建築・施工管理

工事台帳とは? 作成する目的と具体的な作成方法

工事台帳とは? 作成する目的と具体的な作成方法

工事台帳を作成することで、工事にかかる費用や進み具合を可視化でき、工事の全体像を把握しやすくなります。一般的に建築業においては、原価計算や全体の進捗管理が難しいとされていますが、工事台帳を作成することで問題の解消につながるでしょう。

この記事では、工事台帳の基本的な捉え方や作成方法、作成時の注意点などを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.工事台帳とは?
  2. 2.工事台帳の作成目的
    1. 2.1.利益管理を適切に行うため
    2. 2.2.完成工事原価の算出を行うため
    3. 2.3.公共工事の入札を行うため
  3. 3.具体的な作成方法
    1. 3.1.工事台帳は表計算ソフトなどで作成可能
    2. 3.2.工事ごとの取引明細を記載する
    3. 3.3.工事台帳の記載項目をチェック
  4. 4.作成時の注意点
    1. 4.1.表計算ソフトの場合は入力ミスが起こりやすい
    2. 4.2.情報共有にタイムラグが発生しやすい
    3. 4.3.業務の属人化を招きやすい

工事台帳とは?

工事台帳とは、工事の案件ごとの内容を記載した台帳のことであり、工事における原価を合計した帳簿を指します。会社によって、工事原価台帳や工事管理台帳などと呼ばれることもありますが、基本的な意味や作成する目的は同じです。

建築業は工事ごとに工期が異なる点や、天候不順などの理由によって予定していた工期が延びてしまうケースがあるため、原価計算や進捗管理が難しい業種だといわれています。また、大規模な工事であるほど工事費の計算が複雑になるため、工事の全体像を把握するのに手間がかかる部分もあるでしょう。

工事台帳を作成すれば、それぞれの工事にかかる費用や進捗管理を把握しやすくなり、複雑に絡み合う情報の整理に役立ちます。工事台帳を正しく作成して運用することによって、原価の管理だけでなく、工事にまつわるさまざまなリスクの予防につながります。

工事台帳の作成目的

工事台帳を正しく作成するには、なぜ作成するのかといった目的を理解しておく必要があります。ここでは、工事台帳を作成する目的を解説します。

利益管理を適切に行うため

工事台帳には、工事の受注金額だけでなく、工事を行うために必要な原価を記載します。どのような工事にいくら費用がかかったのかを正しく記載して積算することで、受注金額から原価を差し引いた粗利益を把握できます。

また、案件ごとの利益率まで算出しておけば、次に同様の工事を受注した際に原価予測を素早く行えます。工事台帳があることで、見積書を作成する際に適切な金額で受注しやすくなるでしょう。

加えて、他社との相見積もりが生じたときにも、どの程度まで原価を下げられるかを判断できるので、無理な受注を防げるでしょう。

完成工事原価の算出を行うため

完成工事原価とは、すでに完成した工事から売り上げ(完成工事高)を得るのにかかった費用を意味しています。一方、未成工事支出金はまだ完成していない工事にかかっている費用を表すものです。

どちらの項目も、建築業においては重要な勘定科目であり、正しく記載しておくことで決算処理をスムーズに行いやすくなるでしょう。建築業は工事1件当たりの受注金額が高額になりやすく、複数の売り上げ計上を行うといった性質上、税務調査の対象になりやすいといわれています。

税務調査が行われた際に、情報開示の資料として工事台帳を提出できれば、会社の信用を高められるはずです。

公共工事の入札を行うため

公共工事は一般競争入札の形で受注先が選ばれますが、入札に参加する資格があるかを判断される経営事項審査というものがあります。経営事項審査は公共工事を直接請け負う建設業者が必ず受けなければならず、工事台帳の提出が求められます。

入札を行うときに慌てて作成すると記載ミスや記載漏れなどが生じてしまう恐れがあるので、日頃から工事台帳を作成しておくことが大切です。

具体的な作成方法

工事台帳は特殊な帳票というわけではなく、工事の案件ごとに取引内容を記載して作成します。工事台帳を具体的に作成するときのポイントなどを解説します。

工事台帳は表計算ソフトなどで作成可能

工事台帳の作成には多くの手間や時間がかかるため、手順をきちんと押さえておく必要があります。主な作成方法としては、表計算ソフトを用いて作成するか、専用ソフトを使って作成するかの2つのパターンに分けられます。

