地域拠点で、顧客も人材も呼び込む
株式会社ネストハウス(以下ネストハウス)は地元の気候風土に合わせた住宅商品と、独自のITシステムを展開することで、成約数や住宅見学会来場数の増加へつなげています。
また、同社は「医・食・住・遊・創」をコンセプトとした商業施設「iroherb」を立ち上げ、その「iroherb」への年間来場者数は10,000人を記録しています。
今回は着工棟数が減衰する山口県岩国市で、工夫を凝らした営業活動をしているネストハウスの取り組みについてご紹介します。
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年間新設住宅着工数300戸の岩国市で生き残る
全国的に住宅着工数は減衰傾向にありますが、中には限界集落のように超高齢化、人口減少が進行している地域があります。
このようなエリアが全国に点在しており、完成見学会を開催しても来場者数が少なく、人材を募集しても集まらないという状況も珍しくありません。
地元の気候風土を活用するネストハウス
今回紹介するのは山口県岩国市のネストハウスです。
設立から39年を迎える老舗ビルダーです。 同社の商圏は年間新設住宅着工戸数が約300戸強と小さい市場に本社を置きながら、年間30棟前後を手掛けています。
同社の住宅事業のコンセプトは地元の気候風土に合った家づくりです。
主力商品である自然素材の家「FASTA」は、自然・デザイン・エコをキーワードに基本的に既製品を使用せず、無垢の床材・ホタテの漆喰壁・天然石などで仕上げています。
柱・梁の構造材には無垢国産材を活用し、軸組工法と剛性床パネル工法を組み合わせたハイブリッド工法を採用しています。また、独自開発の全館空調システム「COCOYUKA」は床下と天井に空気を送り込むことで、床と天井の2面冷暖房により温度差のない空間を作ることが可能です。
ITを駆使しサービスを展開
同社は住宅以外でもITシステムを自社で開発していることも特長です。その1つが、住宅購入時に活用できる同社独自のポイントシステム「パコスカード」。入会金は無料で、住宅の見学会へ来場すると5ポイント、メールマガジンの登録で5ポイントというようにポイントが付与されます。
1ポイント当たり、1,000円として最大20万円まで、ネストハウスでの住宅新築時の引越し代や家具・家電代に充てることが可能です。
もう1つが2019年5月にローンチした業務効率化を目的とする「scoope」です。これは「日報を書きながら顧客管理をするシステム」で、日々の業務に追われる中で「入力する情報を一元化する」ことで業務効率化を図り、かつ入力された情報を基に顧客情報を見える化することが可能です。また先述のパコスカードとも連動しているため、来場履歴や購買情報を分析することにより、営業戦略に活用できます。
本社併設の商業施設「iroherb」をオープン、 地域住民をはじめとしたユーザーを呼び込む拠点へ
同社最大の特長は、2016年5月にオープンした複合拠点「イロハーブ(iroherb)」です。1,700坪の広大な土地に、本社事務所の他、ヨガスタジオやインテリアショップ、カフェなどを併設しています。
「医・食・住・遊・創」をコンセプトとし、それぞれ意味を付与しています。
■医
予防医療の提案。健康なからだづくりとしてヨガスタジオを開設し、イベントも開催。
■食
食育をテーマに、地産地消の食材をつかった料理をレストランで提供。
■住
家づくりのネストハウス。雑貨や家具のインテリアショップ。庭づくりや観葉植物など、グリーンを提案する、ガーデニングショップ併設。
■遊
さまざまなイベントを通じて暮らしの中のゆとりを提案。
■創
職人を育て、技を伝承し、顧客と DIYを通じてモノづくりの楽しさを伝える。
各店舗で開催したイベントを合算すると年間40回、年間のイロハーブ来場者数は10,000人に上ります。住宅事業にも好影響が波及しており、店舗の顧客が同社の家づくりのコンセプトに共感し、住宅顧客へランクアップするケースも増えているようです。
この集客拠点の開発に至ったきっかけは、同社代表の石川氏が長崎県にあるのビルダーの拠点で開催された見学会に参加したことでした。
長崎の豊かな自然という点が岩国と共通しており、交通の便が決して良いとは言えない土地が、人を集められる拠点を作ることができれば、将来的に会社が生き残る術の1つになりうると考えました。
企画がスタート したのは 2009年頃で、ミーティングを重ねてグランドオープンまで7年を要しました。今後は、「iroherb」を集客拠点かつ地域拠点として発展さ せ、住宅事業はここでのカウンター営業を確立させることが目標です。
また、若手人材の採用にも大きく作用しています。この取り組みが地域工務店における先進的事例として17年度グッドデザイン賞を受賞する要因ともなりました。