建築積算士とは?業務内容と資格取得のメリットを解説
建築需要の高まりによって、建築積算士として活躍できる場面が多くなっているといえます。工事を計画どおりに進めていくには建築積算士の存在が欠かせないため、基本的な特徴を押さえておくことが大事です。
今回は、建築積算士の業務内容や資格取得のメリット、試験の概要などを解説します。
目次[非表示]
- 1.建築積算士とは?
- 1.1.建築積算士の定義
- 2.建築積算士の業務内容
- 2.1.建築積算士に求められる知識
- 2.2.建築コスト管理士との違い
- 3.資格取得のメリット
- 3.1.内勤の業務を任せられる
- 3.2.民間の工事だけでなく公共事業にも入札できる
- 3.3.従業員のモチベーションを高められる
- 4.資格難易度は?
- 4.1.1次試験が免除される場合もある
- 4.2.建築積算士に向いている人とは?
建築積算士とは?
建築積算士とは、工事における提示価格の基礎を算定する役割を持つ仕事です。他の建築会社に工事を依頼する場合に、判断の根拠となる工事価格や期間内に必要な工事を積算しておくことは重要だといえます。
また、公共事業における一般競争入札においても、公示された工事概要を基に積算を行う必要があります。建築積算士がいなければ適正な工事価格を算出できず、たとえ工事を受注できたとしても、ほとんど利益が残らない状態になる恐れがあるでしょう。
建築積算士はあらゆる工事において必要とされる役割を担っており、社内に有資格者がいることでスムーズに業務を進められます。
建築積算士の定義
建築積算士の資格制度は、公益財団法人である日本建築積算協会が実施しており、公式の定義によれば次のとおりです。
建築積算に関する知識及び技術の向上を図り、建築工事費の適正な価格形成に資するとともに、建築物の質の向上に寄与することを目的とする |
※引用:公益財団法人 日本建築積算協会「建築積算士の概要」
建築積算士は1979年に民間資格として始まった制度であり、2009年から建築積算士という名称となり、現在に至っています。資格に求められるスキルとして、建築工事分野の数量算出や工事費の算定などが挙げられているのが特徴です。
建築積算士の業務内容
建築積算士は前述のとおり、民間企業の工事や公共事業など、幅広い建築工事に関わる仕事です。建物の工事といっても、工事の規模によって価格も大きな幅があります。
そのため、建築積算士は物件ごとに建築図面に基づいた設計図や仕様書などから、必要な数量を算出しなければなりません。加えて、建築工事にかかる期間なども考慮したうえで、工程に見合った適正な工事費用を算出する必要があります。
建築積算士は「積算のスペシャリスト」と呼ばれることもあり、積算課などに配属されるのが一般的です。また、専門工事業(一般工事の2業種を除いた27業種)の場合は、それぞれの建築業種(電気・建具など)に関する知識を身につけることが求められます。
建築積算士に求められる知識
日本建築積算協会によれば、建築積算士に求められる知識として、以下のものが挙げられています。
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※引用:公益財団法人 日本建築積算協会「建築積算士の概要」
積算のスペシャリストと呼ばれるだけあって、積算に関するさまざまな知識や最新動向などを押さえておく必要があります。資格を取得してからも、実務を通じて継続的な学びが求められるでしょう。
建築コスト管理士との違い
建築コスト管理士とは、建築積算士の上位資格として位置づけられるものであり、公益財団法人である日本建築積算協会が実施しています。建築積算士が建築工程における工事費の算定などを行うのに対し、建築コスト管理士は建築のライフサイクル全般においてコストマネジメントに関する業務を担うものとされています。
一つひとつの工事というよりは、プロジェクト全体でのコストマネジメントを担う立場であるのが特徴です。建築積算士として経験を積んでいくなかで、目指していく資格だといえます。
資格取得のメリット
建築積算士の資格を取得している従業員が社内にいれば、数多くの点でメリットを得られます。具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
内勤の業務を任せられる
建築積算士の資格を持っている従業員であれば、本人の希望に合わせて内勤の業務を任せやすくなるでしょう。建築業界は外勤の仕事が多く内勤ができる仕事は少ないといえるので、働き方の提案につながるはずです。
民間の工事だけでなく公共事業にも入札できる
建築積算士がいれば、民間の工事の受注だけでなく、公共事業にも入札が行いやすくなるでしょう。適正な工事価格を算出しやすくなるため、競合他社との競争を有利に進めることにつながります。
従業員のモチベーションを高められる
建築積算士の資格を取得することで資格手当などが支給されるのであれば、従業員のモチベーションを高めることにつながるはずです。しっかりと人事評価に結びつくように、社内規程を見直してみましょう。
資格難易度は?
建築積算士の試験は、満17歳以上の人であれば学生や社会人にかかわらず、誰でも受検することが可能です。試験は毎年1回以上行われ、1次試験である学科試験と2次試験である実技試験に合格しなければなりません。
試験の合格率は1次・2次試験ともに、65%前後となっています。合格者は合格した年度内に申請を行うことで、新規登録者となります。
1次試験が免除される場合もある
日本建築積算協会が認定する学校または学部において、積算に関する授業を受けたのちに認定試験をクリアした場合、「建築積算士補」として働くことが可能です。建築積算士補になれば、1次試験の受験が免除されて受験費用も安くなります。
建築系の学校に通われている方であれば、建築積算士補を先に目指すほうが、結果としては近道になる可能性があるでしょう。今後のキャリアプランも踏まえたうえで、どのように資格を取得するのかを決めていくことも大事です。
建築積算士に向いている人とは?
建築積算士に向いている人とは、まず「計算スキルが高い人」が挙げられます。工事価格の提示や見積書の算出に誤りがあると、取引先からの信用を失う恐れがあるため、慎重に積算業務を行える人が向いているでしょう。
また、必要に応じて設計者などとのやりとりも出てくるため、「コミュニケーション能力が高い人」も向いています。単に計算スキルが高いだけでなく、周りの人との調整や折衝を繰り返しながら、業務を遂行していける人が適材だといえます。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建築積算士とは?
A:建築積算士とは、工事の提示価格の基礎を算定する役割を担う仕事です。民間の工事だけでなく、公共事業においても適正な工事費用の算定や必要な工事の積算などを行う必要があり、建築積算士は「積算のスペシャリスト」とも呼ばれています。
Q:有資格者が社内にいることで、どのようなメリットがある?
A:建築積算士の資格を持つ従業員が社内にいることで、公共事業にも入札できるようになります。また、資格取得者に資格手当を支給したり、内勤希望をかなえられることから従業員のモチベーションアップにつながったりするでしょう。
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