建築・施工管理

施工管理業務はなぜ多忙? 働き方改革を効率的に図るには

施工管理業務はなぜ多忙? 働き方改革を効率的に図るには

施工管理は、建築工事のマネジメントを担う重要な業務です。「司令塔」として現場を取り仕切る施工管理は、建築業において欠かせない存在であり、大きなやりがいを感じられるポジションといえます。

しかし、その半面で業務には大きな責任が伴い、工事の完遂まで激務が続くという面があるのも確かです。今回は施工管理業務がなぜ忙しいのか、その理由や課題解消の方向性について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.施工管理者はなぜ多忙?
    1. 1.1.施工管理者の業務内容
    2. 1.2.一日の流れ
    3. 1.3.多忙といわれる理由
  2. 2.働き方改革と業務効率化の必要性
  3. 3.施工管理業務の効率化案
    1. 3.1.ボトルネックの洗い出し
    2. 3.2.データの一元管理
    3. 3.3.ITツールの導入や部分的なアウトソーシングの活用
  4. 4.業務効率化に取り組むことのメリット
  5. 5.労働時間や労働環境の見直しは必須

施工管理者はなぜ多忙?

そもそも、施工管理者が激務とされる理由は、具体的にどのような点にあるのでしょうか。ここでは、主な業務内容も含めて見ていきましょう。

施工管理者の業務内容

施工管理者の業務内容を大別すると、次の4つにまとめることができます。

  • 工程管理:工事のスケジュール管理
  • 安全管理:作業員や近隣住民の安全確保
  • 品質管理:国や自治体の定める品質基準への適合、仕様書どおりの品質の実現
  • 原価管理:予算の範囲内で完遂できるだけの原価調整、人員配置、重機の手配


施工管理者は、建設土木工事において、計画どおりに作業を進めるために全体を俯瞰してマネジメントする役割を担っています。それには、スケジュールや安全管理、品質管理だけでなく、利益を損なわないための原価調整、人員配置といった幅広いタスクを抱えることになります。

一日の流れ

上記のように、施工管理の業務範囲はとても広く、現場以外でもさまざまなタスクをこなさなければならないのが現状です。一つのモデルケースとして、平均的な日中のスケジュールをご紹介します。

  • 7時00分:出勤
  • 8時00分:朝礼、担当作業員に一日の工程を説明
  • 8時30分:作業開始、現場の巡回・点検・記録、必要に応じて作業員への指示・連絡
  • 12時00分:休憩
  • 13時00分:担当責任者と翌日以降の打ち合わせ、現場の巡回・点検
  • 15時00分:中間確認、必要に応じて作業員への指示・連絡
  • 17時30分:現場作業の終了、作業報告書の作成、作業工程表の更新
  • 19時00分:退勤


実際の業務内容や拘束時間は、企業や現場によっても変動しますが、基本的には現場作業の前後に管理者としての業務が発生します。そのため、どうしても全体としての業務時間は長くなってしまう傾向にあります。

多忙といわれる理由

施工管理者が激務になってしまう理由としては、「労働時間の長さ」が挙げられます。前述のように、施工管理者は対応しなければならない業務の範囲が広く、煩雑になりやすいのが特徴です。

また、建設工事では天候などの不確定要素に進捗が左右されやすい面もあり、トラブルがあればその分だけ管理業務の負担が増えてしまいます。その結果、残業や休日出勤が生じ、労働時間が長くなってしまうというケースも多いです。

さらに、クライアントや現場の職人、上司といった多方面とのやりとりが必要になるため、スケジュールがズレ込めば、その分だけ多くの調整業務が発生してしまいます。そのため、どうしても施工管理者がかぶらなければならない業務量が増え、多忙になってしまう場合が多いのです。

働き方改革と業務効率化の必要性

建築業界では、施工管理者に限らず、全体として長時間労働に支えられてきた構造的な背景があります。働き方改革によって、2019年4月から時間外労働の上限規制が適用されるようになりましたが、建設業は例外的に規制が猶予されている状態でした。

そうしたなかで、2024年4月からは、災害復旧や復興といった臨時的な事例を除き、建築業でも一般業種と同じように以下の上限規制が適用されることとなります。

  • 時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則月45時間・年360時間まで
  • 臨時的な特別の事情があり、労使の合意があった場合のみ以下のように拡張可能
     1.時間外労働:年720時間以内
     2.時間外労働+休日労働:月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内
  • ​​​​​​​月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで


