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介護・バリアフリーのリフォーム補助や制度は? 住宅営業の担当者が知っておきたい基礎知識

介護・バリアフリーのリフォーム補助や制度は? 住宅営業の担当者が知っておきたい基礎知識

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、日本では新築住宅市場に長期的な縮小傾向が見られます。その一方で、リフォーム市場は堅実に需要が伸びていくと想定されています。

なかでも、介護・バリアフリー対応に関しては補助や公的制度が整えられていることもあり、今後もますます需要が増えていくといえるでしょう。今回は住宅業界の担当者が知っておくべき基礎知識として、介護やバリアフリーに関する制度について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.高齢化で需要が高まる介護・バリアフリー住宅
    1. 1.1.主なリフォーム箇所
    2. 1.2.基本のリフォーム
    3. 1.3.バス・トイレのリフォーム
  2. 2.将来を見据えての顧客との接触・提案が大事
    1. 2.1.ご高齢の方
    2. 2.2.数十年前のOB顧客
    3. 2.3.二世帯住宅の方
    4. 2.4.40代前後の顧客
  3. 3.介護保険における「住宅改修費の支給」とは
    1. 3.1.制度の概要
    2. 3.2.対象となる住宅改修の種類
  4. 4.「バリアフリーリフォーム減税」とは
    1. 4.1.制度の概要
    2. 4.2.適用を受けるための要件
  5. 5.補助金や制度を上手に活用してリフォームのサポートを!

高齢化で需要が高まる介護・バリアフリー住宅

総務省統計局のデータによれば、日本における高齢者人口の割合は1950年以降一貫して増えており、2005年に20%を超えると、2022年は29.1%と加速度的に増加していることが示されています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、今後も高齢者人口の割合は増加を続け、2040年には35.3%にもなるとの見込みです。

高齢化は現在がピークというわけではなく、さらに進展していくことが見込まれており、社会のさまざまな分野に影響を与えると考えられます。住宅業界においては、高齢者の増加によって、介護住宅やバリアフリー住宅へのニーズがますます高まっていくと予想されます。

主なリフォーム箇所

住宅のバリアフリー化を実現するうえで、具体的にはどのようなリフォームが求められるのでしょうか。ここでは、基本となるリフォームの施工箇所と実施のタイミングを解説します。

基本のリフォーム

バリアフリーでは、移動や介助のしやすさを考慮した構造を実現することが大切です。そのため、まずは「手すりの設置」「段差の解消」「通路の幅の拡張」が基本的なポイントとなります。

手すりの設置は、移動中の転倒防止や起立の補助が目的であり、比較的簡単に行えるので実施されるケースがほとんどです。主な設置場所は玄関・廊下やバス・トイレなどであり、取り付ける箇所によって形状や施工費用も変わってきます。

段差の解消は、つまずきによる転倒防止や車いすでの移動性を向上させるのが目的です。主に玄関から各居室への動線において、不要な段差を取り除くのがメインの施工内容ですが、玄関先にも段差がある場合にはスロープなどで対応するのが一般的です。

通路幅の拡張は、車いすでの移動や手すりの取り付けがしやすくなることを目的に行います。十分な居住スペースがない場合は、廊下などを広げるために部屋の間取りを変更しなければならないケースもあるため、事前に実現可能なプランと費用のバランスを調べておくことが大切です。

バス・トイレのリフォーム

バスルームは安全に入浴できるように「手すりの取り付け」や「バスタブの高さ解消」「浴室と脱衣所の間の段差解消」などがメインの施工内容となります。また、将来的に介助が必要になったときに備えて、2人が十分に動作できるようなスペースの確保も必要です。

そのうえで、ヒートショックによる重大事故を防ぐために、バスルームや脱衣所に暖房設備を設置できると安心です。トイレについても、基本的には手すりの設置や十分なスペースの確保がポイントとなります。

また、バリアフリー性を高めるためには、扉の種類についても見直す必要があります。片開き戸の場合は車いすのまま中に入りにくく、さらに内開きであれば万が一室内で転倒したときに外から開けることができません。

そのため、片開き戸が採用されている住宅では、よりバリアフリー性の高い引き戸に入れ替えるケースも多いです。

将来を見据えての顧客との接触・提案が大事

リフォームの年間支出額は65歳以上の高齢者層が高い傾向にあり、その理由としてはやはりバリアフリー改修・改築による需要が考えられます。そのため、メインのターゲットとしても、高齢者を中心に設定していくのが基本といえるでしょう。

そのうえで、住宅会社としては具体的にどのような客層を絞り込んでいくといいのでしょうか。ここでは想定されるパターンをピックアップして見ていきましょう。

ご高齢の方

まずは、現在ご高齢の方がメインのターゲットとなります。また、要介護の方が一定範囲のバリアフリー化を行う際には、介護保険によって補助を受けることが可能です。

依頼者からすれば、比較的にリフォームを決断しやすいタイミングになるため、その機を逃さないような仕組みを構築する必要があります。

数十年前のOB顧客

一定以上の営業歴がある会社であれば、自社が手がけた住宅のOB名簿が大きな財産となります。数十年前のOB顧客に対して、再びアプローチをかければ、バリアフリーリフォームの受注獲得を効率的に狙うことが可能です。