表計算ソフトで作成する場合は、コストをあまりかけずに作成できますが、転記ミスなどが起こりやすい点はデメリットです。一方、専用ソフトを導入すれば工事データを一元管理でき、自動計算によってミスを減らせます。

表計算ソフトと専用ソフトのどちらがよいかは事業規模によっても異なるため、自社の実情に応じて導入を検討しましょう。

工事ごとの取引明細を記載する

工事台帳に記載する項目は、工事ごとの取引内容によって異なります。主な項目は次のとおりです。

  • 工事名
  • 工事番号
  • 工事場所
  • 発注者
  • 受注金額
  • 実行予算
  • 受注年月日
  • 着工年月日
  • 竣工年月日
  • 引き渡し年月日
  • 工事支出金(日付順)
  • 工事受入金(日付順)
  • 仕入れ先
  • 連絡先 など


どのような工事でも入力する項目については、あらかじめ設定を行っておくことで作業の省力化を図れるでしょう。記載した項目について、日々発生した費用を入力していき、工事台帳を管理します。

工事台帳の記載項目をチェック

工事台帳には、工事ごとの原価を詳しく記載しなければなりません。原価は主に、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」に分けられます。

それぞれの原価について違いをまとめると、以下のとおりです。

原価に関する

項目

内容

材料費

  • 工事を行うために仕入れた材料にかかる費用
  • 材料そのものの費用だけでなく、運搬費も含める

労務費

  • 工事を行うために雇用した職人や作業員に支払った賃金
  • 現場の作業に従事した者が対象であり、事務員は対象とならない

外注費

  • 社外の協力会社などに支払った費用
  • 自社で直接雇用している者の費用は、労務費として計算する

経費

  • 材料費、労務費、外注費のどれにも属さない原価
  • 具体的には重機をレンタルした費用や現場の光熱費、事務員に支払った賃金など

作成時の注意点

工事台帳を表計算ソフトで作成する際、特に気をつけておきたい注意点があります。どのような点に気をつければよいかを解説します。

表計算ソフトの場合は入力ミスが起こりやすい

工事台帳の作成では、一度に複数のファイルを取り扱うため、どうしても入力ミスなどが起こりやすくなります。1つの数値に間違いがあるだけで、他の箇所も再びチェックをする必要があり、確認作業に時間を取られてしまうといった懸念があります。

工事の規模が小さいうちは表計算ソフトでの管理も可能ですが、大がかりな工事を受注するような段階では専用ソフトの導入を検討したほうが無難です。

情報共有にタイムラグが発生しやすい

表計算ソフトで工事台帳を作成しようとすると、現場責任者がファイルを提出するタイミングがまちまちになるケースがあります。工事全体の状況を把握するために必要なファイルの提出にバラつきがあることで、情報共有にタイムラグが発生しやすくなるので注意が必要です。

業務の属人化を招きやすい

工事台帳を表計算ソフトで管理していて特に問題がなかったとしても、作成を行っている従業員が退職などでいなくなると、他の従業員ではうまく管理が行えない場合があります。業務の属人化を招きやすいため、中長期的な視点に立って、どのような管理体制がよいのかを検討することが大切です。

以上、注意事項に気を付けながら、工事台帳を作成してみましょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:工事台帳とは?
A:
工事台帳とは、工事の案件ごとの内容を記載した台帳であり、工事における原価を合計した帳簿のことです。会社によって、工事原価台帳や工事管理台帳などと呼ばれることもありますが、基本的な意味や作成する目的は同じです。

Q:工事台帳を作成するときの注意点は?
A:
特に、工事台帳を表計算ソフトで作成する場合、入力ミスや業務の属人化などが起こりやすいので注意が必要です。工事の案件数などに応じて、専用ソフトの導入を検討しましょう。


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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