住宅トレンド

増える“空き家”をどう活用するか。住宅業界が注目する空き家活用術とは

少子高齢化による人口減少が続くなか、“空き家”の増加が社会問題となっています。

空き家は衛生・防災面の問題やそれに伴う景観悪化により、地域全体の資産価値の低下を招く恐れもあります。そのため住宅業界にとっても無視できない問題です。

こうした空き家問題の解決に向けて、住宅業界もリノベーションによる空き家活用に乗り出しています。

本記事では、空き家の現状をはじめ、住宅業界におけるリノベーションのメリット・デメリットについて解説します。

(出典:総務省行政評価局『空き家対策に関する実態調査』

目次[非表示]

  1. 1.新築にこだわらない消費者が増加
    1. 1.1.既存住宅の需要増加はリフォームによる効果も大きい
    2. 1.2.新築着工戸数は今後さらに減少が予測されている
  2. 2.“空き家リノベ”で新たな付加価値を創出
  3. 3.リノベーションにおけるメリット・デメリット
    1. 3.1.メリット
    2. 3.2.デメリット
  4. 4.まとめ

新築にこだわらない消費者が増加

現在、国内における空き家の数はどれほど増加しているのでしょうか。

経済産業省が実施した『平成30年住宅・土地統計調査』によると、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%に及んでおり、1978年から2018年までの間で約2倍に上昇しています。

一方、既存住宅の流通シェアは拡大傾向です。2000年時点では全住宅流通量のうちの12.1%だったのに対して、2013年には14.7%まで拡大していることが分かっています。

内閣府がまとめた資料によると、今後住み替える住宅について「新築・中古どちらでもよい」と答えた人は2016年で37.8%。2011年の29.5%に対し、8.3%の増加です。

このように、新築にこだわらない消費者が増えていることからも、既存住宅の需要が高まる要因のひとつには“消費者ニーズの変化”があると考えられています。

(出典:経済産業省『平成30年住宅・土地統計調査』内閣府『既存住宅を巡る現状について』


既存住宅の需要増加はリフォームによる効果も大きい

国土交通省が2017年に実施した『住宅市場動向調査』では、消費者が中古住宅を選んだ理由について以下の回答が挙げられています。

※2017年度調査の一部抜粋(複数回答)

  • 新築よりも予算的に手頃だから(69.9%)
  • リフォームによって快適に住めると思ったから(30.7%)
  • 外観、内装、水回り等がリフォームされていて綺麗だったから(23.7%)

(出典:国土交通省『平成29年度住宅市場動向調査報告書』

消費者が中古住宅を選ぶのは経済的な理由だけでなく、リフォームによる効果も大きいです。

空き家でも、品質・設備・見た目などを改善できれば、新たな消費者ニーズを掘り起こせる可能性があります。


新築着工戸数は今後さらに減少が予測されている

中古住宅のニーズが高まる一方で、新築住宅の着工戸数は減少が続いています。

国土交通省が発表した『建築着工統計調査』によると、2019年度の新設住宅着工戸数は90万5,123戸となり、3年間連続で減少。2007年度の調査では約129万戸であったことから、長期的に減少が続いていることが分かります。

また、今後も新築住宅市場はさらに縮小が予測されている状況です。

同資料によると、2030年には新築着工戸数が70.5万戸まで減少するという予測が公表されています。

このような状況からも、住宅業界における空き家活用はとても重要度が高い取り組みといえるでしょう。

(出典:国土交通省『令和元年計建築着工統計調査報告』経済産業省『住宅・リフォーム業界を巡る現状と社会環境の変化』

“空き家リノベ”で新たな付加価値を創出

中古住宅の需要が高まるいま、「空き家を使って、何か新しい手法で顧客を獲得できないか」と考える企業も多いのではないでしょうか。

そこで目を向けられているのがリノベーションによる空き家活用です。

リノベーションとは、既存住宅に比較的大きな規模の改修工事を実施して快適に暮らせる住宅性能を確保し、新築にはない新たな付加価値を創出するための手法です。

老朽化により耐久性といった品質面に不安が残る空き家もあります。

しかし、大規模なリノベーションで住まいの耐久性・機能性の向上を図り、よい部分は残すといった改善が可能です。

古民家の梁や柱を残したり古い建具をそのまま使用したりといった工夫を施せば、新築にはない付加価値の創出にもつながります。

住宅販売にリノベーションをうまく取り入れることで、買い手が見つからなかった空き家でも利益を生む物件としての再生が期待できます。

住宅業界においては、一戸建て物件をリノベーションしてシェアハウスや民泊の経営など、さまざま活用方法が挙げられます。

リノベーションにおけるメリット・デメリット

空き家の活用方法として注目されるリノベーション。具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。


メリット

リノベーションには、大きく分けて以下3つのメリットがあります。

  • 物件の価値が上がる
  • 新築住宅には出せないデザインや素材のよさを生かせる
  • 空き家の仕入れ値が安くなるほど、より高い利益率が期待できる

老朽化した部分を改修し、間取りや内装を新築のようにリノベーションすることで、物件の価値が向上します。

新築よりもリーズナブルな価格で最新の設備・デザインの住まいを販売できるため、消費者にとっても魅力的といえるでしょう。

あえて古きよき時代の雰囲気を残して、古民家風の住まいを実現できることもリノベーションならではの魅力です。

また、一般的に住宅は築年数が経つほど資産価値が低くなります。

なかでも長年放置されている空き家は老朽化によってさらに価値が低くなるケースもあるため、物件の仕入れ値を安く抑えられるという利点があります。

取得費用を安く抑えられれば、より高い利益率が期待できるでしょう。 

(出典:国土交通省『空き地対策の推進について』


デメリット

ここからは、リノベーションのデメリットについて見てみましょう。リノベーションのデメリットは大きく分けて2つです。

  • 大規模な改修によってリノベーション費用が高くなるケースがある
  • 民泊やシェアハウスの稼働率にリスクがある

リノベーションでは、築年数が古くなるほど大規模な修繕を必要とするケースがあります。

そのため、想定していた予算をオーバーし、十分な費用対効果が得られないといったトラブルが起こる可能性もあります。

リノベーション物件で利益を得るには、「いかに安くて修繕の少ない物件を得られるか」「人気のエリアを選べるか」「リノベーション費用を安く抑えられるか」などを慎重に見極めることが重要です。

また、リノベーションした物件での民泊やシェアハウスの経営では、稼働率のリスクがあることも忘れてはいけません。

計画どおりの集客を得られないと、リノベーションに充てたコストを回収できない可能性があります。物件の立地条件や周辺環境、競合他社の有無も考慮して判断しましょう。

まとめ

空き家の増加が社会問題となるなか、リノベーションによる既存住宅の活用に注目が高まっています。

買い手が見つからない物件でも、リノベーションによって物件価値が上昇し利益を生み出せるケースがあります。

ただし、リノベーションしたからといって必ずしも売れるとは限りません。空き家を活用する際は、費用回収のリスクなどを考慮することも重要です。

「中古物件に買い手が見つからない」「新築住宅だけでは経営が厳しい」という企業は、新たなニーズ創出に向けた“空き家活用”を視野に入れてみてはいかがでしょうか。


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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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