【建築業界の基礎知識】建物構造の種類とその特徴について分かりやすく解説
建物の構造にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。大まかに分ければ、一戸建ては木造が多く、マンションなら鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が多いといった傾向が見られますが、実際には数多くの構造が存在しています。
今回は建築業界の基礎知識として、建物構造の種類とそれぞれの特徴について見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.建物構造とは
- 2.建物構造の主な種類と特徴
- 3.12種類の建物構造別をメリット・デメリットで比較
- 3.1.■W造(木造)のメリット・デメリット
- 3.2.■S造(軽量鉄骨造)のメリット・デメリット
- 3.3.■S造(重量鉄骨造)のメリット・デメリット
- 3.4.■RC造(鉄筋コンクリート造)のメリット・デメリット
- 3.5.■SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のメリット・デメリット
- 3.6.■ALC造(気泡コンクリート)のメリット・デメリット
- 3.7.■PC造(プレキャストコンクリート)のメリット・デメリット
- 3.8.■AL造(アルミ造)のメリット・デメリット
- 3.9.■CFT造(コンクリート充填鋼管構造)のメリット・デメリット
- 3.10.■CB造(コンクリートブロック造)のメリット・デメリット
- 3.11.■RS造のメリット・デメリット
- 3.12.■WRC造のメリット・デメリット
- 4.建物構造と用途地域の関係
- 5.この記事を監修した人
建物構造とは
建築物の建て方は、「木造軸組工法」のように構造と工法を組み合わせて表記するのが一般的です。このうち、建物構造とは建物を支える骨組みの材種を指し、工法とは骨組みをつくる方法を指します。
建物の骨組みは、一度つくられると簡単に変えることができないため、構造はその建物においてもっとも重要な部分といえます。そのため、建築に携わるうえでは、少なくとも構造の種類や性質は理解しておかなければならないといえるでしょう。
建物の骨組みには、一般的に木材や鉄骨、鉄筋、コンクリートなどの材料が用いられます。そのため、建物構造も大まかには木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造などに分けられます。
ただし、たとえば木造といっても、構造体のすべてが木でできていることを指すわけではありません。当然ながら、接合部などには金具などを用いることが多いです。そのため、完全に木材のみで建てられるケースはほとんどないので注意が必要です。
また、構造を鉄筋コンクリートや鉄骨でつくり、内装や外装などの目に見える部分を木材で仕上げる「木質化」などの建て方もあります。この場合、表面的には木造のようにも見えますが、構造は構造体の材料に応じて決められるため、鉄筋コンクリート造や鉄骨造といった形式で表示されることとなります。
建物構造の主な種類と特徴
ここではまず、建物構造の具体的な種類と簡単な特徴について、一覧表で確認しましょう。
構造 |
施工コスト |
主な特徴 |
主な用途 |
W造 (木造) |
安い |
〇通気性に優れる |
一戸建て、低層アパートなど |
S造 (軽量鉄骨造) |
やや安い |
〇通気性にやや優れる |
一戸建てや低層アパート、小型店舗など |
S造 (重量鉄骨造) |
普通 |
〇耐久性、耐震性に優れる |
マンション、商業施設、工場など |
RC造 (鉄筋コンクリート造) |
やや高い |
〇耐久性、耐震性、防音性に優れる |
マンション、団地、商業施設など |
SRC造 (鉄骨鉄筋コンクリート造) |
高い |
〇耐久性、耐震性、防音性に優れる |
タワーマンションや高層オフィスビルなど |
ALC造 (気泡コンクリート) |
普通 |
〇耐久性、断熱性、耐火性に優れる |
高層建築物や複合商業施設など |
PC造 (プレキャストコンクリート) |
高い |
〇耐久性、耐震性、防音性に優れる |
マンション、団地、商業施設など |
AL造 (アルミ造) |
普通 |
〇サビや塩害に強い |
海沿いの住宅など |
CFT造 (コンクリート充填鋼管構造) |
高い |
〇耐久性、耐震性、防音性に優れる |
タワーマンションやオフィスビル、複合商業施設など |
CB造 (コンクリートブロック造) |
やや安い |
〇独特の外観が実現できる |
デザイナーズ物件など |
RS造 |
やや高い |
