社員大工とは? 工務店・ビルダーが雇用するメリットと保険加入について
現在、建設業就労者の高齢化が進んでおり、将来発生する大量退職によって、工務店・ビルダーでの人手不足はさらに深刻化すると考えられています。
すでに、「大工が不足していて受注を逃している」「メンテナンスやリフォーム提案の追客に充てる人材がいない」とお悩みのケースもあるのではないでしょうか。
そのような建設業における人材不足の課題を解消する方法の一つとして、社員大工の雇用が挙げられます。
本記事では、社員大工とは何か、工務店・ビルダーが社員大工を雇用するメリットや注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.社員大工とは
- 2.社員大工を雇用するメリット
- 2.1.①施工品質の向上
- 2.2.②若手大工の入職促進
- 2.3.③競合他社との差別化
- 3.社員大工の保険加入について
- 4.まとめ
社員大工とは
社員大工とは、工務店・ビルダーが自社の建設技能職として雇用している大工のことを指します。そのため、給与も請負契約の件数・内容ではなく、あらかじめ定めた固定の金額を支払うことになります。
大工は、木工事や木造住宅の建設などに欠かせない人材です。従来は、一人親方として個人事業を行い、工務店・ビルダーが請負契約を交わして業務を委託するのが一般的とされてきました。
しかし、近年は一人親方への業務委託ではなく、工務店・ビルダーが社員大工として雇用するケースも見受けられます。
現在、大工が属する建設業の平均年齢は44.5歳となっており、55歳以上が3割以上と高齢化が進行しています。
▼建設業就業者の高齢化の進行
画像引用元:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』
今後、定年による大量退職が進むことを踏まえると、工務店・ビルダーは、中長期的に担い手の確保が必要です。
社員大工の雇用は、建設業における大工の担い手を確保するための選択肢の一つになることが期待できます。
(出典:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査の概況』/国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』)
社員大工を雇用するメリット
社員大工の雇用は、人材不足の解消だけでなく、工務店・ビルダーにとってさまざまなメリットがあります。
ここでは、社員大工を雇用する3つのメリットについて解説します。
①施工品質の向上
社員大工を雇用することによって、施工品質の向上が期待できます。
一人親方の場合、必要な現場・作業のみを単発で依頼することが基本となるため、新たな技術を習得したり、システムを構築したりするのが困難です。
また、先輩大工から技術・ノウハウを教わったり、スキルや経験が問われたりする機会の減少によって、大工の成長につながりにくいといった課題もあります。
一方、社員大工の場合、腰を据えて人材育成に取組めるため、工務店・ビルダーが必要とする知識・技術・ノウハウを習得してもらうことが可能です。現場作業を通して、若手大工が先輩大工から教わる体制を構築することで、大工としての成長も見込めます。
さらに、企業理念や住宅づくりのコンセプトを社員大工と共有すれば、大工自身がプライド・責任感を持って施工に取組めるようになります。その結果、施工品質の向上や安定化につながることが期待できます。
②若手大工の入職促進
若手大工の入職を促進できることも、メリットの一つです。
請負契約で必要なときにだけ依頼する一人親方の場合、生活や将来の不安から、若手の就職・定着化が難しいといった課題があります。
工務店・ビルダーが社員大工として雇用すれば、仕事量の安定化や社会保険への加入などによって、安定した生活基盤を整えられます。
また、自社での技術研修や教育制度など、キャリアアップできる体制を整えることで、働きがいのある職場として求職者にアピールすることも可能です。その結果、若手人材の入職促進や定着が期待でき、人手不足の解消につながります。
③競合他社との差別化
工務店・ビルダーの強みやコンセプトを理解している社員大工がいることは、顧客へのアピールとなり、競合他社との差別化を図るきっかけになります。
社員大工が在籍していれば、施主や設計担当者と円滑に情報を共有することが可能です。たとえば、住宅のプランづくり・設計の打ち合わせに参加したり、施主の要望を踏まえて自ら造作家具のアイデアを提案したりと日頃の交流が自然と生まれます。
このように、施主をはじめ、設計士や営業担当、担当大工などの信頼関係を築くことで、安心かつ施主に寄り添った住宅づくりを行えるという点もメリットです。
社員大工の保険加入について
工務店・ビルダーが社員大工を雇用するにあたって、社会保険の加入や税金の処理などに関する手続きを行います。
企業には、社員を雇用する際に社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入する義務があります。また、従業員を一人でも雇用している企業においては、労働保険(労災保険・雇用保険)の加入が必要です。
社会保険と雇用保険は、被保険者にも一定の保険料率が課せられます。そのため、社員大工を雇用する際は、企業・被保険者の双方で社会保険料を負担することになります。一方、労災保険については、企業の全額負担となります。
さらに、社員の給与に対する源泉徴収や年末調整などの処理も必要になるため、事務的な業務が増えることも考えられます。
社員大工を雇用する際は、このようなコスト・労力を踏まえたうえで、事業計画や予算計画を立てることが大切です。
まとめ
この記事では、社員大工について以下の内容を解説しました。
- 社員大工とは何か
- 社員大工を雇用するメリット
- 社員大工の保険加入について
社員大工は、これまで一般的だった一人親方への業務委託ではなく、工務店・ビルダーが自社の社員として雇用する大工のことです。大工の高齢化や人手不足が進む今、人材の確保、若手の育成を図るために、社員大工を雇用することが一つの選択肢として挙げられます。
社員大工を雇用することで、知識・技術・ノウハウの育成や継承に力を入れられるため、施工品質の向上が期待できます。また、若手大工の入職を促進する、競合他社との差別化を図れるといったメリットもあります。
大工の人手不足や育成に課題を抱えている工務店・ビルダーは、社員大工の雇用を検討されてはいかがでしょうか。
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