建築・施工管理

【建築業界の基礎知識】建築におけるボリュームチェックとは? 具体的な方法・期間・費用をチェック

【建築業界の基礎知識】建築におけるボリュームチェックとは? 具体的な方法・期間・費用をチェック

「ボリュームチェック」は、主に不動産開発などの場で用いられる専門用語です。土地の活用を考えるうえで、計画の土台となる重要な工程です。

今回はボリュームチェックの重要性や具体的な方法、必要となる期間やコストについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.ボリュームチェックとは
  2. 2.ボリュームチェックを行う理由
  3. 3.ボリュームチェックの主な方法
    1. 3.1.ボリュームチェックの手順
    2. 3.2.チェックポイント1:容積率
    3. 3.3.チェックポイント2:各種制限
  4. 4.ボリュームチェックにかかる期間と料金の相場
  5. 5.ボリュームチェック後の注意点と業務に生かせる資格
    1. 5.1.容積率をフルに消化することが正解ではない
    2. 5.2.土地活用の提案業務に生かせる資格
  6. 6.この記事を監修した人

ボリュームチェックとは

「ボリュームチェック」とは、平たく言えばその土地にどのくらいのボリュームの建物を建てられるかを確認する工程のことです。具体的には、法令を踏まえてその土地に建てられる建築物の面積・容積の最大値を算出する作業であり、「ボリューム出し」や「ボリュームを出す」と表現されることもあります。

建物を建てる際には、建ぺい率・容積率・日当たり・高さ・斜線制限・道路の制限・用途地域など、さまざまな規制を考慮しなければなりません。そのため、まずはその土地固有の制限や条件を確認したうえで、現実的な建物の規模を割り出す必要があるのです。

ボリュームチェックを行えば、「どのくらいの広さの建物を建てられるか」「賃貸物件でどのくらいの戸数を確保できるか」などが明らかになります。

ボリュームチェックを行う理由

ボリュームチェックを行う基本的な理由は、その土地を有効活用することでどの程度の収益が生まれるのかを確認するためです。ボリュームチェックによりその土地が持つポテンシャルが分かり、収益性を算出する目安になるのです。

特にボリュームチェックの重要性が高いのは、高層建築物を建てられる土地です。一戸建て住宅や2階建てのアパート、店舗併用住宅といった比較的高さのない建物は、高さや日陰に関する制限をそれほど大きく受けないため、専門的なボリュームチェックの必要性は低くなります。

一方でオフィスビルやテナントビル、マンションなどは周辺環境への影響も大きいことから、さまざまな建築規制の対象となりやすい建築物です。特に、住居系の用途地域に建てられるマンションでは、規制がより厳しいエリアに該当するため注意が必要です。

建築基準法だけでなく、各自治体の条例や地区計画の決まりなどのさまざまな建築規制が関係してくるため、土地活用の計画を立てる前に綿密なボリュームチェックが必要となります。

ボリュームチェックの主な方法

ボリュームチェックは、具体的にどのような方法で行われるのでしょうか。ここでは、基本的な手順とチェック項目について見ていきましょう。

ボリュームチェックの手順

ボリュームチェックでは、法務局で取得できる地積測量図(実測図)を通じて敷地のさまざまな法規制を確認します。主なチェック項目には次のようなものが挙げられます。

▼主なチェック項目

・建ぺい率

・容積率
・用途地域
・制限緩和
・高さ制限
・斜線制限
・防火地域の指定
・高度地区
・避難経路
・各自治体の条例


これらの制限を確認したうえでボリュームチェックを行い、法令に基づいたプランを作成するのが基本的な流れです。依頼先によっては用途に応じた賃料などを設定し、予想される収益を試算してもらえることもあります。

チェックポイント1:容積率

ボリュームチェックで特に重要となるのが容積率です。容積率が大きいほど延床面積を広くとることができ、高い建物が建てられるため、特に高層建築物を建てる際には基本となる項目です。

容積率には、基本的な計算式で求められる「基準容積率」と、都市計画で決められる「指定容積率」があります。これらのうち小さいほうの数値がその土地の容積率として採用されるため、両者の違いを正しく押さえておくことが大切です。

基準容積率の計算方法は、以下のように前面道路の幅員によって異なります。

▼基準容積率の計算方法

前面道路の幅員が12m以上のとき

基準容積率=指定容積率

前面道路の幅員が12m未満のとき

住居系の用途地域:前面道路の幅員×0.4
住居系以外の用途地域:前面道路の幅員×0.6

チェックポイント2:各種制限

容積率とともに重要となるのが、土地に関する各種制限です。高さ制限や斜線制限によっては建てられる建物の高さに制限がかかり、容積率の上限いっぱいまで消化できない可能性があります。

