低炭素住宅と長期優良住宅は何が違う? 各メリット・デメリットを解説
2015年9月の国連サミットで、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されて、持続可能な社会の実現に向けて世界全体でさまざまな取組みが進められています。
そうしたなか、SDGs実現のために日本で優先的に取組む課題として、“建築物における省エネルギー化・低炭素化”が挙げられています。また、長期にわたって住み続けられる持続可能な住宅として、“長期優良住宅”の普及促進も進められています。
工務店・ビルダーにおいては、住宅の省エネ化・低炭素化への対応、長期優良住宅の導入を検討するとともに、顧客に対して適切な説明ができるように理解を深めておくことが重要です。
この記事では、低炭素住宅と長期優良住宅の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
(出典:外務省『SDGsとは?』/国土交通省『長期優良住宅のページ』)
低炭素住宅・長期優良住宅とは
低炭素住宅とは、建築物内での生活・活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制するために、低炭素化の措置が講じられた建築物のことを指します。
『都市の低炭素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)』において定められており、条件を満たす建築物については、所管行政庁に認定申請を行うことによって認定を受けられます。
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことで、『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』において定められています。長期優良住宅の建築と維持保全の計画を作成して、所管行政庁へ申請することで認定を受けられます。
(出典:国土交通省『長期優良住宅のページ』『エコまち法に基づく 低炭素建築物の 認定制度の概要』)
低炭素住宅と長期優良住宅の違い
低炭素住宅と長期優良住宅の大きな違いとして、認定基準と税制優遇措置が挙げられます。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
▼2つの違い
低炭素住宅 |
長期優良住宅 |
|
---|---|---|
認定基準 |
省エネ性能に関する基準 |
長期使用するための住環境の維持 |
税制優遇措置 |
|
|
①認定基準
低炭素住宅の認定制度では、省エネ・再エネを中心とした認定基準が設けられています。低炭素住宅の認定を受けるには、ZEH・ZEB水準の省エネ性能に加えて、再生可能エネルギー利用設備の導入や、低炭素化に資する措置などを講じる必要があります。
▼低炭素住宅の認定基準
画像引用元:国土交通省『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』
一方、長期優良住宅では省エネに加えて、建物の耐震性や劣化対策、維持管理などの構造・住環境に関する幅広い基準が設けられています。長期優良住宅では、主に以下の5つ(A~E)の措置を講じる必要があります。
▼長期優良住宅の認定基準
画像引用元:国土交通省『長期優良住宅認定制度の概要について』
(出典:国土交通省『エコまち法に基づく 低炭素建築物の 認定制度の概要』『長期優良住宅認定制度の概要について』)
②税金の優遇措置
低炭素住宅と長期優良住宅では、税金の優遇措置についての内容が異なります。低炭素よりも、長期優良住宅のほうがより幅広い税金の優遇措置が設けられています。
低炭素住宅では、所得税(住宅ローン減税)と登録免許税について優遇措置が設けられています。
▼低炭素住宅の税金の優遇
画像引用元:国土交通省『エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要』
長期優良住宅では、所得税(住宅ローン減税・投資型減税)や登録免許税、不動産取得税、固定資産税に関する優遇措置が設けられています。
▼長期優良住宅の税金の優遇
画像引用元:国土交通省『長期優良住宅認定制度の概要について』
(出典:国土交通省『エコまち法に基づく 低炭素建築物の 認定制度の概要』/『長期優良住宅認定制度の概要について』)
低炭素住宅・長期優良住宅のメリット・デメリット
低炭素住宅と長期優良住宅には、それぞれメリット・デメリットがあります。
低炭素住宅
低炭素住宅のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
低炭素住宅では、高気密・高断熱な住宅づくりを行い、夏は涼しく、冬は暖かくといった一年を通して快適な居住環境を実現できます。また、冷暖房設備に頼りすぎない生活ができるため、光熱費の削減にもつながります。
デメリット
低炭素住宅として認定を受けるには、高効率の冷暖房設備や給湯設備、太陽光発電設備などの設備を導入する必要があるため、建築コストが増加する可能性があります。
また、低炭素住宅認定申請の対象は、市街化区域等内のみのため、建築エリアが制限されています。
(出典:国土交通省『エコまち法に基づく 低炭素建築物の 認定制度の概要』)
長期優良住宅
長期優良住宅のメリット・デメリットには、以下が挙げられます。
メリット
長く安心して住み続けられる長期優良住宅は、資産価値を保ちやすいといったメリットがあります。将来的に売却する場合にも、売主にとって有利になることが期待できます。
また、長期優良住宅は、基準以上の省エネ性能が確保されているため、快適な居住環境を実現できる、光熱費を抑えられる、建物の維持管理がしやすい、地震保険料の割引を受けられるなどもメリットとして挙げられます。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の概要について』)
デメリット
長期優良住宅に認定されるには、省エネ設備や耐震性能、劣化対策などのさまざまな条件を満たす必要があります。基礎部分や資材なども一定の要件を満たす必要があるため、建築コストが増加しやすくなります。
また、基準を満たすための設計・工事・適合チェックなどに時間がかかり、工期が長期化しやすくなる点も注意が必要です。申請には費用がかかるほか、認定を受けたあとは維持保全計画に基づいた管理が求められます。
工務店・ビルダーでは、施主の予算に基づいた資金計画を作成するとともに、申請の流れや必要な手続きについて確認して、工期の目安について案内しておくことが重要です。また、建築後には定期的なメンテナンスをサポートすることも必要といえます。
(出典:国土交通省『長期優良住宅認定制度の概要について』)
まとめ
この記事では、低炭素住宅と長期優良住宅の違いについて、以下の内容を解説しました。
- 低炭素住宅・長期優良住宅の基礎知識
- 低炭素住宅と長期優良住宅の違い
- 低炭素住宅と長期優良住宅のメリット・デメリット
低炭素住宅と長期優良住宅は、認定基準や税制の優遇措置などに違いがあります。
低炭素住宅は、省エネ・再エネを中心とした認定基準、長期優良住宅は、省エネ性能や耐震性能、劣化対策などの基準に適合することが求められます。
それぞれの違いやメリット・デメリットを理解して、施主へと適切な提案ができるように準備しておくことが重要です。
LIFULL HOME'Sでは、工務店・ビルダーの営業ノウハウに関するコラムを多数掲載しています。日々の営業活動やスキルアップにぜひお役立てください。
≫ 住宅営業ノウハウ
なお、低炭素住宅についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
≫ 質問されても大丈夫!低炭素住宅の認定基準見直しと建築のメリット・デメリット