テレワークの普及で住宅ニーズは変化する? 一戸建ての郊外移住の魅力と注意点
技術革新や人口の増減など社会の情勢に応じて、人々の働き方は変化を遂げてきました。2020年に日本で最初の感染が確認された新型コロナウイルス感染症への対策として、テレワークを推奨する企業は少なくありません。
毎日の通勤が不要、あるいは頻度が減るものの、テレワークを実施する人の7割以上は今の家からの住み替えを意向するまでには至っていません。
しかし、コロナ禍以前と比較して職場からのアクセスのよさを住まい選びの条件とする人の割合が減っていることも事実です。今後、住み替えの意向を示す人のうち、4割が「今よりも部屋数の多い家に住みたい」と希望しています。
工務店・ビルダーは、一戸建て住宅や郊外移住を検討する人にとってどのような住まいが最適か、郊外エリアでの住宅事情を把握しておくことが重要です。本記事では、テレワークの普及によって注目される郊外エリアの魅力について解説します。
(出典:厚生労働省『新型コロナウイルス感染拡大とテレワーク』)
(出典:国土交通省『我が国の住生活をめぐる状況等について』)
目次[非表示]
- 1.テレワークの普及で注目される“職住融合”
- 2.郊外で暮らす魅力
- 2.1.都心部よりも物件価格が安い
- 2.2.物価が安い
- 2.3.豊かな自然環境が身近にある
- 2.4.比較的治安がよい
- 3.郊外で暮らす際の注意点
- 3.1.車の購入・維持にコストがかかる可能性がある
- 3.2.交通アクセスが悪い所がある
- 3.3.子育て・教育施設が近くにない場合がある
- 4.住みやすい郊外エリアを選ぶポイント
- 4.1.都心部までアクセスしやすい距離
- 4.2.商業施設や医療施設がそろっている
- 4.3.治安がよく防犯設備が整っている
- 5.まとめ
テレワークの普及で注目される“職住融合”
近年、仕事と生活を兼ねた住まいを表す“職住融合”(しょくじゅうゆうごう)という言葉が注目されています。
コロナ禍以前は、職場に近いエリアを選ぶ人が現在より多くいたため、職場と住まいの距離が近い“職住近接”の考えが一般的でした。しかし、現在はコロナ禍でテレワーク化が進んでいることにより、職場から近いエリアにこだわる必要もなくなりつつあります。
内閣府の『第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』においても、東京圏(1都3県)に住む人のうち3~4割が地方移住に関心があるとの結果が出ています。
- 地方移住に関心がある人(東京圏):約30%
- 20代で地方移住に関心がある人(東京圏):約40%
また、都心部は土地代や賃料も高くなるのが一般的です。予算内でゆとりのある住宅づくりを実現しやすい郊外へ住み替えを検討するのは、自然な流れともいえます。
さらに、人が密集しやすい都心では新型コロナウイルスによる感染リスクが気になるという理由から郊外への移住を考えている人もいます。
(出典:内閣府『第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』)
郊外で暮らす魅力
郊外で暮らすことには、都心部と比べて物件の価格が安いこと以外に、自然をより近くに感じられることや治安の良さなど、さまざまな魅力があります。
都心部よりも物件価格が安い
郊外は都心部よりも地価が安くなる傾向があります。土地代を抑えることができれば、その分、建物や設備などにお金をかけられます。
一戸建て住宅を購入する場合も郊外であれば同じ予算で性能やグレードの高い物件で暮らすことが可能です。物件価格が安いという点は、郊外に家を持つうえで大きな魅力の一つといえます。
物価が安い
郊外では、都心部と比べて物価が安いのが一般的です。
食料品や日用品などについても、郊外エリアでは価格が安くなる傾向にあります。そのため、都心部で暮らすよりも生活費を抑えやすいといった魅力があります。
豊かな自然環境が身近にある
山や川など、豊かな自然環境が身近にある点も郊外で暮らす魅力の一つです。
地域によっても異なりますが、交通量や人通りも都心部より少ないため、落ち着いた環境で生活ができます。のびのびとした環境で子育てをしたいと望む方にも向いています。
