住宅トレンド

【2026年度】住生活基本計画の変更ポイント| 工務店の注意点など

catch-img

2026年度の住生活基本計画では、既存住宅の活用、居住支援、GX・DX、人材確保など、検討すべきテーマが幅広くなっています。こうした流れのなかで、工務店がこれまでのように新築中心の提案や体制のままでいると、制度の方向性とのずれが生じやすくなります。

そのため、政策の動きを早い段階で把握しておくことは、提案力の強化はもちろん、今後の事業運営の整備という面でも重要です。

この記事では、工務店向けに住生活基本計画の主な変更ポイントと、実務で意識しておきたい注意点を整理し、今後の提案や社内体制の見直しにどう生かしていくべきかを解説します。

住生活基本計画とは?

住生活基本計画は、住生活基本法に基づいて国が策定する住宅政策の基本方針です。国民の住まいに関する安定の確保と質の向上を進めるために、目標や施策の方向性を整理したもので、住宅政策全体の土台となる計画といえます。

また、都道府県はこの全国計画に即してそれぞれの計画を定める仕組みとなっており、国と地域が方向性をそろえながら施策を進めていく点も特徴です。

国土交通省によると、前回の全国計画は2021年3月19日に閣議決定したもので、計画期間は2021(令和3)年度から2030(令和12)年度までが対象とされていました。

これらは、おおむね5年後を目安に見直しを行うという考え方が示され、社会状況の変化に応じて更新される計画として位置づけられています。

住生活基本計画のこれまでの流れ

住生活基本計画は、住生活基本法の公布・施行を受けて、2006年9月に初めて策定された、国の住宅政策の基本となる計画です。

従来の住宅建設五箇年計画が、公的住宅の建設戸数目標を中心としていたのに対し、この計画では、住宅の「量の確保」から、住生活の「質の向上」へと政策の重点が移されました。

その後、2009年には一部変更が行われ、2011年、2016年、2021年には全面的な見直しが実施されました。少子高齢化や人口減少、災害への対応、空き家対策など、その時々の社会課題を踏まえて、内容が更新されてきた経緯があります。

最新の動きでは、2026年3月27日に新たな全国計画が閣議決定されています。

【2026年度】次期住生活基本計画の変更ポイント

2026年2月時点の国土交通省案では、2026年度から2035年度までの住生活政策を、支援対象から住宅ストック、業界・行政の体制まで一体で捉える構成に改めています。

ここでは、次期住生活基本計画の主な変更ポイントを見ていきましょう。

計画の整理が「3つの視点・11の目標」に変わる

次期計画では、住宅政策の整理方法が見直され、「住まう人」「住まいそのもの」「住まいを支える担い手」という3つの視点から捉え直し、全体を11の目標として示す構成へと改められました。

高齢者支援や子育て世帯への対応、既存住宅ストックの再生、さらには産業や行政の体制整備までを一体的に整理し、政策全体を俯瞰しやすくなった点が大きな特徴です。

従来の章立てによる構成に比べて、それぞれの役割分担がより明確になったといえるでしょう。

高齢者・子育て世帯・住宅確保が難しい人への支援が強まる

次期案では、高齢者、若者・子育て世帯、住宅の確保に配慮が必要な人々が、それぞれ独立した目標として位置づけられました。

内容も、単に住まいを確保することにとどまらず、住み替えやリフォーム、見守り、相談対応、入居前後の支援まで含んでおり、住宅分野と福祉分野が連携して支えることを前提とした構成になっています。

単なる住宅供給ではなく、暮らしを途切れさせずに支えていくという考え方が、この案の大きな特徴です。

「無理なく住めること」が重視される

目標4では、誰もが希望する住まい方を、過度な負担なく実現できる環境づくりが打ち出されています。

利便性や立地に比較的恵まれた住宅を、無理のない負担で確保できる市場の形成を目指し、空き家の賃貸活用や買取再販、既存住宅のリフォーム、公的賃貸住宅の空き住戸の活用などが重視されています。

あわせて、住宅取得への支援や頭金形成の後押し、新たな市場整備の検討まで盛り込まれている点も、この目標の特徴といえるでしょう。

既存住宅を長く使う方向がより強くなる

次期案では、新築を増やすことだけに重点を置くのではなく、既存住宅をできるだけ長く使い、次の世代へと引き継いでいく考え方がより明確に打ち出されています。

多世代にわたって活用できる住宅ストックの形成をはじめ、住宅の性能や利用価値を適切に評価すること、さらに住宅の誕生から終末に至るまで、管理・再生・活用・除却を一体的に進める方針が示されています。

あわせて、インスペクションや用途転用の重視も盛り込まれており、市場の中で住宅の価値がきちんと見える仕組みを整えていくことが重要なポイントになっています。

災害対策と業界の体制整備が重視される

次期案では、災害に備えた安全な住環境の整備に加え、担い手の確保・育成、GX、DX、さらに国と地方の推進体制の整備までが、それぞれ独立した論点として記載されています。