たとえば賃貸マンションのプランを立てる場合、制限の度合いによって確保できる総戸数に違いが生まれ、当然ながら収益性にも大きな影響が出ます。そのため、各種制限も漏れがないように確認し、正確な数字を割り出す必要があります。

ボリュームチェックにかかる期間と料金の相場

ボリュームチェックにかかる期間や費用は、土地の形状や条件などによって異なります。多くの場合、依頼があってから2週間程度で結果を提示するのが一般的であり、比較的に簡単な条件の物件であれば数日で行う会社もあります。

また、料金は高くても10万円程度に収めるのが通常です。会社によっては自社での設計受注を条件に無料で行うケースもあります。いずれにしても、ボリュームチェックは調査それ自体が目的というよりも、その先の合理的な不動産開発を見据えた工程にすぎません。

そのため、自社で開発を引き受けられるかどうかによって料金の考え方も大きく違ってくるといえるでしょう。

ボリュームチェック後の注意点と業務に生かせる資格

ボリュームチェックはあくまでも法令上の観点から行うものであり、そのまま土地活用の最善な方法を導き出せるわけではありません。不動産会社としてはボリュームチェックを行ったうえで、どのような提案を行えるかが重要な勝負点となります。

ここでは、ボリュームチェック後の注意点と提案業務に生かせる資格について見ていきましょう。

容積率をフルに消化することが正解ではない

ボリュームチェックの観点では、各種の制限を踏まえたうえで、もっとも大きく建物を建てた場合を想定して計算します。そのため、基本的には上限いっぱいまで容積率をフルに消化するほうが望ましいと考えられるケースも多くあります。

しかし実際に資産として土地を運用する場合は、必ずしもフルに容積率を消化するのが最適解となるわけではありません。たとえば、そもそもの賃貸需要が低い土地では階層だけを増やしてもコストの回収が難しくなるため、大きなリスクとなります。

また、比較的に小さな土地でマンションを建てる場合は、階層や面積を広げることでエレベーターの設置義務の有無が変わってくることもあるので注意が必要です。エレベーターを設置すると共用部分の割合が多くなるとともに、保守・点検といったメンテナンス費用も高くなります。

建築基準法では高さ31m以上の建物にはエレベーターの設置義務が生じるため、賃貸需要も含めてコストを回収できるかどうかを総合的に判断することが大切です。

土地活用の提案業務に生かせる資格

土地活用には、法令だけでなく税金や相続、経営といった幅広い知識が求められます。そのため、提案業務で差別化を図るためには、資格を取得して専門性を高めるのも有力な方法です。土地活用と相性がよい資格には、次のようなものがあります。

▼土地活用の提案業務に役立つ資格

・土地活用プランナー
・宅地建物取引士
・日商簿記検定
・住宅診断士
・マンション診断士
・不動産実務検定
・管理業務主任者
・宅建アソシエイト


ここでは、特に土地活用に特化された資格の「土地活用プランナー」について見ていきましょう。

土地活用プランナーとは、公益社団法人東京共同住宅協会が認定する民間資格です。認定試験では、土地活用プランナーの役割や市場動向、関連する法律や税金、資金計画と資金準備、建築や設備の基礎知識といった幅広い知識が問われます。

また、不動産ビジネスを行ううえでのマーケティングや近隣対策、明け渡し交渉、土地活用のパートナー選定、事業計画書の見方・つくり方といった実務的な知識も習得することが可能です。

土地活用プランナーとして登録するには、2年以上の実務経験や関連資格の登録期間が2年以上あることが条件となりますが、認定されれば土地活用のプロフェッショナルとして確かな信頼を得られることが期待されます。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:ボリュームチェックとは?
A:
土地活用のプランを決める前段階として、法令を踏まえてその土地に建てられる建築物の最大規模を算出するプロセスのことです。不動産業界では「ボリューム出し」や「ボリュームを出す」と表現されることもあります。

Q:ボリュームチェックのチェック項目は?
A:
建ぺい率や容積率、用途地域、各種高さ制限、自治体の条例などが主なチェック項目です。特に容積率は建てられる建物の広さを決める重要な項目です。


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この記事を監修した人

岩納 年成(一級建築士)

大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。

土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。

編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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