施主にうまく伝える“長期優良住宅のメリット”9つ! 気になるデメリットは?
住宅の建築・購入を検討している顧客にとって、長く快適に安心して暮らせる住宅づくりが実現できるかどうかも重要視されるポイントの一つといえます。
また、地球温暖化問題への関心の高まり、エネルギー価格の高騰による光熱費の負担増加などを背景に、環境保護や省エネ・再エネといったキーワードに興味を持つ顧客も増えているのではないでしょうか。
そのようななか、近年注目されているのが“長期優良住宅”です。
工務店・ビルダーは、長期優良住宅の認定基準に適合する高性能な住宅設計・プランを取り入れるにあたって、メリット・デメリットを理解したうえで、顧客に対して適切な提案・説明をすることが重要です。
この記事では、長期優良住宅を建てるメリット・デメリットについて解説します。
目次[非表示]
- 1.長期優良住宅を建てるメリット
- 1.1.①光熱費を節約できる
- 1.2.②長く安心して暮らせる
- 1.3.③地震に強い
- 1.4.④SDGsに貢献できる
- 1.5.⑤住宅ローンの金利優遇を受けられる
- 1.6.⑥税金の優遇を受けられる
- 1.7.⑦地域型住宅グリーン化事業の補助金を受け取れる
- 1.8.⑧地震保険料の割引を受けられる
- 1.9.⑨資産価値を高められる
- 2.長期優良住宅にはデメリットもある?
- 2.1.①費用負担が増える可能性がある
- 2.2.②完成まで時間がかかる可能性がある
- 2.3.③定期的な点検・メンテナンスが必要
- 3.まとめ
長期優良住宅を建てるメリット
長期優良住宅を建てる施主のメリットとして、以下の9つが挙げられます。
①光熱費を節約できる
長期優良住宅のメリットとして、光熱費を節約できることが挙げられます。
長期優良住宅に認定される住宅は、断熱性が高い住宅構造や高効率の設備・システムを導入しており、省エネ性能に優れていることが特徴です。冷暖房や給湯機などの使用効率が高まることで、毎月の光熱費を削減できます。
また、断熱性に優れた住宅は、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現できます。その結果、一年を通して快適に暮らしやすくて冷暖房の使用量を抑えられるといったメリットがあります。
②長く安心して暮らせる
長く安心して暮らせることも、長期優良住宅のメリットの一つです。
長期優良住宅は、長期にわたって使用できる躯体(くたい)・設備を有しており、適切な維持保全管理を実施すれば数世代にわたって長く暮らすことが可能です。
また、設備配管の点検・清掃など維持管理がしやすい設計になっているため、定期的な清掃や必要に応じた修繕を行うことで、劣化による損耗や耐久性の低下を抑えられます。
③地震に強い
長期優良住宅は、地震に強いといったメリットもあります。
長期優良住宅の認定を受けた住宅は、極めてまれに発生する地震に対して、建物の損傷を抑えられる一定レベルの耐震性を確保しています。これは、住宅性能表示制度の耐震等級2~3に相当します。また、地震によって損傷が生じた場合でも改修がしやすいようにつくられているため、長く住み続けることが可能です。
地震が多い日本において、住宅の耐震性が優れていることは、施主にとって大きな安心感につながると考えられます。
④SDGsに貢献できる
近年、世界全体で注目を集めている“持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)”に貢献できることも、長期優良住宅を建てるメリットの一つです。
SDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標として、17のゴールと169のターゲットが設定されています。
長期優良住宅は、高い断熱性能や高効率の省エネ設備が備わっており、エネルギーの使用量を抑えられることが特徴です。家庭内の消費電力を削減することで、地球温暖化の原因の一つであるCO2の排出量を抑えられます。
これは、SDGsに挙げられる“気候変動への対策(目標13)”や、“海・陸の豊かさを守ること(目標14・15)”につながると考えられます。
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』/外務省『JAPAN SDGs Action Platform』/国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
⑤住宅ローンの金利優遇を受けられる
長期優良住宅を建てると、フラット35S(金利Aプラン)と維持保全型フラット35の借入金利について優遇を受けられます。
さらに、借入期間が最長50年となるフラット50が利用でき、売却時には借入金利のままでローン返済を引き継ぐことが可能です。
▼長期優良住宅で受けられる住宅ローンの金利優遇
画像引用元:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
⑥税金の優遇を受けられる
税金の負担を抑えられることも、長期優良住宅を建てるメリットです。
優遇措置の対象となる税金には、所得税(住宅ローン減税・投資型減税)と登録免許税、不動産所得税、固定資産税があります。
▼長期優良住宅における税金の優遇措置
