建築・施工管理

建築基準法の“床面積”とは? 2つの種類と床面積の算定に含まれない部分を解説

住宅を建築する際は、建築基準法に適合した住宅設計を行うために、床面積を正しく計算する必要があります。

建築基準法で定められている床面積には種類があり、それぞれ算定方法が異なるため、「どこまでの面積を指すのか」「床面積に含まれない部分は何か」と知識が曖昧になっている方も多いのではないでしょうか。

工務店・ビルダーの担当者は、設計図面の概要を把握したり、施主への適切な説明を行ったりするために、法令で定められた床面積について理解を深めておくことが重要です。

この記事では、建築基準法で定められている2つの床面積とそれぞれの定義、床面積の算定に含まれない部分について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.建築基準法における2つの床面積
    1. 1.1.法定床面積
    2. 1.2.延べ面積
  2. 2.施工床面積との違い
  3. 3.床面積の算定に含まれない部分
    1. 3.1.法定床面積に不算入となる部分
    2. 3.2.延べ面積のうち容積率の計算に不算入となる部分
  4. 4.まとめ

建築基準法における2つの床面積

建築基準法で定められている床面積には、“法定床面積”と“延べ面積(延べ床面積)”の2つがあります。それぞれの定義について解説します。


法定床面積

法定床面積とは、建築物の各階において壁・扉・シャッター・柱などの区画の中心線で囲まれた部分の面積を指します。建築面積と呼ばれることもあり、建物を真上から見たときの面積のことです。複数階ある場合は、より面積が広い階が基準となり、建ぺい率(※)の算出に使用されます。

建築基準法施行令』第2条1項3号において、以下のように定義されています。

▼建築基準法施行令 第2条1項3号

三 床面積 建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。

引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令

なお、外部設備であるポーチや出窓などは法定床面積に含まれません。法定床面積の算定に含まれない部分については後述します。

※建ぺい率とは、敷地面積に対する法定床面積の割合のこと。

(出典:e-Gov法令検索『建築基準法施行令』/国土交通省『床面積の算定方法』)


延べ面積

延べ面積は、各階ごとの法定床面積を合計した面積です。延べ床面積と呼ばれることもあります。また、延べ面積については、『建築基準法施行令』第2条第1項4号で以下のように定義されています。

▼建築基準法施行令 第2条第1項4号

四 延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。

イ 自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分(第三項第一号及び第百三十七条の八において「自動車車庫等部分」という。)

ロ 専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分(第三項第二号及び第百三十七条の八において「備蓄倉庫部分」という。)

ハ 蓄電池(床に据え付けるものに限る。)を設ける部分(第三項第三号及び第百三十七条の八において「蓄電池設置部分」という。)

ニ 自家発電設備を設ける部分(第三項第四号及び第百三十七条の八において「自家発電設備設置部分」という。)

ホ 貯水槽を設ける部分(第三項第五号及び第百三十七条の八において「貯水槽設置部分」という。)

ヘ 宅配ボックス(配達された物品(荷受人が不在その他の事由により受け取ることができないものに限る。)の一時保管のための荷受箱をいう。)を設ける部分(第三項第六号及び第百三十七条の八において「宅配ボックス設置部分」という。)

引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令

たとえば、2階建ての住宅において、1階の法定床面積が70m2、2階の法定床面積が50m2の場合、延べ面積は120m2となります。

延べ面積は、容積率(※)の算定に用いられ、容積率に算入する面積は“容積対象床面積”、不算入の面積は“容積対象外床面積”と呼ばれます。

延べ面積と容積対象床面積は、以下のように区別されます。

▼延べ面積・容積対象床面積の違い

名称

算出方法

延べ面積
各階の床面積の合計
容積対象床面積
延べ面積-容積対象外床面積

※容積率とは、敷地面積に対する延べ面積の割合のこと。用途地域ごとに制限があり、それを超えない容積率で建築物を建てる必要がある。

施工床面積との違い

建築基準法における床面積と混同しやすい面積に、“施工床面積”があります。延べ面積と施工床面積が同じ面積にならないことに注意が必要です。

施工床面積は、施工会社が工事をする部分を含む面積を指します。建築基準法で定められた面積ではなく、明確な基準は設定されていません。そのため、施工会社によって算定方法が異なるケースがあります。

また、施工床面積は、法定床面積に算入されない居住スペース以外の外部設備(外階段・外廊下など)も算入するため、施工床面積のほうが法定床面積よりも広くなることが一般的です。

工務店・ビルダーの担当者が設計図面について説明を求められた際は、法定床面積と延べ面積、施工床面積との違いを踏まえて、誤解が生じないように正しく説明することが重要です。

床面積の算定に含まれない部分

法定床面積と延べ面積には、面積の算定に含まれない部分があります。ここでは、それぞれの面積を計算する際に、不算入となる部分について解説します。


法定床面積に不算入となる部分

屋外部分とみなされる外部設備については、基本的に法定床面積に算入しません。

▼法定床面積に不算入となる外部設備

外部設備

不算入の条件

ピロティ
  • 外気に開放されている
  • 屋内的用途に使用しない(通行専用、デザインのみの目的で設けられている場合など)
ポーチ
屋内的用途に使用する部分以外(庇型ポーチ、寄り付き型ポーチは算入する)
バルコニー・ベランダ
外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上、かつ天井の高さが1/2以上であるバルコニー・ベランダについて、幅2mまでの部分は不算入
吹きさらしの廊下
外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上、かつ天井の高さが1/2以上である廊下について、幅2mまでの部分は不算入
屋外階段
  • 長さが階段の周長の1/2以上
  • 高さが1.1m以上、かつ天井の高さの1/2以上

(出典:国土交通省『床面積の算定方法』/静岡県 浜松市『第3 建築物の床面積及び階の取扱い』)


延べ面積のうち容積率の計算に不算入となる部分

建築基準法施行令』第2条第4項で、以下の設備・部分については、原則として容積率の算定の基礎となる延べ面積に含まないと規定されています。

▼延べ面積に含まれない設備・部分(容積対象外床面積)

  • 車庫、駐輪場
  • 防災の備蓄倉庫を設ける部分
  • 蓄電池を設ける部分
  • 自家発電設備を設ける部分
  • 貯水槽を設ける部分
  • 宅配ボックスを設ける部分

(出典:e-Gov法令検索『建築基準法施行令』)

まとめ

この記事では、建築基準法における床面積について以下の内容を解説しました。

  • 建築基準法における2つの床面積
  • 施工床面積との違い
  • 床面積の算定に含まれない部分

建築基準法における床面積には、法定床面積と延べ面積の大きく2つがあり、それぞれ異なる算定方法が定められています。

また、建築基準法に定めのない面積である施工床面積は、施工会社によって算定方法が異なります。これは、法定床面積には含まれない外部設備の面積も合計することが一般的です。

法定床面積と容積率の基礎となる延べ面積には、不算入となる部分があるため、設計に関する提案や、設計図面の解説を行う際には、正しい説明ができるようにしておくことが重要です。

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なお、建築基準法で定められた道路種別は、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

 ≫ 建築基準法における6つの道路種別を分かりやすく解説

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