工務店・ビルダーにおける粗利率の目安とは? 経営改善に向けた粗利率向上のポイント
粗利率は、経営効率や収益性を計るための重要な指標となります。粗利率が高いほど得られる利益も向上するため、経営安定化に向けて粗利率の向上を図ることが重要です。
ただし、粗利率が高ければ高いほどよいというわけではなく、業種によって目安となる粗利率が異なります。
また、「経営安定化を図るために粗利を増やしたい」「適正な粗利率の目安や粗利の増やし方を知りたい」と考えている工務店・ビルダーの方もいるのではないでしょうか。お
この記事では、工務店・ビルダーにおける粗利率の目安や計算方法、経営改善に向けた粗利率向上のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.粗利率の算出方法
- 2.粗利率の目安
- 3.粗利率を改善する方法
- 3.1.①標準原価を設定する
- 3.2.②工事原価を見直す
- 3.3.③住宅価格を見直す
- 4.まとめ
粗利率の算出方法
“粗利”とは、売上高から売上原価を差し引いた金額のことです。損益計算書における“売上総利益”に当たります。
▼粗利の計算式
粗利 = 売上高 - 売上原価 |
“粗利率”とは、売上高に対して粗利が占める割合のことです。工務店・ビルダー経営では、売り上げから人件費や資材費、設備機器の搬入費などさまざまな費用を差し引いた金額が手元に残る利益です。
自社の粗利率を算出することによって、売り上げに対して最終的に得られる利益がどれくらいあるかを把握できます。自社の経営効率や収益性を計るためにも、粗利率の算出が重要です。
ここでは、粗利率の計算方法を具体例とともに解説します。
▼粗利率の計算式
粗利率(%) = (完成工事高 - 工事原価) ÷ 完成工事高 × 100 ※完成工事高:売上高(工事が完了し引き渡しが完了したときの額) ※工事原価:原価(純工事費や現場管理費など、完成工事高に対する原価) |
▼粗利率の具体例
完成工事高が1,200万円、工事原価が900万円の場合、「(1,200万円 - 900万円) ÷ 1,200万円 × 100 = 25%」粗利率は25%と計算できます。
粗利率の目安
一般的には、黒字を確保できる平均的な粗利率は25%前後とされています。
施工工事の外注量が少ない、資材の一括仕入れで原価を削減できているなど経営効率を高めている場合には、粗利率が30%を超えるケースもあります。また、業種・職種のほか、規模や受注件数によっても目安となる粗利率は異なります。
しかし、自社の粗利率が20%に満たない場合には、経営が厳しい状況と考えられます。このようなケースでは、事業継続のために粗利率の改善を図ることが重要です。
粗利率を改善する方法
ここからは、工務店・ビルダーの粗利率を改善するための3つの方法を紹介します。
①標準原価を設定する
標準原価とは、施工前に目標値として定める原価のことです。施工に必要な資材の標準価格や標準使用量、従業員数などを基に設定します。
標準原価を定めたうえで仕入れやリソースを投入することで、案件によって工事原価にバラつきが生まれることを防げます。
また、標準原価を設定しておくことにより、施工前の原価試算と工事中の原価との差異を把握できます。工事の途中でも、必要に応じて資材の仕入れ量や労働力などを見直しできるため、コストカットにつながり粗利率の向上を期待できます。
②工事原価を見直す
人件費や資材費などの工事原価に無駄なコストが発生していないか洗い出して、見直しを図ることも重要です。
資材や機材、重機などの原価は、見積もりを取って正確な金額を把握する必要があります。人件費については、現状の業務方法・フローで効率化できる部分はないか検討します。
さまざまな工事原価が適切かどうか確認したうえで、以下のような見直しを図りましょう。
▼工事原価の見直し例
- 資材の仕入れ値を交渉する、あるいは仕入れ事業者を変更する
- 仮設機材や重機のレンタル・リース契約を見直す
- 業務プロセスやチーム編成を見直して人員配置の最適化を図る
- ツールの導入でバックオフィス業務を効率化し、人件費を削減する
③住宅価格を見直す
粗利率を改善するために、住宅価格を値上げして売り上げの向上を図ることも方法の一つです。
ただし、単に住宅価格を上げるだけでは成約率が下がってしまう可能性があります。住宅価格を見直す際は、付加価値のある住宅商品・サービスを提供して、顧客にとっても魅力的かつ納得感のある価格に設定することが重要です。
まとめ
粗利率を算出することで、自社の経営効率や収益性を把握できるようになります。工務店・ビルダーが安定した経営を行うためにも、自社の粗利率を把握し、必要に応じて改善を図ることが重要です。
粗利率の改善に向けて、標準原価の設定によるコストカット、工事原価の見直し、付加価値のある住宅商品・サービス提供による住宅価格の見直しなども検討しましょう。
また、粗利率を改善するには、成約率をアップして売り上げを増やすことも欠かせません。成約率を高める分析方法についてはこちらの記事で紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
「ABC分析とは? 工務店・ビルダーの成約率を高める分析方法やメリット」