違反をすれば、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則規定付きであるため、このルールが適用されれば、施工管理者の労働環境も大きく改善されていくと考えられます。

施工管理業務の効率化案

法律の適用で実質的に労働時間の上限が規制されるなかで、従来と同じだけの成果を上げるには、当然ながら業務の効率化を実現しなければなりません。ここでは、施工管理業務を効率化するための基本的な方法をご紹介します。

ボトルネックの洗い出し

まずは、現状のプロセスにおいて、どの部分に工数がかかっているのかを正確に洗い出す必要があります。効率的に業務改善を実現するためには、場当たり的に手を打つのではなく、課題を絞り込んでおくことが重要です。

業務に関する過去のデータやスケジュールなどをチェックし、不要な作業や工数がかさんでいるパートを見つけましょう。

データの一元管理

施工管理では大量の多岐にわたるデータが発生するため、それぞれをバラバラに保管しておくのは非効率的です。データの一元管理を行い、いつでも誰でもスムーズに取り出せるようにしておけば、情報共有の手間や伝達ミスによるムダを省略することができます。

特に、記録媒体として紙を主体に使っている場合は、速やかにペーパーレス化(紙からデジタル化する)を行うことが大切です。紙での管理をやめることで、「担当者ごとに異なる書き方を統一できる」「保管場所を確保せずにすむ」「出先や自宅からでも参照できる」といったさまざまなメリットが生まれます。

ITツールの導入や部分的なアウトソーシングの活用

施工管理では、現場への移動時間や待機時間といった隙間時間が生まれやすく、こうした点も長時間労働につながる原因となります。ITツールを導入すれば、隙間時間に必要な会議や情報整理を済ませることができ、効率的に労働時間を圧縮可能です。

また、状況によっては、業務の一部をアウトソーシングすることも検討してみるといいでしょう。そのためには現在抱えている業務をすべて洗い出し、コア業務とノンコア業務に分類したうえで、ある程度ルーティン化されているものから外部委託の可能性を探ってみるのが近道です。

業務効率化に取り組むことのメリット

施工管理業務を効率化するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 従業員エンゲージメントの向上
  • スケジュールどおりに工事が行える
  • 採用定着率の向上
  • コストの削減


効率化によって業務時間が圧縮されることで、従業員の負担が軽減され、エンゲージメントの向上を図れます。施工管理業務が全体の工程に影響を与えることも少なくなるため、工事もスムーズに進み、精神的なストレスも大幅に軽減されるでしょう。

その結果、施工管理者の採用定着率が自然と向上していきます。他社と比べて、拘束時間が短くなるというだけで、人材採用においては優位に立つことができるのです。

また、稼働している間に発生するオフィスの光熱費や残業代なども削減されるため、組織全体としてのコストパフォーマンスも向上します。このように、個人の従業員にとっても企業全体にとっても大きなメリットをもたらすため、効率化に力を入れることは経営戦略上も重要な意味を持っているといえるでしょう。

労働時間や労働環境の見直しは必須

これまで解説したように、建設業界においては、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されます。これまで過度な長時間労働によって成り立っていた企業や組織は、それまでに労働環境の改善を図らなければ、法令に違反することになってしまいます。

また、そもそも従業員の負担が相対的に大きければ、企業間の採用競争に勝てなくなってしまうでしょう。そのため、現状において施工管理業務の負担が大きい場合は、ツールの導入や働き方の見直しによって、大幅な効率化を実現する必要があります。

まずは、データや従業員の声を集めて自社の現状を把握し、改善すべきポイントを探っていきましょう。


●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:施工管理者が多忙といわれる理由は?
A:
主な原因としては、「業務範囲の広さ」と「トラブル発生時の負担」「調整すべき相手の多さ」などが挙げられます。施工管理者の業務は「工程管理」「品質管理」「安全管理」「原価管理」の4つに大別でき、いずれも業務の範囲や量は拡大されがちな面があります。

Q:施工管理業務を効率化するには?
A:
まずは現状のプロセスを見直し、ボトルネックとなっている部分を絞り込むことが大切です。また、ペーパーレス化やITツールの導入、外部サービスの活用などによって、無駄を徹底的に省くことも重要な取組みとなります。


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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