工務店・ビルダーが顧客獲得・事業成長するために重要な3つの戦略
少子高齢化による人口・世帯数の減少に伴い、今後の新設住宅着工戸数は減少していくと見込まれています。
市場の縮小が危惧されるなか、工務店・ビルダーが生き残るためには、中長期を見据えた戦略を立て推進していくことが必要です。
本記事では、住宅市場の縮小とそれに伴う競争性の激化に対して、工務店・ビルダーが顧客を獲得していくための3つの成長戦略について解説します。
出典:経済産業省『経済産業省における住宅関連施策の動向』
目次[非表示]
- 1.①若手人材の確保・育成
- 2.②商品力・ブランド力の強化
- 2.1.顧客ニーズを押さえた住宅設計
- 2.2.競合他社との差別化
- 3.③集客施策の強化
- 4.まとめ
①若手人材の確保・育成
1つ目の戦略は、若手人材の確保・育成です。現在、建築業界の人手不足と高齢化が進んでいます。
国土交通省の『大工就業者数の推移』によると、2015年時点、国内で大工職に従事する約35万人のうち、約4割にあたる15万人を60歳以上が占めています。
これに対して30歳未満の若手は2.4万人と極めて少ないのが現状です。
今後、若者の入職と技能継承がなければ、工務店・ビルダーが経営を続けることが困難になる可能性もあります。将来を担う人材の確保に向けて若手人材を採用・育成するための取り組みが急務です。
出典:国土交通省『大工就業者数の推移』/『住宅関連産業について』
採用活動の見直し
若手人材を確保するためには、新卒や第二新卒など、若手人材の採用活動を強化する必要があります。求人誌やWebサイトによる求人広告で応募が集まらない場合には、採用手法を見直すことも大切です。
また、採用後の離職を防ぐために、労働環境や待遇の改善を検討することも欠かせません。具体的な取り組みには以下が挙げられます。
▼若手人材採用のための取り組み
- 若者が働きたいと思える魅力的な労働環境・人事制度を整備する
- 新たな採用手法を取り入れる(人材紹介サービス・リファラル採用など)
採用手法を見直して若手人材の確保を図るとともに、定着させるための取り組みを並行して進めることが重要です。
教育体制の強化
職人や営業職を含め、工務店・ビルダーの業務は個々の作業が属人化しやすい傾向にあります。
若手人材に技術を継承していくためには、ベテラン社員のノウハウや知見・技術などを社内で共有して、若手を育成していく体制づくりが求められます。以下の方法により、教育体制の強化を図ることが可能です。
【営業】
- ツールを用いて優秀な営業担当者の業務フローや提案内容などを蓄積・共有する
- 社内・社外研修を実施して営業スキルの向上・平準化を図る
【職人】
- 教育担当者を現場に配置して、若手人材の技術向上を図る
- 建築分野の育成に向けた訓練や支援サービスを活用する
②商品力・ブランド力の強化
2つ目の戦略は、商品力・ブランド力の強化です。顧客獲得のためにはお客さまに魅力的と感じてもらえる住宅設計・サービスが求められます。
住宅商品のバリエーションを増やしたり、マルチブランドを展開したりするなど、市場シェア獲得のための施策を検討することが重要です。
顧客ニーズを押さえた住宅設計
お客さまから選ばれる存在になるには、顧客ニーズを満たした提案が欠かせません。社会情勢の変化をはじめ、働き方の変化や世帯構成の多様化によっても住宅に求められる要素が変化しつつあります。
▼近年ニーズが高まっている要素
- 在宅勤務を行いやすい住環境
- 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)による地方移住への関心の高まり
- 耐震性や遮音性など住宅の性能面を重視した住環境
これらのような顧客ニーズを踏まえ、工務店・ビルダーの商品力を強化するためには、以下のような住宅設計が求められます。
▼顧客ニーズに対応する住宅設計の例
- 在宅勤務の方向けの間取り・プランの提案
- 免震・制震技術、高気密・高断熱を取り入れた高性能な住宅の開発
- コロナ禍での快適な住環境の提案(広さ・安全性・自然環境と融合した住宅など)
出典:国土交通省『ニーズを先取りする未来志向の豊かな住生活の実現』
競合他社との差別化
数ある工務店・ビルダーから自社を選んでもらい、安定した利益を確保するためには、価格競争を避けなければなりません。
競合他社との差別化を図り、自社のブランド力を高めて付加価値を生むことが重要です。たとえば、以下のような戦略が挙げられます。
▼競合他社との差別化戦略の例
- コンセプトの異なる住宅商品のバリエーションを展開する
- 住宅商品の新ブランドを立ち上げ、個別の営業・宣伝などのアプローチを実施する
- ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)やパッシブデザイン、IoTなどのトレンドを押さえる
このように、住宅設計やプランを見直したり、新たなコンセプトを設計したりするなどして独自性のある強みを生み出すことがポイントです。
③集客施策の強化
3つ目の戦略は、集客施策の強化です。
現在、スマートフォンで利用するSNSに加え、さまざまなアプリケーションにより企業と個人との接点が増加していることも影響し、消費者の購買行動が変化しています。
Web検索やSNSから情報収集する人も多く、従来のように展示会やチラシ配布では十分な集客を行うことが難しくなりつつあります。
工務店・ビルダーが集客向上を図るには、インターネットやSNSの活用を視野に入れる必要があります。
出典:消費者庁『第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状』
Webサイト改善
自社のWebサイトを改善して流入を増やすことで、問合せや資料請求につなげられます。具体的な改善策には以下が挙げられます。
▼Webサイトの改善策
- SEOによって検索エンジンの上位表示を狙う
- ターゲットの興味・関心を引くコンテンツを作成する
- サイト内の設計を見直し、ユーザビリティを向上させる
また、Webサイト改善に向けた施策には、効果測定や分析ができるツールの活用が有効です。
ユーザー動向や集客効果を分析し改善していくことで、Webサイトを資産化し、安定した集客を図れるようになります。
Web広告
Web経由の集客を向上させるために、有料広告を利用するのも一つの方法です。広告の視認性を高めることで、Webサイトへの訪問、問合せなどを促せるようになります。
▼工務店・ビルダーに有効なWeb広告
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- リターゲティング広告
- SNS広告
- メールマガジン広告
広告配信の目的や最終目標などを設定して、費用対効果を踏まえて活用するのがポイントです。
SNS運用
InstagramやLINEなどのSNSは20~40代のユーザーに利用者が多く、工務店・ビルダーの集客にも有効な施策といえます。
▼SNSの活用例
- Instagram:企業アカウントで施工事例を掲載
- LINE:エリア指定での広告掲載
- Twitter:自社の商材に特化したコンテンツを発信
自社を知らないユーザーを狙った認知度の拡大、見込み顧客の創出、ブランディングなどの効果も期待できます。
SNSの選定については、自社のターゲットと親和性の高い媒体を選ぶのがポイントです。
まとめ
住宅市場規模が縮小し、工務店・ビルダーの競争性が高まる現在、社内体制の強化や差別化を図るための取り組みが必要です。
そのためには、若手人材の確保・育成をはじめ、顧客ニーズを踏まえた商品力・ブランド力の強化、集客施策の強化が求められます。
顧客から選ばれる存在になるために、工務店・ビルダーの顧客獲得・事業成長につながる戦略について改めて考えてみてはいかがでしょうか。