建築資材の価格高騰はいつまで続く? 高騰の理由と今後の見通し
近年、住宅業界はウッドショックやアイアンショックをはじめ、建築資材の高騰という課題に直面しています。
国土交通省が2022年6月に公表した資料『最近の建設業を巡る状況について【報告】』によると、完成工事高上位の建設事業者に対して行ったヒアリングで、「資材価格高騰による影響が出ている」と回答した事業者は約90%にものぼり、そのうちの約60%が「影響が大きく出ている」と回答しています。
こうした資材価格高騰の影響を受けて、工事価格の見直しや他素材との代替えなどを検討している工務店・ビルダーも多いのではないでしょうか。
本記事では、建築資材の価格高騰が起きている理由と、今後の見通しについて解説します。
(出典:内閣府『建設資材価格の高騰と公共投資への影響について』/国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』)
目次[非表示]
- 1.建築資材の価格動向
- 2.建築資材の価格高騰が起きている理由
- 2.1.①原油価格の高騰
- 2.2.②アメリカや中国での木材需要の増加
- 3.今後の見通し
- 4.まとめ
建築資材の価格動向
近年、主要建築資材の国内価格は上昇傾向にあります。
2022年5月時点での国内における建築資材価格は、前年同月と比べて上昇しており、なかでも、管柱(くだばしら)は85.9%、異形棒鋼(いけいぼうこう)は53.2%、型枠用合板は47.7%と大幅に上昇しています。生コンクリート、セメントなどの値上がりも表明されていることから、今後も資材価格の上昇が続くと見込まれています。
▼国内市場における主要建築資材の価格動向
画像引用元:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』
建築資材のうち、大きな価格上昇が見られた合板については、2023年2月時点で急上昇前の価格に戻りつつあります。しかし、将来的に急上昇前の価格に戻るか先行きが不透明な状況です。
▼合板の輸入平均価格
画像引用元:林野庁『木材輸入の状況について(2023年2月実績)』
2022年11月以降、合板の輸入価格は下降傾向にあるものの、価格変動は予測できないため、引き続き懸念しなければならない点といえます。
鋼材の価格高騰(アイアンショック)については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
(出典:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』/林野庁『木材輸入の状況について(2023年2月実績)』)
建築資材の価格高騰が起きている理由
建築資材の価格高騰は建築コストの増加につながるため、建築計画や住宅価格、材料の見直しが求められることがあります。
工務店・ビルダーでは、今後の見通しを立てるためにも、価格の動向だけでなく、価格高騰の背景にも目を向けることが必要です。
ここでは、建築資材の価格高騰が起きている2つの理由について解説します。
①原油価格の高騰
1つ目は、原油価格の高騰が挙げられます。
コロナ禍からの経済回復に伴い、世界規模で原油の需要が増加したことで、産油国の生産停滞が起きており、原油価格の高騰を招いています。
▼原油価格・輸入物価指数・国内企業物価指数・消費者物価指数の推移
画像引用元:経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー価格の高騰が物価に与えている影響とは?―「エネルギー白書2022」から③』
また、地政学的な変化で不確実性が高まったことによって、世界の原油価格や需要にも影響をおよぼしていると考えられます。
原油を資源としたエネルギーは、資材の製造や輸入にも使用されることから、建築資材の価格・輸入物価の上昇にもつながっている状況です。
(出典:内閣官房『コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」』/経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー価格の高騰が物価に与えている影響とは?―「エネルギー白書2022」から③』/農林水産省『原油価格高騰対策』)
②アメリカや中国での木材需要の増加
2つ目に、アメリカや中国で木材需要が増加したことが挙げられます。
アメリカでは、ロックダウンの解除や低金利政策によって住宅建築需要が高まり、住宅着工戸数が増加しました。加えて、中国での木材需要が増加したことによって、輸入木材の不足感が広がり、結果として木材価格の上昇を招きました。
日本では、住宅建築に使用される木材の7割弱を輸入しているため、輸入木材の価格上昇の影響を大きく受けている状況です。また、輸入木材の代替として国産材への引き合いが強くなっていることから、木材全体の価格高騰も見られています。
ウッドショックについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー価格の高騰が物価に与えている影響とは?―「エネルギー白書2022」から③』/国土交通省『木材の品薄・価格高騰について』/経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響』)
今後の見通し
2021年と2022年を比較すると、鋼材は3割〜5.5割程度、木材では4割〜8.5割程度の価格高騰が見られました。鋼材や木材のほか、生コンクリートやセメントなどについても、今後市場価格が上昇すると見込まれています。原油高や世界的な建築資材の需要増加によって、今後も建築資材の価格上昇が継続すると予測されます。
また、先行き不透明な世界情勢のなか、原油をはじめとするエネルギー価格が高止まりするとも予測されています。エネルギー価格の高騰が一過性のものにとどまらないとすると、企業活動においても根本的な見直しが必要です。
工務店・ビルダーにおいては、工事価格や販売価格の引き上げをはじめ、資材調達先の多様化、国産材の活用などを進めることが求められます。このような変化に柔軟に対応するために、建築資材価格の動向については今後も注視しておくことが重要です。
(出典:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』/経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー価格の高騰が物価に与えている影響とは?―「エネルギー白書2022」から③』/経済産業省『どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?』)
まとめ
この記事では、建築資材の価格高騰について以下の内容を解説しました。
- 建築資材の価格動向
- 建築資材の価格高騰が起きている理由
- 今後の見通し
国内における建築資材価格は全体的に上昇傾向にあり、2021年以降アイアンショックやウッドショックによる影響が懸念されてきましたが、2022年以降も建築資材の上昇が見られています。
その背景には、世界規模での原油価格の高騰や、アメリカ・中国での木材需要の増加があると考えられます。今後についても、エネルギー価格が高止まりして、建築資材の価格高騰は継続することが見込まれています。
建築業界では、需給のバランスを考慮した価格形成、調達先の見直しなどを探る局面に差し掛かっていると考えられます。工務店・ビルダーにおいても、引き続き建築資材価格の動向を注視していくことが必要です。
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