一方で、自然を身近に感じられる郊外であっても、駅前には商業施設がまとまっている地域もあります。こうしたエリアを選択すれば、利便性と自然環境が調和した暮らしを実現できます。
比較的治安がよい
郊外には閑静な住宅街が多く、比較的治安がよい傾向にあります。
繁華街から離れているため、人通りが少なく、穏やかで静かという点も魅力です。「外が騒がしくて落ち着かない」「夜の喧騒で眠れない」といった心配も少なくなります。
郊外で暮らす際の注意点
郊外での暮らしには多くの魅力がある一方で、いくつか注意したい点もあります。
郊外エリアの住宅を検討しているお客さまには、郊外に暮らす魅力やメリットだけでなく、注意点もきちんと伝えることが重要です。
車の購入・維持にコストがかかる可能性がある
郊外での暮らしは、車移動が一般的です。
地域によっては、スーパーや商業施設まで車でしかアクセスできないところもあります。車を所有していない方にとっては、車の購入や維持にかかるコストが負担になる可能性があります。
交通アクセスが悪い所がある
エリアによっては、オフィスへのアクセスに時間がかかる場合があります。
テレワークになったものの、出勤・在宅をローテーションで行う場合や状況に応じて出勤が必要になる場合のことも考えなければなりません。オフィスへのアクセスが悪くなると、通勤時間が長時間になることや乗り換えが多くなることがストレスになる方もいます。
子育て・教育施設が近くにない場合がある
郊外では、保育園や小学校などの子育て施設が近くにない可能性があります。仕事はテレワーク化できても、お子さまは通園・通学が必要です。保育園や小学校などが近くにない場合は、毎日の送り迎えが発生します。
また、公共交通機関を使って通学が必要になる場合は交通費もかかります。お子さまがいるご家庭では、保育園や幼稚園、学校などへの通いやすさも考慮することが重要です。
住みやすい郊外エリアを選ぶポイント
郊外移住を成功させるためには、交通アクセスの悪さや移動の不便さなどをどこまで受け入れられるかを明確に決めておくことがポイントです。
都心部までアクセスしやすい距離
テレワークを中心としながら定期的に出社も必要というお客さまのなかには、都心部までアクセスしやすいエリアを選びたいと考える方もいます。
お客さまが通勤にかけられる時間を事前に確認し、車もしくは電車で通えるエリアを提案しましょう。
商業施設や医療施設がそろっている
家の近くに買い物できる施設がなければ、毎日の生活が不便です。そのため、周辺に商業施設やショッピングモールがあるかどうかという点を重視するお客さも少なくありません。
同様に、突然の体調不良の際も、車で時間をかけて足を運ぶ必要がないよう、徒歩や自転車で行ける距離に医療施設があるかどうかを条件としているお客様もいます。
ただし、商業施設と医療施設どちらにも徒歩や自転車で行けるエリアを見つけることが難しい場合もあります。お客さまに対して“商業施設に近い場所”と“医療施設に近い場所”のどちらの条件を優先するのかをヒアリングし、おすすめのエリアを提案するようにしましょう。
治安がよく防犯設備が整っている
これは都心部・郊外に関係なくいえることですが、駅周辺や住まいの周辺環境が整備されているエリアを選ぶこともポイントです。
とくに、駅から自宅までの人通りの多さや街灯の数などはしっかりと確認しておく必要があります。また、避難所や防犯設備の設置有無など災害対策を講じているエリアを選ぶことも大切です。
まとめ
物件価格の安さをはじめ、自然が多く穏やかに暮らしやすい点や治安がよい点など、郊外に住む魅力はさまざまです。
一方で、交通や生活面の利便性が都心部ほどよくない場合もあります。とくに、テレワーク中でも週に何日か出勤しなければならない方は、最寄り駅までの距離も確認しておくことが大切です。加えて、家族の通勤・通学のしやすさについても検討する必要があります。
郊外の一戸建て住宅への移住を検討しているお客さまには、希望のエリア、家族構成、ライフスタイルなどをしっかりとヒアリングしたうえで、住み始めてからも不便のないエリアを提案することが重要です。