ハウスメーカーと工務店の違いと双方がすべきこと
「家を建てるなら全国区ハウスメーカーと決めている」
「唯一無比の家づくりをするためには工務店しかない」
確固たる信念を持ってどちらかに決めているお客さまの考えはなかなか変えられませんが、ハウスメーカーでも工務店でもどちらでもよいと考えているお客さまも相当数存在します。
皆さんがどちら側にいるか分かりませんが、自社と契約する前にまずはハウスメーカー陣営、工務店陣営それぞれにお客さまをどうやって引き込むかを考えてみてください。
相手の悪口を言うのではなく、それぞれの違いを認識して強い点をうまくアピールする術を身につけるのです。
目次[非表示]
- 1.ハウスメーカーと工務店ここが違う
- 2.それぞれにお客さまが期待していること
- 3.集客方法
- 4.営業アプローチ法
- 5.強み・特徴などの打ち出し方
- 6.まとめ
ハウスメーカーと工務店ここが違う
ハウスメーカーと工務店の違いは様々な切り口で解説することができるのですが、まずは【イメージ】を論点に置いてお話をします。
①ハウスメーカー
全国区ハウスメーカーに限定しますが、デザイン性と信頼性に高い好感度をもたれています。デザインは個人の好みにはなりますが、徹底的に研究をしているので最大公約数にウケるように考えられています。また、CMの効果も大きく影響しています。爽やかな雰囲気のCMで消費者の好感度を高めることに成功しているといえるでしょう。
ただ、その一方で「値段が高い」イメージは完全に定着しているのが課題になります。10年前であれば高価格帯から安価な商品まで揃えているメーカーもあったのですが、新築着工数激減時代を見据え、高い利益を得られる高価格商品に力を入れています。
※JR神戸駅前にある総合住宅展示場(兵庫県)
②工務店
工務店の利点でもあり欠点でもあるのがその振り幅です。ここでいう振り幅とは、信頼性、技術力、歴史、設計力、デザイン性などにおけるレベル差を意味します。いわゆるピンキリということ。
ハウスメーカーは上限と下限の幅が極めて狭い範囲に集約されているのですが、工務店と名のつく会社は技術的なレベルが低い工務店もあれば、匠の世界を極めて雲の上まで突き抜けたレベルの工務店も存在します。
問題は、知り合いでもいない限りお客さまがこの判別を簡単にできないことにあるのです。これらの要素が複合的に絡み、工務店のイメージを作っています。
また、誤解なきように聞いてほしいのですが、工務店という読みの響きに対してあまりオシャレでないというイメージを持っている一般消費者がたくさんいるのも事実です。工務店=古くさい、こうした先入観から来るのですが、工務店の皆さんはこの事実を認識した上でうまく対応してほしいと思います。
※小規模工務店の展示場(三重県)
それぞれにお客さまが期待していること
①ハウスメーカーに期待していること
気密性、断熱性などの性能に加えて、アフターサービスや保証などのバックアップ体制には大きな期待を寄せています。また、大地震が心配されている地域のお客さまに顕著なのは、耐震性に対する信頼性でしょう。
②工務店に期待していること
設計やデザイン性などすべてにおいて、自分だけの家づくりができるかどうかです。ハウスメーカーも以前と比べれば個別対応力がついてきたのですが、それでも細かい部分になると、臨機応変に対応できる工務店にはかなわない部分が多々あります。
集客方法
①ハウスメーカー
ハウスメーカーと聞くと住宅展示場をすぐに思い浮かべますが、ここ数年の間に出店数を相当数減らしています。住宅展示場での集客がメインではありますが、現場見学会や Web 上のイベント、そして SNS に注力していると考えてください。
また、ハウスメーカーは規模感があるので、全国一律で行うイベントに関しては極めて強い集客力を発揮します。積水ハウスは30年以上前から「住まいの参観日」と称して全国一斉の新築現場見学会を行っています。テレビ CM の効果もありますが、集客は抜群で高い効果をあげています。
②工務店
住宅展示場がない場合は、集客の主力として新築の現場見学会と紹介が大きな柱となっています。しかし最近顕著になった集客方法としてSNS があげられます。
Instagram や YouTube と聞くと大手ハウスメーカーがあの手この手で仕掛けて圧倒的な優位を保っているように勘違いしている方も多いですが、私の感覚では工務店の方がこれらをうまく活用していると思います。
