工業化住宅(プレハブ住宅)とは? 近年の動向とメリット・デメリット
工業化住宅(プレハブ住宅)は、戦後の日本において、住宅の低価格化や量産化、安定した供給に向けて普及し始めました。
工業化住宅と聞くと、災害時の仮設住宅や工事現場での簡易住宅などをイメージされる方もいるのではないでしょうか。簡素なイメージの強い工業化住宅ですが、低価格でありながら安定した品質の住宅づくりを実現できるとして、再び注目されつつあります。
少子高齢化による家族構成の変化や住宅ニーズの多様化が進む今、工務店・ビルダーが提案する住宅商品の一つとして、工業化住宅に目を向けてみてはいかがでしょうか。
この記事では、工業化住宅の概要をはじめ、近年の動向やメリット・デメリットについて解説します。
工業化住宅とは
工業化住宅とは、建築部材を工場で生産してから、現場で組み立てる住宅のことで、一般にプレハブ工法で建てられた住宅のことを指します。“プレハブ住宅”とも呼ばれています。
一般的な住宅建築の場合、現場に資材・部材を運び入れてから、職人が加工や組み立てを行って施工します。
一方、工業化住宅は工場で部材を生産して加工・組み立てを行い、基礎構造の大部分を完成させた状態で現場に運び入れます。そのため、施工品質の安定化や施工期間の短縮、コスト削減などにつなげることが可能です。
プレハブ工法で建てられる住宅は、構造材の種類によって主に3つに分類されます。
▼構造材の種類と特徴
種類 |
特徴 |
木造 |
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鉄筋コンクリート造 |
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鉄骨造 |
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工業化住宅の動向
工業化住宅の着工戸数は、長期的にみると減少傾向にあります。
国土交通省『令和3年度計 建築着工統計調査報告』を基に作成
国土交通省がまとめた2021年度の『建築着工統計調査報告』によると、工業化住宅の着工戸数は、1996年度は24万7,317戸でした。2021年度には、11万4,282戸となっており、25年前の2分の1以下まで減少しています。
ただし、近年でみると、2021年度の工業化住宅の着工戸数は5年ぶりに前年比が増加しており、2020年度から6.1%増加していることが分かります。また、新設住宅着工戸数全体においては、2021年度の工業化住宅の着工戸数が全体の13.2%を占めている状況です。
工業化住宅の着工戸数は長期的にみると減少していますが、新設住宅全体の約10%以上を占めており、一定の需要があることがうかがえます。
なお、構造別でみると、2021年度で最も多い工業化住宅は鉄骨造となっており、全体の89.3%を占めています。そのほか、木造は9.1%、鉄筋コンクリート造が1.6%となっています。
▼構造別:工業化住宅の新設戸数
画像引用元:国土交通省『令和3年度計 建築着工統計調査報告』
(出典:国土交通省『令和3年度計 建築着工統計調査報告』)
工業化住宅のメリット・デメリット
工業化住宅は、コストや品質などの面において多くのメリットがありますが、設計の自由度については注意が必要です。
メリット
工業化住宅には、施工品質が安定している、施工期間を短縮できる、コストを抑えられるといったメリットがあります。
工業化住宅は、基礎構造部材を工場の機械・ロボットが生産するため、部材の規格化、加工・製造の標準化が可能です。これにより、現場の職人の技術によるばらつきを解消して、安定かつ高精度の品質を確保できます。
また、住宅の基礎を工場内で生産してから現場で組み立てるため、職人の作業量を削減できて、施工期間の短縮につながります。
さらに、工場生産を行うことで、原価管理が明確になるとともに、資材購入や部材加工などのプロセスを合理化できます。その結果、建築費や人件費などのトータルコストを削減することが可能です。
ローコストかつ短期間で、安定品質の住宅を建てられることは、顧客にとってもメリットといえます。
デメリット
工業化住宅のデメリットには、設計の自由度が低い、増設やリフォームの制約があるといったことが挙げられます。
工業化住宅では、工場生産の規格化された部材を使用するため、注文住宅のように自由に間取り・デザインを決めることはできません。
また、土地の形状や土壌、面積などによって、建てられる工業化住宅の構造材・工法が限られてしまったり、建築できなかったりする可能性もあります。
さらに、工業化住宅では、間取り変更や居室を増やすなどの構造に関わるリフォームに制約がある点にも注意が必要です。
施主と住宅建築の計画を立てる際は、間取り・デザイン・設備を選べる範囲や、リフォームの可否などについて丁寧に説明しておくことが重要です。
まとめ
この記事では、工業化住宅について、以下の内容を解説しました。
- 工業化住宅の概要と種類
- 工業化住宅の動向
- 工業化住宅のメリット・デメリット
工業化住宅は、工場で部材を生産・加工して、現場で組み立てるため、品質の安定化や施工期間の短縮、コストの削減といったメリットがあります。
ただし、部材や施工を規格化・標準化するという性質から、設計上の自由度が低く、制約が生まれやすいといったデメリットもあります。
工業化住宅を提案する際は、プランやコストを明確化するとともに、設計上の選択肢・制約について施主へ説明しておくことが重要です。
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