二世帯住宅の方

二世帯住宅に住んでいる方も、バリアフリーリフォームを検討する可能性は比較的に高いといえます。親世帯が高齢に差しかかるタイミングで、水回りや1階部分のバリアフリー化を検討するケースも多いため、メインのターゲット層として設定する効果は十分にあると考えられます。

40代前後の顧客

長期的な目線で戦略を立てるのであれば、現役世代に目を向けてアプローチを行うことも大切です。たとえば、現在40代前後の顧客は、今の段階からしっかりと信頼関係を構築しておけば、将来的にはメインのターゲット層になるタイミングが訪れます。

また、40歳はちょうど介護保険の支払いがスタートするタイミングでもあり、自身の将来について具体的に考えやすい年代でもあります。そのため、会社の将来を見据えるうえでは、重要性の高いターゲット層といえるでしょう。

介護保険における「住宅改修費の支給」とは

前述のように、介護保険では一定のバリアフリーリフォームにおいて、「住宅改修費の一部支給」が行われるという制度が設けられています。ここでは、介護保険における住宅改修補助の仕組みについて解説します。

制度の概要

介護保険における住宅改修費の支給制度とは、要介護者が自宅に一定範囲のバリアフリー改修を行うときに、必要な手続きを行うことで受けられるサポートのことです。具体的には、担当のケアマネジャーに相談したうえで必要な書類をそろえて申請書を提出することで、20万円を限度に、発生した住宅改修費の9割相当額が償還されるという仕組みです。

対象となる住宅改修の種類

この制度では、以下の住宅改修を対象としています。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • スリップ防止や移動の円滑化を目的とした床・通路の材料変更
  • 引き戸等への扉の取り替え
  • 洋式便器等への便器の取り替え
  • 上記に付帯して必要となる住宅改修


対象範囲が細かく決められているので、施工するプランがこの制度に該当しているかどうかは正しくチェックしておくことが大切です。

「バリアフリーリフォーム減税」とは

介護保険のリフォーム補助とは別に、所得税においてもバリアフリーリフォームに関する優遇措置が設けられています。ここでは、「住宅特定改修特別税額控除」、通称「バリアフリーリフォーム減税」について解説します。

制度の概要

バリアフリーリフォーム減税とは、自己の住宅においてバリアフリー改修を行った場合、一定の要件を満たすことで、一定の金額がその年の所得税から税額控除されるという制度です。仕組みとしては住宅ローン減税に似ていますが、こちらは住宅ローン等の利用がなくても適用できるのが特徴となっています。

なお、2023年11月時点では、2023年12月31日までの措置となっているので注意が必要です。

適用を受けるための要件

バリアフリーリフォーム減税を利用するためには、次のすべての要件を満たす必要があります。

1

自己所有の住宅のバリアフリー改修工事をして、2014年4月1日から2023年12月31日までの間に自己の居住の用に供していること。

2

工事の日から6ヶ月以内に居住の用に供していること。

3

控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること。

4

工事をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。

5

2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅であること。

6

バリアフリー改修工事に係る標準的な費用の額(その工事等の費用に関し補助金等の交付を受ける場合はその額を控除した額)が50万円を超えるものであること。

7

工事費用の2分の1以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること。


あくまで居住用であることや所得が一定以内であること、工事額が一定以上であることなどが条件となっているので、適用されるかどうかは慎重に確認する必要があります。

補助金や制度を上手に活用してリフォームのサポートを!

バリアフリーリフォームについては、今後もますます需要が増えていくと想定されており、国もさまざまな制度を整えています。高齢者の割合はこの先もさらに増えていくため、自社の戦略としてバリアフリーリフォームに力を入れるのも、有効な選択肢といえるでしょう。

補助金や制度を活用することで、リフォームに踏み切れるというケースも決して少なくはないため、まずは内容をきちんと把握しておき、丁寧にサポートできる体制を整えましょう。また、補助金や制度に関する最新の内容は、自治体や国のホームページをチェックしてみてください。


●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:バリアフリーリフォームの費用は介護保険でどの程度補助される?
A:
介護保険の制度を利用すれば、きちんと要件を満たすことで、20万円の上限内でバリアフリーリフォーム費用の9割相当額が償還されます。ただし、対象となる工事内容はあらかじめ設定されているので注意が必要です。

Q:バリアフリーリフォーム減税とは?
A:
自宅のバリアフリー改修を行った場合に、一定の要件を満たすことで、一定の金額をその年の所得税から税額控除できるという制度です。住宅ローン控除と仕組みは似ているものの、こちらは住宅ローンを借りていなくても利用することができます。

そのほか、業務に役立つ住宅営業ノウハウコラムを掲載しております。ぜひご覧ください。
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編集部
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