某準全国ハウスメーカーは、他メーカー同様に Instagram や YouTube などを駆使して集客を行っています。しかし、規模が大きすぎるのでどうしても焦点がボケてしまう傾向があります。それに対して工務店は小回りが利くので、YouTube にいきなり社長が登場するなど、経営者の顔が直に見えお客さまを惹きつける要因となっています。
もちろん、うまく作り込まなくてはいけませんが、程度が良いものを作成すれば、工務店の方がSNSを使って高い集客効果を上げる傾向があります。
※構造現場見学会(埼玉県)
営業アプローチ法
①ハウスメーカー
接客をして次回アポイントを取るのは個人の営業能力によるところが大きいので、ハウスメーカーと工務店のどちらが上かというのは断言できません。しかし、アプローチスピードはハウスメーカーの方が圧倒的に上でしょう。
これは、入社当初からそのような指導を受けていることも影響していますが、若い営業担当者が多いのでフットワークが軽いことも大きな要因の一つです。
②工務店
積極的なアプローチと押し売りは紙一重ともいえますが、工務店に対しては「もっと積極的に行けばいいのに」と感じることが多々あります。
ひとつだけ工務店の皆さんにアドバイスしたいことがあります。
「その後の予定はいかがですか」と定期的にアプローチをかけるかと思いますが、お客さまの中にはこのアプローチを待っていたり、ヘタをすると「もう少し背中を押してくれないかな」と考えているお客さまがかなりいるということを認識してください。
意外な話かもしれませんが、これは事実です。
強み・特徴などの打ち出し方
①ハウスメーカー
テレビ CM などを使ったイメージ戦略はハウスメーカーの得意技といえます。しかし、機を見るに敏なのがハウスメーカーです。世の中の動向や流行などは綿密に分析しているので、家を建てる人がどんなことに関心を示すかを常に精査し、商品開発に活かしているのです。
「レジリエンス住宅」なる言葉を聞いたことはあるでしょうか。セキスイハイムなどは積極的にこの言葉を前面に打ち出していますが、要は災害に備える住宅となります。日本は昔から災害大国ですが、以前と比べると夏の豪雨災害などの回数は顕著に増えています。
また1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震など大きな地震も発生しているので、耐震に対する意識もどんどん高まってきています。このような社会情勢を受けた上で、レジリエンス住宅なるものを前面に打ち出しています。
日本人の多くが関心を持っていることに対して、我々の住宅会社はそれに対応していますと強みを打ち出す戦略といえるでしょう。
②工務店
私が考える工務店の強みは次の2点です。
・こだわる方向性が一致すると強烈なパワーを発揮する
地元の県産材にこだわった工務店があるとしましょう。この工務店が開催した新築現場見学会に、無垢材にこだわり、しかも県産材にこだわった木材が大好きなお客さまが来場したとしましょう。たまたま接客で対応した社長と話があって大盛り上がり。
しかも見学した現場が杉などをふんだんに使ってそれを強調した家だとすれば、お客さまのハートを鷲掴みすることができます。実はこの話は最近三重県であった本当の話です。
・地域密着である
ハウスメーカーは地域からの撤退があり得るのと同時に、営業担当者の転勤や退社が日常茶飯時に起こります。転勤をほぼさせないような大手ハウスメーカーもありますが、転勤を普通に行うハウスメーカーであると、せっかく 担当してくれた営業社員が翌月には全く違った支店に転勤してしまう可能性があるのです。
工務店の皆さんが意外に気づいていない強みがこのことだと、自信を持ってください。
まとめ
ハウスメーカーと工務店では、営業の手法や家づくりに対する考え方が違う点が多々あると思います。家づくりという点では両者とも全く同じなのですが、ハウスメーカーは営業職が独立しているということもあるので、お客さまと対応する担当者は頭の中がどうしても販売一色になってしまいます。
これに対して零細工務店は、営業、管理、施工を社長が全て担うようなケースも珍しくはありません。ハウスメーカーと違って営業だけを考えてればいいというわけではないので難しい面も多々あるのですが、全てのことが見えて折衝できるのは大きな強みだとも言えるでしょう。
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