建物の上下で異なる構造を採用する手法(RC造とS造など) |
デザイナーズ物件、2階建ての集客施設など |
WRC造 |
普通 |
〇耐久性、耐震性、防音性に優れる |
低層マンションや一戸建て住宅など |
12種類の建物構造別をメリット・デメリットで比較
ここからは、各建物構造の特徴について、メリット・デメリットの両面から詳しく掘り下げて見ていきましょう。
■W造(木造)のメリット・デメリット
W造(木造)とは、その名のとおり木材で構造部分をつくる建物のことを指します。木材には、湿度が高ければ水分を吸収し、湿度が低ければ水分を放出する自然素材特有の調湿効果があります。
高温多湿な日本の気候に合っているため、古くから建材として用いられており、現在でも新設住宅のほとんどで木造が採用されています。
メリット |
デメリット |
・施工コストが低い |
・遮音性、耐震性、耐火性が低い |
一方、耐用年数はやや短く、遮音性や耐震性が低いのはデメリットです。
■S造(軽量鉄骨造)のメリット・デメリット
軽量鉄骨造とは、厚さ6mm未満の鋼材で骨組みをつくる構造を指します。軽量で加工がしやすく、低コスト・短工期で住宅を建てられるのがメリットです。
メリット |
デメリット |
・低コストで安定した品質を実現できる |
・遮音性、耐震性、耐火性が低い |
一方、強度や防音性は後述する重量鉄骨造よりも低く、木造と同程度とされる
こともあります。
■S造(重量鉄骨造)のメリット・デメリット
重量鉄骨造とは、厚さ6mm以上の鋼材を用いた構造を指します。頑丈で大きな鋼材で構造を支えるため、柱が少なくて済み、広々とした空間を確保できるのが特徴です。そのため、間取りの自由度が高く、広いリビングを持つ一戸建てや工場、倉庫などで用いられるケースが多いです。
メリット |
デメリット |
・耐久性・耐震性が高い |
・重量がある |
一方、熱に弱い面やサビやすい面があるのがデメリットです。また、建材そのものの重量を支えるために、地盤の補強や改良の費用が高くなるケースもあります。
■RC造(鉄筋コンクリート造)のメリット・デメリット
RCとは補強されたコンクリートのことであり、RC造はその名のとおり鉄筋で補強したコンクリートを骨組みに用いる構造です。強度が高いため、大型マンションや団地などに多く用いられます。
メリット |
デメリット |
・耐久性・耐震性が高い |
・通気性が低くカビや結露が発生しやすい |
一方、鉄筋コンクリートは相当な重量により弱い地盤では採用しにくい側面があります。そのため、地盤の補強や改良の費用が高くなるケースがあります。また、構造軸組みの断面が太くなることから、梁や柱によって室内空間が圧迫されてしまうのもデメリットです。
■SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のメリット・デメリット
鉄骨造とRC造の長所を組み合わせた構造であり、高い強度を誇るため超高層ビルやタワーマンションなどに用いられます。RC造よりもさらに耐久性・耐震性に優れ、防音性も高いので高級マンションなどではメインで採用される構造です。また、柱や梁をコンパクトに抑えられるため、強度を保ちつつ広い居住空間を確保できるのも特徴です。
メリット |
デメリット |
・耐久性・耐震性が高い ・居住空間を広くとれる |
・通気性が低くカビや結露が発生しやすい ・施工コストが高い |
一方で工期が長期化しやすく、施工コストも高くなるのはデメリットです。また、熱伝導率の高い鉄を多く使うこともあり、鉄筋コンクリート造に比べるとやや外気の影響を受けやすく、冷暖房効率が下がりやすい面もあります。
■ALC造(気泡コンクリート)のメリット・デメリット
軽量鉄骨の一種であり、壁に高温で発泡加工させたコンクリートを用いた構造を指します。気泡コンクリートの重量はコンクリートの1/4ほどであり、軽くて扱いやすいことから東京都庁や東京スカイツリーといった高層建築物でも用いられています。
メリット |
デメリット |
・耐久性、耐火性、断熱性に優れる |
・防水加工が必須 |
ヨーロッパでは普及している一方、国内では3社しか扱えない特殊な素材となっており、施工には特殊なノウハウが必要です。
■PC造(プレキャストコンクリート)のメリット・デメリット
PC造は部材をあらかじめ工場で作成し、現場に運んでから組み立てる方式をとった構造です。基本的な特徴はRC造と同じですが、部材の多くを工場で製造するため、品質の均一化が実現されやすいのが利点です。
メリット |
デメリット |
・耐震性・耐火性が高い |
・通気性が低くカビや結露が発生しやすい |
■AL造(アルミ造)のメリット・デメリット
