安全な擁壁(ようへき)の調査方法と検査済証で分かる内容
工務店・ビルダーにおいて、擁壁のある土地に住宅を建築する場合や、住宅の増築・建て替えなどを実施する際は、安全性に問題がないか確認が必要です。
擁壁に法律上の許可がない場合や、安全性が検証されていない状態では、建築基準法の規定に適合せず、住宅建築の工事ができなくなる可能性があります。
建築工事をスムーズに進めるとともに、施主とのトラブルや建築後の事故を回避するためには、状態を確認して法律に基づいた対応を取ることが重要です。
この記事では、擁壁の調査方法と、安全性を確認するための検査済証(※)について解説します。
※検査済証とは、2mを超える擁壁を造る際に、許可・確認申請を行い、完了検査を受けたことを証明する書類のこと。
目次[非表示]
- 1.擁壁とは
- 2.擁壁の安全に関する調査方法
- 3.検査済証で分かること
- 4.まとめ
擁壁とは
擁壁とは、がけや盛土などの高低差のある土地の斜面の土砂を保護して、がけ崩れを防ぐために造られる工作物のことです。
▼擁壁の種類
- 鉄筋コンクリート擁壁
- 練(ねり)積み造擁壁
- 重力式コンクリート擁壁
- 増し積み擁壁
- 空石積み擁壁 など
擁壁は造られてから時間がたつと劣化が進み、地震や豪雨などの災害で崩壊してしまう恐れがあります。また、過去に増し積みや造り替えなどが行われた擁壁は、法律上の建築基準に適合していない可能性もあります。
また、安全性を確認せずに住宅建築を行った場合、建築中に擁壁が崩壊したり、災害時の二次被害が発生したりする可能性があり、施主とのトラブルにつながりかねません。
擁壁のある土地への住宅建築や建物の増築・建て替えを行う際は、法律上の手続きを遵守しているか、また劣化・崩壊の可能性はないかなどの確認が不可欠です。
擁壁の安全に関する調査方法
擁壁の調査を行う際は、法令遵守の確認に加えて、現地調査での安全点検が必要です。ここでは、具体的な調査方法について解説します。
①法令遵守の確認
既存の擁壁がある場合、法令の規定に適合しているか、許可や確認申請の手続きについて確認します。
2mを超える擁壁を造り替える場合は、建築基準法において、工作物の確認申請の手続きが義務づけられています。
また、宅地造成工事規制区域内にある擁壁を造り替える際に、2mを超える擁壁を解体する場合は届出が必要です。ただし、宅地造成等規制法・都市計画法による許可を得ている場合は不要です。
▼宅地造成工事規制区域
宅地造成工事規制区域とは、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを、都道府県知事や政令指定市・中核市・特例市の長が指定した区域のことです。
引用元:国土交通省『宅地防災とは ~宅地造成等規制法について~』
なお、2mを超える擁壁が規定に適合しているかは、自治体の窓口などで検査済証の有無を確認することで判断できます。
(出典:国土交通省『宅地防災とは ~宅地造成等規制法について~』)
②現地での点検
擁壁がある土地・建物には、安全性に問題がないか、現地での点検を行うことも必要です。
法令上の手続きが済んでいて、基準も満たしている擁壁であっても、造成後の適切な維持管理が行われていない場合には、老朽化が進んでいる可能性があります。
また、高さが2m以下の場合は、法令上の許可・確認申請は不要ですが、周辺のがけ崩れで被害を受けたり、経年劣化で強度に問題があったりする可能性も考えられます。
そのため、工務店・ビルダーは住民とともに、現地で擁壁の各部分を目視で点検して、崩壊・事故の可能性がないか確認することが重要です。
▼現地点検の確認ポイント
- 擁壁の表面(ひび割れやつなぎ目のズレ、傷、変形の有無)
- 擁壁からの排水状況(排水溝の破損・ズレ、排水溝・水抜き孔の詰まり)
擁壁の表面にひび割れや傷がある、排水状況が悪いといった状態は、強度の低下につながり、崩壊のリスクが懸念されます。これらの問題が見られる場合には、構造の詳しい検査や、擁壁の造り替えが必要になるケースがあります。
検査済証で分かること
擁壁の検査済証を取得することによって、法令上の許可や確認申請が適切に行われて造成されたことを判断できます。
ただし、法令の規定対象となる擁壁でありながら、検査済証がない場合は、造り替えや減災工事の実施などを行います。
また、安全性が確認できない場合には、施工前に実施する建築確認申請に通らない可能性があり、工期や施工内容にも支障が生じるため注意が必要です。
なお、検査済証については、各自治体の建築指導課・開発指導課などに問合せて確認してください。
まとめ
この記事では、擁壁について以下の内容を解説しました。
- 擁壁とは
- 擁壁の安全に関する調査方法
- 検査済証で分かること
隣地と高低差のある敷地には、がけ崩れを防ぐための擁壁が造られているケースがあります。
安全性を調査する際は、法令を遵守しているかどうかの確認をはじめ、現地調査で劣化状態の点検を実施します。2mを超える擁壁がある、または新築する際は検査済証の交付が必要です。検査済証がない場合は詳しい点検調査のもと、造り替えや減災工事が必要になるケースもあります。
工務店・ビルダーの担当者の方は、施主とのトラブルや事故の防止のために、適切な調査を行うことが重要です。
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