画像引用元:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
⑦地域型住宅グリーン化事業の補助金を受け取れる
長期優良住宅を建てると、地域型住宅グリーン化事業の補助金を受け取れる可能性があります。
地域型住宅グリーン化事業とは、地域の中小工務店・木材関連事業の企業などがグループを構築して、省エネルギー性能や耐久性などに優れた木造住宅を建築する際の費用の一部を補助する事業です。
この制度を活用して認定長期優良住宅を建てると、最大140万円の補助金を受け取れます。(※2023年4月現在)詳しい条件については、国土交通省のホームページをご確認ください。
(出典:国土交通省『令和4年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始』『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
⑧地震保険料の割引を受けられる
地震保険は、地震や津波によって発生した損害を補償する保険です。
長期優良住宅として認定を受けて、一定の条件に該当する場合には、耐震等級割引や免震建築物割引を受けられます。
▼地震保険料の割引対象となる住宅と割引率
画像引用元:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』
詳しくは、地震保険を取扱う損害保険会社や代理店にお問合せのうえご確認ください。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
⑨資産価値を高められる
長期優良住宅の認定を受けると、耐震性や省エネ性、劣化対策などが備わった高性能な住宅であることを客観的に示すことが可能です。
長く安心して暮らせる住宅として資産価値が高まり、将来の売却時に高値で売却しやすくなることが期待できます。
なお、高性能な住宅を評価する認定制度には、長期優良住宅のほかに“低炭素住宅”があります。低炭素住宅との違いについては、こちらをご確認ください。
≫ 低炭素住宅と長期優良住宅は何が違う? 各メリット・デメリットを解説
長期優良住宅にはデメリットもある?
工務店・ビルダーが長期優良住宅を提案する際は、施主にとってデメリットとなる点についても適切に説明しておくことが重要です。
長期優良住宅のデメリットとして、以下が挙げられます。
①費用負担が増える可能性がある
長期優良住宅では、断熱性能や省エネ性能などが優れた高性能な住宅を建築する必要があるため、一般的な住宅よりも建築費用が高くなりやすいデメリットがあります。
補助金の活用や、建築後に光熱費を削減できるなどのメリットを施主に説明しつつ、将来的に発生する点検・修繕費用を踏まえて資金計画を提案することが重要です。
また、長期優良住宅の認定を受けるには、設計内容の説明書や各種図面・計算書などの書類作成と、所轄行政庁への申請手続きが必要です。
所轄行政庁への申請費用とは別に、工務店・ビルダー側でこれらの書類を作成する場合には、手数料を施主に請求するケースもあります。申請費用と手数料については、施主に対して事前に明示しておくことが重要です。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
②完成まで時間がかかる可能性がある
長期優良住宅の建築には、事前の書類作成・申請・審査といった複数のプロセスを踏む必要があるため、着工までの期間が一般的な住宅よりも長くかかる場合があります。
また、一定の工法や仕様が定められているため、通常の住宅よりも工期が長くなることが一般的です。本格的な計画に進む前に、認定までのフローや手続きを施主に説明して、完成までに時間を要することについて理解を得る必要があります。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
③定期的な点検・メンテナンスが必要
長期優良住宅を建てたあとは、認定を受けた維持保全計画に基づいて、定期的な点検や必要に応じて改修・修繕を行うことが定められています。
施主の負担を減らすためには、建築後の定期点検やメンテナンスなど、アフターサービスを充実させることも検討する必要があります。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について』)
まとめ
この記事では、長期優良住宅について以下の内容を解説しました。
- 長期優良住宅を建てるメリット
- 施主に伝えておくデメリット
長期優良住宅には、長く安心して快適に暮らせる住宅を実現できるほか、自然環境への配慮や光熱費の削減、税制優遇などのさまざまなメリットがあります。
ただし、建築費用が増えたり、工期が長くなったりする可能性もあるため、施主にとってデメリットとなるケースも考えられます。
長期優良住宅を検討されている施主には、メリットだけでなく、デメリットについても丁寧な説明を行うことが欠かせません。また、希望の予算や工期、建築後の維持管理なども含めた資金計画・施工計画を立てるとともに、アフターサービスを充実させることもポイントの一つです。
LIFULL HOME'Sでは、工務店・ビルダーの業務にお役立ていただけるコラムを随時配信しております。ぜひご活用ください。