<第4回>【工務店の施工事例集に入れるべき物件データ】お施主様は「リアルなスペックを教えてほしい!」
これまで、写真と文章について述べてきましたが、今回はもう一つたいせつな情報といえる「物件データ」についてふれたいと思います。中でも「住宅性能」「間取り」「価格と面積」にクローズアップして考えてみます。
これらの情報はどこまでふれたらよいのか、どのように記載したらいいのか、迷う工務店さまもいるのではないでしょうか。また、「標準仕様を決めているわけではないからはっきりとは言えないんだよね」と思っておられる工務店さまもいるのではないでしょうか。
でも大丈夫です。施工事例集ならそれぞれの家のことを記載すればいいのですから迷うことはありません。リアルな情報を掲載しましょう。それでは順を追って考察していきます。
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お施主様が知りたいのは、その工務店の“リアル”な「性能・仕様」
「うちは特に最高ランクの性能というわけではないから記載してもアピールポイントにならないのでは?」と思っていませんか?お施主様は、写真から受けるデザインの好み、文章から受ける共感ポイント、その2つを照らし合わせた上での「物件データ」としてみます。
そのため、知りたいのはその家の“リアル”な性能・仕様。それらを総合的に見て判断したいと思っています。したがって確かな判断材料ともらうために、情報を正直に開示することがたいせつです。
性能面においては、「躯体の工法」「断熱工法」「耐震工法」「耐震・断熱等級」「断熱性能の測定値」などが考えられますね。
▼例
A |
木造軸組(耐震パネル+外張り断熱) |
---|---|
B |
セルローズファイバー断熱(断熱等級6) |
C |
吹付ウレタンフォーム断熱(C値0.4) |
D |
2×4工法(耐震等級2) 外張り+充填W断熱(等級5/UA値0.6) |
各事例のスペック記載でなんとなくわかる「工務店の標準仕様」
標準仕様を特に定めておらず、お施主様の要望によって様々な工法に対応しているような工務店さまでも、前述したように各事例の性能・仕様が記載してあれば、「これくらい施工事例が多いということは、このへんの性能・仕様が普通にできるのだな」と想像がつきます。
つまり、「なんとなく標準仕様」が見えるわけです。それはお施主様にとってはとても参考になる検討材料になります。
それでは、4つの施工事例が掲載されている施工事例集をつくったとして、その物件データが下記の並びだったらお施主様はどんな印象を持つでしょうか。ちょっと考えてみます。
事例1 |
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事例2 |
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事例3 |
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事例4 |
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「この工務店は木造が標準みたいだけど耐震等級は3まで対応しているな。断熱の方法はいろいろ対応しているのかな?予算に応じて提案してくれるか、とりあえず聞いてみようか?」こんなふうに思うのではないでしょうか。これは既に「お施主様が興味を持ち始めている状態」といえますよね。
一方、標準仕様が決まっている工務店さまはそれを別枠でまとめて記載する方法があります。その場合は各事例の紹介ページに記載しなくて済むので、ページレイアウトをすっきりさせることができます。
性能好きには間違いなく“刺さる”、「最高ランクの住宅性能」
最高ランクの性能を実現しているのなら、どしどし前面に押し出しましょう。省エネ・低炭素住宅の認定も、時代のニーズに合っているのでとてもいいと思います。キャッチコピーや見出しなど、目立つところに記載すれば、性能にこだわるお施主様に対して“刺さる”キーワードになるでしょう。
▼例
A |
耐震等級3を叶えたハイブリッド工法で安心の住まい |
---|---|
B |
家中の温度差ゼロ!C値0.1のパッシブハウス |
C |
国の省エネ基準で最高ランクのLCCMに認定! |
やっぱりファン大量のコンテンツ「間取り図」
お施主様が未来の暮らしを想像するにあたって、やっぱり気になる間取り図。LDKの広さや部屋の数、収納の量や位置、水回りの配置などなど、参考にしたい情報の宝庫といえます。注文住宅でこだわりを反映させた間取りならなおさら。
「シューズクロークが広いな。これなら今持っている靴が全部しまえそうだしベビーカーも入りそう」とか「水回りの動線が短くて家事がしやすそう」とか「ワークスペースをこの位置にする手があったか」などなど。