これは、住宅そのものの性能向上だけでなく、施工や維持管理を支える人材の確保、BIMに代表されるデジタル技術の活用、さらには官民が連携して地域の住環境を支える運営体制づくりまで含めて、幅広く対応していく必要があることを示しています。

そのため、工務店や関連事業者にとっては、従来の住宅供給にとどまらず、求められる役割や対応領域が一段と広がっていくと考えられます。

住生活基本計画で工務店が気を付けたい注意点

次期住生活基本計画の素案では、住宅政策の軸足が新築だけでなく、既存住宅の活用や住み継ぎ、担い手整備へ広がっています。

工務店は受注の取り方だけでなく、提案の範囲や社内体制も見直すことが重要です。

ここでは、実務で意識したい注意点を見ていきましょう。

「新築中心」の考え方のままだとズレやすい

次期計画の素案を見ると、工務店には「建てて終わり」という発想から脱却することが求められています。

現行計画でも住宅循環システムは重要な柱でしたが、素案では、住宅ストックの形成から性能評価、維持管理、再生、活用、そして除却までを一体的に捉える方向性が、これまで以上に明確になっています。

こうした流れを踏まえると、引き渡し後における施主との継続的な接点づくりまで視野に入れて取り組むことが重要です。

たとえば「家ドックカスタムサポート」は、定期的な点検に加え、24時間365日の駆けつけ対応や、住まいの履歴を管理できる専用のWebページを組み合わせたサービスです。

こうした仕組みによって、お客様との継続的な接点を保ちながら満足度の向上を図ることができ、リフォームのニーズを自然に引き出しやすくなります。よって、この流れと非常に相性の良い選択肢となるためおすすめです。

GX・DX・人材確保を後回しにしない

GX・DX・人材確保は、単なる制度対応としてではなく、経営基盤の整備として早期に取り組むべき重要な論点です。

素案では、担い手の確保・育成、ライフサイクルカーボンの削減、建築・不動産分野におけるDXの推進が、それぞれ独立したテーマとして位置づけられています。

あわせて、BIMの活用や各種手続きの円滑化についても明記されており、今後の事業運営において避けて通れない課題であることがうかがえます。

こうした流れを踏まえると、GX・DX・人材確保を個別の対応策として捉えるのではなく、将来を見据えた経営基盤の強化として早めに着手することが重要です。

たとえば「ANDPAD®」は、工程表の共有、写真の整理、チャットでの連絡を一元管理できるため、現場で発生しがちな手待ち時間や伝達ミスの削減に役立つサービスです。

反響ライジング」は、反響対応から追客、アフターフォローまでの各段階でAIやデータを活用し、KPIの可視化やLINE®運用の支援まで行います。

現場管理と営業管理の両方をあわせて整えたい工務店にとって、相性の良いサービスです。

高齢者・子育て世帯への提案不足に注意する

高齢者や子育て世帯への提案は、今後、一般的な新築や改修の説明だけでは十分でなくなる可能性があります。

素案では、高齢者について、円滑な住み替えの促進をはじめ、性能向上リフォーム、バリアフリー化、温熱環境の改善、さらには見守りや安否確認の推進まで示されています。

住まいそのものの性能向上に加え、安心して暮らし続けられる環境づくりまで視野に入れた対応が求められているといえます。

また、子育て世帯に対しても、広さや間取り、機能性、安全性、遮音性に配慮したリフォームに加え、生活利便性を高める住環境の整備まで踏み込んだ提案が重要になります。

記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで振り返っておきましょう。

Q:住生活基本計画とは何ですか?

A:住生活基本計画は、住生活基本法に基づく国の住宅政策の基本方針です。国と都道府県が方向性をそろえて施策を進める土台であり、社会状況の変化に応じておおむね5年ごとに見直されます。

Q:住生活基本計画はどのように見直されてきたのでしょうか?

A:住生活基本計画は、住宅の量を増やす発想から住生活の質を高める方向へ軸足を移し、社会課題に合わせて更新されてきました。2026年3月27日には、新たな全国計画が閣議決定されています。

Q:2026年度の住生活基本計画は何が変わったのでしょうか?

A:次期案では、政策全体を「住まう人」「住まい」「担い手」の3つの視点と11の目標で整理し直し、支援対象、住宅ストック、業界や行政の体制までを一体で捉える構成へ改めています。

Q:工務店は次期住生活基本計画を踏まえて何に気を付けるべきですか?

A:工務店は新築中心の発想にとどまらず、既存住宅の活用や引き渡し後の継続支援まで視野を広げることが大切です。あわせてGX・DX・人材確保、高齢者や子育て世帯への提案力も早めに整えておきたいところです。

執筆者

瀧澤 成輝(二級建築士)

住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。

大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。

特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。

編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

関連する最新コラム