顧客の関心が高まる“災害に強い家”の5つの特徴。安心して暮らせる住宅設計とは?
日本は台風や豪雨、地震などの自然災害が発生しやすい国土で、世界全体と比較しても災害の発生割合が高くなっています。
いまだ記憶の褪せない東日本大震災をはじめ、2023年2月6日に発生したトルコ・シリア大地震によって、災害に強い家への関心はさらに高まっています。
工務店・ビルダーでは、安心して暮らせる住宅づくりを顧客に提案するために、災害に強い家の特徴について理解しておくことが大切です。
本記事では、災害に強い家の5つの特徴について解説します。顧客からの問合せに対して、適切な説明ができるように準備しておくことが必要です。
(出典:内閣府『1 災害を受けやすい日本の国土』)
目次[非表示]
- 1.日本で頻発している自然災害
- 2.災害に強い家の特徴
- 2.1.①基準以上の耐震性能を確保している
- 2.2.②免震・制震装置を導入している
- 2.3.③基準以上の耐風性能を確保している
- 2.4.④水害・風害対策が講じられている
- 2.5.⑤創エネ・畜エネ設備が備わっている
- 3.まとめ
日本で頻発している自然災害
自然災害に強い家を建築するにあたって、日本で頻発している自然災害について改めて理解を深めておくことが大切です。
地震・津波
日本は環太平洋地震帯に位置しており、地震が多い国土です。
実際に、国土面積は世界の0.25%と小さいながらも、地震の発生回数は世界の18.5%(※)と極めて高い割合を占めています。
また、四方を海に囲まれており、長く複雑な海岸線となっていることから、地震の発生に伴う津波の被害も大きくなりやすいといった特徴があります。
近い将来には、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が予測されており、建築物の倒壊・損壊を防ぐための耐震化が重要とされています。
※2004年~2013年の期間で、世界のマグニチュード6以上の地震発生回数を基に算出。
(出典:内閣府『1 災害を受けやすい日本の国土』/国土交通省白書2020『第1節 我が国を取り巻く環境変化』『第2節 地球環境・自然災害に関する予測』)
台風・大雨
日本では、台風や梅雨前線に伴う洪水・土砂災害が毎年多く発生しており、その発生件数は近年増加傾向にあります。
また、洪水や土砂災害を引き起こす大雨・短時間強雨の回数についても、近年増加傾向にあります。国土交通省がまとめた資料によると、日降水量が200mm以上となる年間の日数を過去30年間(1901年~1930年)と直近30年間(1990年~2019年)で比較すると、直近30年間は約1.7倍となっている状況です。
このように台風や大雨による洪水・土砂災害の被害が懸念されることから、風害・水害に強い住宅づくりも求められています。
(出典:内閣府『1 災害を受けやすい日本の国土』/国土交通省白書2020『第1節 我が国を取り巻く環境変化』)
災害に強い家の特徴
自然災害が発生しやすい日本において、安心して暮らせる環境を提供するためには、災害に強い家を建てることが求められます。
災害に強い家の特徴として、以下の5つが挙げられます。
①基準以上の耐震性能を確保している
災害に強い家の特徴には、建築基準法で定められている耐震基準以上の耐震性能を確保していることが挙げられます。
建築基準法で定められた現行の耐震基準では、“震度6強〜7程度に達する程度の地震でも倒壊・崩壊しない検証がされている”と定められています。
これは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度における“耐震等級1”に該当します。耐震等級は1〜3まで規定されており、等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の耐震性があると判断できます。
耐震基準の1.5倍以上(耐震等級3)の耐震性を確保している家の場合は、実際に大規模な地震が発生した際の被害を最小限に抑えられたとの報告もあります。
(出典:林野庁『木造住宅の耐震性について』/国土交通省住宅局住宅生産課『新築住宅の 住宅性能表示制度 住宅性能表示制度ガイド』『新築住宅の住宅性能表示制度かんたんガイド』)
②免震・制震装置を導入している
地震に強い家の特徴には、免震・制震装置を導入していることが挙げられます。
免震・制震装置を導入することで、耐震性能が高まり、地震の揺れによって建物が倒壊・損壊するリスクを抑えられます。
▼免震・制震装置の導入方法と期待できる効果
装置 |
免震装置 |
制震装置 |
---|---|---|
導入方法 |
建物の基礎と地面の間に免震装置を設置する |
構造部分にダンパーや錘(おもり)などの部材を組み込む |
効果 |
建物に伝わる揺れを逃す |
地震の揺れを吸収する |
基準以上の耐震性能に加えて、免震・制震装置を取り入れることで、より地震に強い住宅づくりが実現します。
③基準以上の耐風性能を確保している
基準以上の耐風性能を確保していることも、災害に強い家の特徴といえます。耐風性能とは、暴風に対する構造躯体の倒壊・崩壊・損傷のしにくさを示す基準です。
耐震基準と同様に、建築基準法上の耐風基準は、住宅性能表示制度における“耐風等級1”に該当しています。台風や暴風に強い家を建てるには、耐風等級1の1.2倍の耐風性能を持つ“耐風等級2”に適合させることが望まれます。
(出典:国土交通省住宅局住宅生産課『新築住宅の 住宅性能表示制度 住宅性能表示制度ガイド』)
④水害・風害対策が講じられている
台風や津波、大雨に強い家を建てるには、水害・風害対策が講じられていることが求められます。
水害対策としては、主に床下浸水を防ぐための措置が必要です。風害に対しては、主に屋根や外装、窓ガラスへの対策が重要となります。
それぞれの具体的な対策として、以下が挙げられます。
▼建物の水害・風害対策
災害の種類 |
対策 |
---|---|
水害 |
|
風害 |
|
(出典:国土交通省『水害対策を考える 4-1-3 浸水の予防・人命を守る家づくり』)
⑤創エネ・畜エネ設備が備わっている
災害に強い家の特徴として、創エネ・畜エネ設備が備わっていることが挙げられます。太陽光発電システムや家庭用燃料電池が備わった家は、災害時に電気が止まってしまっても、生活を維持できます。
太陽光発電システムでつくり出した電気は、停電時の電力供給に役立てられるほか、家庭用燃料電池で電気を溜めておくと、災害時の予備バッテリーとしても使用できます。
このように、災害が起きたあとの生活を考えて、居住者の安心安全な暮らしを守る設備を設置することも、災害に強い家を建てる大切な条件の一つです。
まとめ
この記事では、災害に強い家について以下の内容を解説しました。
- 日本で頻発している自然災害
- 災害に強い家の特徴
地震や津波、台風大雨などの自然災害が発生しやすい日本では、災害に強い住宅づくりが求められます。
災害に強い家には、法定基準以上の耐震性能と耐風性能がある、免震・制震装置が導入されている、水害・風害対策を行っている、創エネ・蓄エネ設備があるといった特徴があります。
工務店・ビルダーにおいては、安心して暮らせる家を提案するために、災害対策に力を入れた住宅設計を目指してはいかがでしょうか。
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なお、地震による建物へのリスクには“キラーパルス”も挙げられます。詳しくはこちらで解説しています。