災上乗せ保険”とも呼ばれます。

建設工事中に事故が発生して、後遺障害や死亡につながった場合、従業員への賠償金額が億単位になるケースもあります。労災上乗せ保険に加入しておくことで、公的な労災保険では賄えない分の損害賠償金を補償してもらうことが可能です。

建設会社が加入する労災上乗せ保険には、主に次の2つが挙げられます。


業務災害補償保険

業務災害補償保険とは、業務上で発生した災害によって従業員をけが・死亡させた場合に、企業の損害賠償責任を補償する保険です。保険会社によって保険商品名は異なり、法定外労災保険や法定外補償保険などと呼ばれることもあります。

業務中の事故によって従業員がけが・死亡をした場合、企業に対して安全配慮義務が問われ、損害賠償を請求されるリスクがあります。

業務災害補償保険に加入しておくことで、公的な補償制度となる労災保険とは別に、該当の従業員またはその遺族に対して保険金が支払われます。さらに、入院・通院・手術に対する補償も備わっています。

工務店・ビルダーにおいては、以下のようなケースで補償を受けられます。

▼業務災害補償保険で補償を受けられるケース

  • 建設中の転落事故で従業員が死亡した
  • 建設中に重機との接触事故が発生して、現場の従業員が骨折した
  • 長時間労働による過労が原因で、脳梗塞を発症した


使用者賠償責任補償保険

使用者賠償責任補償保険とは、業務上で発生した災害によって従業員をけが・死亡させた場合に、企業の損害賠償責任を補償する保険です。

政府労災保険に認定され、給付された金額を超過した分について、被災した従業員またはその遺族に対して保険金が支払われます。補償対象となる費用には、損害賠償責任に関わる問題解決に際してかかった訴訟費用、弁護士報酬等の費用なども含まれます。

なお、業務災害補償保険に特約として使用者賠償責任補償保険を付けられる保険商品もあります。

▼使用者賠償責任補償保険で補償を受けられるケース

  • 足場の解体中に落下事故が発生して、従業員が死亡した際、損害賠償金が給付される保険金を超過した
  • 建設中に労災が発生して、遺族との損害賠償責任に係る示談交渉で弁護士費用が発生した

③建物や資材に対する保険

3つ目は、建設中に発生した建物や資材、設備などの物への損害を補償する保険です。対人事故は補償対象とはならず、物への損害補償に限られるのが特徴です。

建設会社が加入する物保険には、主に以下の3つが挙げられます。

建設工事保険

建設工事保険とは、工事中に発生した事故・災害によって、建物や設備に損害を被った場合に、復旧費・残存物片付け費用・臨時費用を補償する保険です。

施工ミスによる損害に加えて、火災、地盤沈下などの突発的な事故、放火やいたずらなどの外部要因的なアクシデントが補償対象です。さらに、台風・落雷などの自然災害による損害も含まれます。

▼建設工事保険で補償を受けられるケース

  • 工事中に爆発が起きて、組み立て中の鉄骨が破損した
  • 溶接ミスによって火災が発生して、建物の一部が焼損した
  • 台風によって建設中の屋根材が損傷した
  • 第三者によって資材が盗難された


組立保険

組立保険とは、機械・設備の組立工事で発生した事故によって損害を被った場合に、復旧費を補償する保険です。組立工事には、住宅の内外装工事や空調・電気・給排水・ガスの設備工事などが挙げられます。

施工ミス・組立作業の欠陥によって起こった事故や盗難・いたずらなどの外部要因的なアクシデントが補償対象となります。そのほか、組立工事中の地盤沈下・火災・電気のショートなどの突発的な事故も含まれます。

▼組立保険で補償を受けられるケース

  • 電話ケーブルの敷設中に電気がショートして、電線が破損した
  • 暴風により、外装改修工事中の外壁の型枠が脱落した
  • ガス設備の据付工事中に火災が発生して、ガスの配管が破損した

土木工事保険

土木工事保険とは、土木工事中に発生した事故・災害によって、工事中の建物や設備、資材などに損害が発生した場合に復旧費を補償する保険です。

施工ミスによる損害に加えて、工事に伴う急な火災や地盤沈下などの突発的な事故も補償対象となります。そのほか、放火やいたずらなどの外部要因的なアクシデント、台風・落雷などの自然災害による損害も該当します。

▼土木工事保険で補償を受けられるケース

  • 台風による河川氾濫によって掘削済みの工事現場に泥土が堆積して、鉄筋が破損した
  • 工事用仮設物の休憩所から出火して、工事用の材料が焼失した
  • 工事現場に保管していた鉄筋が盗難にあった

まとめ

この記事では、建設業を対象とした保険について、以下の項目を解説しました。

  • 第三者に対する保険
  • 従業員に対する保険
  • 建物や資材に対する保険

工務店・ビルダーのように住宅建設を行う会社では、現場での事故や災害に備えた保険への加入が欠かせません。

建設業を対象とした保険には、第三者への損害賠償を補償する保険のほか、従業員に対する労災の上乗せ保険、建設設備や資材に対する物保険など、さまざまな種類があります。

会社の規模や工事内容・範囲によって必要な保険が異なるため、補償内容と保険料の兼ね合いを吟味したうえで選択します。

現在加入している保険内容の見直しや新たな保険への加入を検討している場合は、現場のリスクを把握したうえで、保険のプロに相談してみるのも一つの方法です。

なお、以下のページでは、工務店・ビルダー向けのお役立ちコラムを掲載しています。こちらもぜひご活用ください。

 ≫ 業務お役立ちコラム​​​​​​​


編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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