工務店・ビルダーの差別化戦略のカギと4つの要素
新築住宅市場の市場規模は将来的に縮小が見込まれています。
さらに、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響で対面営業が制限されたことで、工務店・ビルダーの集客がより難しくなっているといえるのではないでしょうか。
こうした状況で工務店・ビルダーが生き残るためには、他社といかに差別化を図れるかが重要です。
この記事では、工務店・ビルダーの差別化戦略において重要な考え方、具体的なポイントについて紹介します。
出典:経済産業省『経済産業省における住宅関連施策の動向』
目次[非表示]
- 1.工務店・ビルダーの差別化は“顧客視点”がカギ
- 2.工務店・ビルダーにおける4つの差別化要素
- 2.1.①設計の提案力
- 2.2.②感情を動かす営業力
- 2.3.③ブランドコンセプト
- 2.4.④コストパフォーマンス
- 3.工務店・ビルダーが差別化を図るためのポイント
- 3.1.ターゲットとニーズを明確化する
- 3.2.競合他社を分析・比較する
- 4.まとめ
工務店・ビルダーの差別化は“顧客視点”がカギ
工務店・ビルダーの差別化を図る際に重要な考え方となるのが顧客視点です。
“差別化”といえば、競合他社との違いを見つけることだけに注力してしまう傾向にあるのではないでしょうか。
しかし、他社とは異なる部分をアピールすることも大切ですが、それが顧客ニーズを満たしていなければ集客にはつながりません。
まずは、自社のターゲットがどのようなニーズを持つのか、顧客視点に立って把握する必要があります。
工務店・ビルダーにおける4つの差別化要素
工務店・ビルダーが差別化を図るには、どのような要素に目を向けるとよいのでしょうか。
自由設計や住宅性能といった点を強みとして打ち出すほかに、消費者がイメージしやすいアピールポイントを伝えることも欠かせません。
競合他社にもあるような設計プランや性能ではなく、自社だからこそできる施工の強み・魅力を見つけることが大切といえます。
ここでは、顧客ニーズを踏まえた4つの差別化要素を紹介します。
①設計の提案力
お客さまが希望するイメージをくみ取ってニーズを満たす提案ができることは大きな強みです。
お客さま自身が気づいていない潜在的な気持ち・価値観を理解したうえで、新たな角度から提案できる力を持つ工務店・ビルダーは、選ばれやすい存在になることができます。
②感情を動かす営業力
住宅そのものだけではなく、営業力も差別化できる要素の一つです。
住宅はお客さまの人生に関わる大きな買い物のため、「どのような人・会社から購入するのか」といった点も重視されます。
親身に寄り添い、安心感・信頼感を与えられる営業担当者はお客さまから喜ばれやすいでしょう。
設計内容が標準化されている、一定のプランがあるなど、施工面で差別化が難しい場合にも、お客さまの感情に訴えかける営業力があることが有力な差別化要素となります。
③ブランドコンセプト
企業や住宅に対して、独自性のあるコンセプトを設けることも重要です。
たとえば、以下のようなコンセプトは工務店・ビルダーにも有効な差別化要素といえます。
▼差別化できるブランドコンセプトの一例
- 自然素材にこだわった人と環境に優しい住宅
- トレンドのデザイン・設備を柔軟に取り入れられる住宅
- 都心部の狭小地でもこだわりを反映できる住宅
- 構造材を独自のルートで仕入れて建築費を抑えられる住宅
このように、競合他社と異なる企業の思い・アイデンティティをコンセプトとして反映させることで、自社ならではの魅力をお客さまに伝えやすくなります。
④コストパフォーマンス
お客さまのなかには、住宅のコストを重視する方もいます。一定の住宅性能やデザイン性などを確保しつつ、低価格帯で住宅が建てられることはお客さまにとって魅力的です。
この際、単に低価格であるというだけではなく、住宅購入後のアフターフォロー体制が充実していることもお客さまにとって重要なポイントです。
たとえば、保証やアフターサービスの実施、ファイナンシャルプランナーによる資金計画のサポートなども差別化要素となります。
出典:住宅金融支援機構『2020年度における住宅市場動向について』
工務店・ビルダーが差別化を図るためのポイント
ここでは、工務店・ビルダーが差別化を図るための具体的なポイントを紹介します。
ターゲットとニーズを明確化する
まずは、自社のターゲットとなる人物像を明確化し、顧客が何を求めているかを洗い出すことが必要です。
以下のような項目から、ターゲット層を絞り込みます。
▼ターゲット像を決めるための項目
- 年齢
- 世帯の種類(夫婦2人、子育て世帯、同居世帯など)
- 居住エリア
- 世帯年収
- ライフスタイル
休日の過ごし方、家での過ごし方、趣味趣向など、人物像を具体的に設定するのがポイントです。
ターゲットのニーズを的確に捉えることで、自社の提案する商材と顧客ニーズが乖離(かいり)するのを防ぎ、顧客に納得・満足してもらえる提案ができるようになります。
競合他社を分析・比較する
顧客ニーズに沿ったうえで競合他社と差別化できる要素を出すことが重要です。
そのため、競合他社との比較・分析を行い、自社の潜在的な強みの発見や顕在化している強みの訴求方法を変えていくことが重要です。
工務店・ビルダーで行える分析項目には以下が挙げられます。
▼競合他社との分析項目
- ブランド力(シェア率・認知度など)
- 価格
- 素材へのこだわり
- 住宅性能
- デザイン
- サービス力
はじめに述べたように、顧客ニーズが存在しなければ競合他社と異なる魅力も自社の強みとはいえません。
競合他社を分析・比較するなかで自社の強みが明らかになった際は、その強みに対して顧客ニーズがあるかどうかを見極めることもポイントです。
まとめ
中長期的な住宅市場規模の縮小やコロナの影響により、工務店・ビルダーへの集客が難しくなっている現在、競合他社との差別化は必須の課題といえます。
差別化戦略を考える際は、単に自社の強み・魅力をアピールする前に、顧客視点に立ってニーズを把握することが重要です。
また、独自性のある強み・魅力を見つけるには、ターゲット選定や競合分析も欠かせません。自社の強みとニーズが乖離していないかを確認するのもポイントです。
工務店・ビルダーが生き残るために、自社ならではの強みや差別化要素は何か、改めて考えてみてはいかがでしょうか。