住宅会社の社員教育・研修を動画活用で効率化。2社の事例を紹介
近年、住宅会社では、自社の認知や好意度を高めたり、購買意欲を向上させたりする目的に、YouTubeやSNSでエンドユーザーに向けて動画を配信することが一般的になってきています。
一方で、一部の住宅会社では、エンドユーザー向けの動画だけではなく、社内スタッフのスキルアップや業務の効率化を図るために動画を活用するという動きも広がってきています。
今回は住宅会社の動画活用において、社内向けに教育動画を活用している事例を紹介します。
業務を自分事化する「更新型動画」
奈良県内と京都南部エリアで住宅事業を手がけている楓工務店では、動画を利用し新人スタッフが自ら業務を学び、自己研鑽を行える環境を整備しています。
同社が利用する教育用動画は、内定者が入社までにタッチタイピングを習得できるようにした内容のものから、配属先の店舗にある電子レンジの使い方といったものまで、あらゆる業務に関するマニュアルを動画化しており、クラウド上に保存しています。
同社のスタッフは、新人の頃からあらゆる業務に対して、疑問点や改善点などを動画に残すようにしており、マニュアル動画自体についても視聴後に気づいた点や改善できる点があれば、その都度動画を作り直して更新しています。
新人スタッフにはマニュアル動画を視聴した後に「視聴確認表」を記入させ、「学んだこと・気づいたこと」「質問」「動画の改善点」などを教育担当者がチェックし、各項目のフィードバックを行います。
新人研修終了後には、教育担当者が担当を割り振り、研修で視聴したマニュアル動画の更新を新人スタッフが行うようにするということです。各動画の作成担当者を割り振る際には、「視聴確認表」に記載された「動画の改善点」についての記載内容を参考にし、着眼点のよいアイデアを出したスタッフに動画の更新を任せます。
新人の時点で動画の更新を経験しておくことで、その後の業務においても常にマニュアルの改善を自分事化して考え、動画を更新する習慣が身に付くということです。
また作成においては、編集を一切していないのも同社が動画教育をうまく活用できているポイントとなっています。完成度よりもスピードと量を重視しており、動画の中身におかしな部分があれば、気づいた人がまた新しい動画を作って内容を更新することで、よりよい動画が蓄積されていき、会社の財産になっていくということです。
「マニュアル」+「ロープレ」で対応力向上
鳥取県米子市に本社を置くビルダーで、鳥取市、島根県松江市・出雲市に拠点を開設しているアート建工は、新人スタッフのスキルアップとともに教育担当者の負担の軽減、複数拠点のスタッフに対しての研修の効率化を図るために動画教育を取り入れています。
同社が活用している教育動画のジャンルとしては、「マニュアル動画」と「ロープレ動画」の2つが中心となっています。「マニュアル動画」は、同社が展開する3つのブランドごとに用意されています。
例えば、注文住宅用のモデルハウスの案内方法では、「LDK」「パントリー」などのように案内する場所ごとに細かく分けて動画にしているほか、建売住宅用では、「お出迎え~着座」「アンケート~ヒアリング」というように、必要な業務内容を動画を視聴することによって習得することができるようになっています。
「ロープレ動画」は、各店舗の店長を中心に先輩スタッフがお手本となる動画を撮影し、システム上に投稿します。営業スタッフがお手本動画を視聴した後、自身で実践しているところを撮影し、システム上に投稿して、上長や教育担当者などのチェックを受けるという流れで運用されています。
「ロープレ動画」のテーマは、実際に起こる可能性があるさまざまなシチュエーションを想定した内容の動画となっているのが特徴といえます。例えば「注文住宅と建売住宅を並行して検討している方へ建売住宅を売る方法」「競合会社がいる場合の切り返しトーク」などといった具体的なケースを想定したロープレ内容となっています。
新人スタッフの場合、「マニュアル動画」の内容を覚えると、顧客に対して覚えたことを矢継ぎ早に話してしまうことがあるといいます。同社は実際の接客場面では、顧客の話を聞くことや傾聴することのほうが重要と考えており、どのような状況で顧客が来たとしても対応できるように、あらゆる状況を想定したロープレを実施しているということです。
動画教育により、教育担当者の業務負担は圧倒的に減少したということです。今後は営業以外の業務にも動画の導入を検討しているということです。
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