写真と文章を合わせて見ることで理解が深まり、施工事例の魅力が存分に伝わりますし、お施主様は自身の理想の暮らしに照らし合わせていろいろ考えることができます。
施工事例集なら、ページをパラパラめくりながら複数の間取り図を素早く見比べられるので見やすいですし、「なんでこの土間はこんなに広いんだ?」なんて間取り図が先に気になってから文章を読む人もいるかもしれません。これも既に「お施主様が興味を持ち始めている状態」といえますよね。
ちなみに間取り図内に入れる文字情報はそれほど詳細でなくても大丈夫です。いわゆる不動産図面程度の文字情報は最低限入れておきましょう。
▼間取り図内に入れるべき文字情報
1 |
部位名(リビング、玄関、寝室、など) └洗面台・トイレ・浴室・クロゼットは図形だけでも十分 |
---|---|
2 |
畳数(小数点第一位までで十分) |
また、「その家ならでは」のような箇所はぜひとも入れておきたいポイントです。写真とキャプションに連動していると、見ている方はわかりやすく、参考にしやすいですね。
▼間取り図内にあったらいいなの文字情報
1 |
ワークスペースやスタディカウンター |
---|---|
2 |
書斎、または書斎コーナー |
3 |
ランドリールーム |
4 |
パントリー |
5 |
壁面収納・本棚などの造作収納 |
6 |
ウッドデッキやタイルテラス |
7 |
ボルダリングウォールなどの個性的な造作部分 |
問合せアクションに誘う決め手「価格」と「面積」
写真を見て、文章を読んで、「この家いいな~」と思ったとして、「で、いくら?」となるのが世の常・人の常。
「いい家を建てているなぁ。でも価格がわからないんだよな。いくらぐらいかわからないとちょっと怖いな」なんて思われて問合せを躊躇されていたら、もったいないことです。「価格がわからないお店には入りにくい=価格がわからない工務店には問合せしにくい」という公式です。したがって価格は積極的に掲載しましょう。
ここでいう価格とは、建物の「本体価格(税込)」のこと。付帯工事やその他諸費用は入れなくて大丈夫です。なぜなら住宅系の雑誌やポータルサイトでは、「本体価格(税込)」での表記がフォーマットになっているのがほとんどだからです。その施工事例のリアルな「本体価格(税込)」をぜひ掲載しましょう。
ただ、昨今の資材高騰で当時の価格では建てられないことも多いと思います。その場合は「竣工年月」を入れておくか、現在の価格に換算して掲載することを検討されてはいかがでしょうか。
また、合わせて面積も記載すると親切だと思います。どのくらいの広さの家がいくらで建ったのかがわかるからです。その場合は延べ床面積の記載になりますが、敷地面積もあっていいと思います。
お施主様は自身が取得しようと考えている土地の広さと照らし合わせて見るため、「この広さの土地にこれくらいの家が建ったのか(建てられたのか)」がわかって参考になります。狭小住宅なら特にそうですね。
本体価格の記載となると、「うちは安くないから価格で引かれないかな」と不安を口にする工務店さまがいらっしゃるかもしれませんが、それは、「工務店さまが考えるきちんとした家づくり」をして実際のそうなのであれば、正直に掲載すればいいと思います。性能・仕様やプランなどに根拠のある説明ができればいいのではないでしょうか。
それでももし、価格が高いという理由で検討離脱されてしまうお施主様なのだとしたら、それは工務店様のターゲットとして合っていなかったので諦める、でよいのではないでしょうか。
「地域の工務店」という領域において、価格を安く見せる戦術はおすすめできません。問合せの数は増えるかもしれませんが、「相談を受けてプランと見積もりを出してから、高いと言われて断られた」となっては、工務店さまの時間と手間が水の泡になってしまいます。せっかくいい家をつくっているのですから、胸を張ってリアルな価格を掲載しましょう。
ちょっと話がそれてしまいましたが、たいせつなのは「お施主様が比較検討する際に役立てていただく情報を、正直に丁寧に提供して差し上げる」という意識です。その情報が自分たちの好みにあっているか、理想にあっているか、価格が高いか安いか、を決めるのはお施主様なのですから。
さて、というわけで、今回のタイトルは、
【工務店の施工事例集に入れるべき物件データ】お施主様は「リアルなスペックを教えてほしい!」 でした。
現場で感じていることをベースに考えて書きましたが、少しでも工務店のみなさまのお役に立てば幸いでございます。
それではまた次回、お会いしましょう。
次回のテーマ(予定)
第5回【工務店の会社案内デザイン】「施工事例集」から「会社案内」へ。次なるステップでファンをつくる