骨組みに鉄骨の1/3ほどの重量のアルミを用いた構造です。アルミは塩害やサビに強いため、海沿いの建物の施工には適しているとされます。また、素材が軽量なため加工がしやすく、耐震性も高くなるのが特徴です。
メリット |
デメリット |
・塩害に強い |
・断熱性・通気性が低い |
一方、鋼材に比べると強度が低いため、大型の建物には採用されません。また、断熱性や通気性は低いため、施工時に断熱材のグレードを上げるなどの工夫が求められます。
■CFT造(コンクリート充填鋼管構造)のメリット・デメリット
鋼管の内側にコンクリートを充填し、強度を高めた構造です。柱や梁を細くしても十分な耐久性、耐震性が得られることから、設計の自由度が高いのが特徴です。また、熱伝導率が低いコンクリートを使用することから、高い耐熱効果も期待できます。
メリット |
デメリット |
・耐久性・耐震性が高い |
・施工コストが高い |
しかし、高度な技術力が必要であることから、施工コストもかなりの高額になります。そのため、基本的には一般住宅ではなく、高層建築物や大型の商業施設などに用いられる構造です。
■CB造(コンクリートブロック造)のメリット・デメリット
基本的にはコンクリートを積み上げて組み立てる構造を指します。ただし、日本では単に積み上げるだけでは建造物としての許可が得られないため、内部に鉄筋を数本入れて強度を持たせます。レンガ調のおしゃれな外観に仕上がるため、デザイナーズ物件などに用いられることが多いです。
メリット |
デメリット |
・コストがやや低い |
・防湿性が低い |
構造上、増改築は難しいため、どちらかといえば小規模の物件や施設、倉庫などで用いられます。
■RS造のメリット・デメリット
建物の上下で異なる構造を採用する方法です。代表的な例としては、建物の下層階を重量のあるRC造でつくり、上部を比較的に軽い軽量鉄骨造にするといった方法が挙げられます。設計の自由度が高いのがメリットであり、デザイナーズ物件や商業ビルなどで用いられることが多いです。
メリット |
デメリット |
・設計の自由度が高い |
・中層階以上での防音性が気になりやすい |
■WRC造のメリット・デメリット
柱と梁を用いず、コンクリートで補強した壁で建物を支える構造です。通常の鉄筋コンクリート造に比べ施工コストをやや低く抑えながら、分厚い壁によって耐久性、耐震性、防音性などに優れた空間を確保できるのがメリットです。
メリット |
デメリット |
・防音性が高い |
・高い建物には向かない |
一方で柱・梁がない壁構造であるため、建物の適正階数は3階建て程度とされています。そのため、一戸建てや低層マンションに多く用いられます。また、あまり広い開口部はとれず、設計の自由度は低いのも特徴です。
建物構造と用途地域の関係
今回ご紹介したように、建物構造には数多くの種類があり、それぞれ特徴も異なります。最適な構造を選ぶためには、それぞれの長所と短所を正しく理解し、プランに合ったものを見極めることが大切です。
また、適した建物の構造は、「用途地域」によっても異なります。用途地域とは、都市計画の観点から、その地域がどのような目的・用途で利用されるのが望ましいかを指定された区域のことです。
区域は全部で13種類ありますが、「住居系」「商業系」「工業系」の3つに大別することができます。基本的に商業系地域では、人が多く集まる商業施設などが想定されているため、オフィスビルや高層マンションといった高い建物を建てやすい地域です。
一方、住居系区域は住宅地としての環境を重視する必要があるため、高さ制限などの制限を受けやすいのが特徴です。建てられる建物の高さが異なれば、当然ながら適した構造も異なってくるので、立地を踏まえた構造の見極めも重要といえるでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建物構造とは?
A:建物構造とは、その建物の骨組みが何で構成されているかを示す情報です。主に木材が用いられていれば木造、鉄材が用いられていれば鉄骨造のように分類され、建材に応じて細分化されます。
Q:建物構造にはどんな種類がある?
A:メジャーなものでは、木造や軽量鉄骨造、重量鉄骨造、RC造、SRC造などが挙げられます。そのほかにも、ALC造やPC造、AL造、CFT造、CB造、RS造、WRC造などの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
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この記事を監修した人
岩納 年成(一級建築士)
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。