【建築業の経営者向け】建設業界で競合に勝ち残るための3つの経営戦略と勝ち残る方法
VUCA(不確実性が高く、将来の予測が難しい状態)の時代といわれる現代では、ビジネス環境も目まぐるしく変化しており、多くの業界が先行き不透明な状況になっています。建設業界においてもさまざまな変動が起こっており、それぞれの企業が勝ち残るためには、より高度な戦略と柔軟性が求められます。
今回は、今の建設業界を取り巻く環境と、競合に勝ち残るための基本的な経営戦略について見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.建設業界の現状とは
- 1.1.人口減少に伴う新設住宅ニーズの減少
- 1.2.建設需要の見込み
- 2.建設業における経営上の課題
- 2.1.人手不足に関する課題
- 2.2.集客に関する課題
- 2.3.業務のデジタル化に関する課題
- 3.3つの経営戦略から競合他社に勝つ方法を考える
- 4.ブランディング活動につなげる取り組み
- 4.1.ブランディングとは
- 4.2.Webを通じたブランディング活動
- 5.この記事を監修した人
建設業界の現状とは
まずは、今の建設業界が置かれている状況について確認しておきましょう。
人口減少に伴う新設住宅ニーズの減少
建設業界を取り巻く重要な変化として、「人口減少」と「住宅着工件数の減少」の問題が挙げられます。日本では全体的に人口が減少傾向にあり、国全体として内需が低下している状況です。
なかでも、住宅業界においては、メインターゲットとなる生産年齢人口が大幅に少なくなっていることで、ニーズの減少は避けられない状況にあります。実際のところ、新設住宅着工件数は今後も減少していくと予測されているため、新設住宅に携わる企業では需要の低下を前提に戦略を考えなければなりません。
建設需要の見込み
一方で、建設業界全体を見れば、需要は今後も安定して存在していくと考えられている面もあります。老朽化対策や災害対策の必要性、国や自治体による建築プロジェクトの実現などにより、建設需要そのものはそれほど大きく低下しないという見方です。
また、住宅業界においても、高齢化に伴うバリアフリー化の普及などによって、リフォーム市場は今後もわずかながら伸びていくと考えられています。
建設業における経営上の課題
続いて、建設業において個々の企業が抱えやすい経営上の課題を3つに分けて見ていきましょう。
人手不足に関する課題
少子高齢化により、国内ではさまざまな業界が人手不足の問題を抱えています。そのうえで、建設業では業界に対するイメージなどが影響し、長らく就業者数の減少傾向が続いていました。ここ数年ではやや下げ止まりの傾向が見られるものの、依然として担い手不足を実感する企業は多く存在します。また、より大きな課題となっているのが、就業者の高齢化です。
国土交通省の資料(※)によれば、建設業就業者のうち55歳以上の割合は3割を超えており、29歳以下は1割程度にとどまります。特に建設技能者は高齢化の傾向が顕著に見られ、若手世代への技術継承は業界全体の課題となっています。
※最近の建設業を巡る状況について【報告】(令和5年4月18日)
集客に関する課題
デジタル技術の進歩に伴い、集客の方法や経路は多様化・複雑化しています。従来と比べてさまざまな可能性が生まれている一方で、競合他社との競争に勝つためには、アナログ・デジタルの両方の手法に対応しなければなりません。中小の建設会社では、マーケティングに費やせるコストや人的リソースが限られてしまうため、競争への対応に遅れやすいのが大きな課題です。
業務のデジタル化に関する課題
IT技術の進化によって、集客から事務処理まで、さまざまな業務のデジタル化が可能になりました。しかし、建設業界は長らく紙を主体とした業務管理を行ってきたことから、全体的に対応に出遅れている傾向があります。
また、就業者の高齢化も、デジタル化が進まない原因の一つとされています。紙ベースによる進捗確認や図面の管理などは業務負担が大きく、デジタル化に遅れればそれだけでも競争で不利になるでしょう。業務のデジタル化やITツールの活用は、多くの建設業者にとって喫緊の課題といえます。
3つの経営戦略から競合他社に勝つ方法を考える
経営戦略の基本は、どの業界においてもそれほど大きく変わりません。まずは土台となる基礎知識をしっかりと把握して、そこから自社に合った戦略を固めていきましょう。
ここでは、経営戦略の3つの基本について解説します。
粗利の改善
企業経営においては、安定的かつ継続的な収益の獲得が重要な課題となります。そのために避けて通れないのが「粗利の改善」です。一般的に、建設業では小売業やサービス業と比べて売り上げが大きくなる性質があります。一方で、原価や固定費などの比率も高くなりやすく、意識的な管理を行わなければ十分な粗利を維持することができません。
粗利を最大化するには、「売り上げの最大化」と「仕入れや外注費用といった原価の最小化」という両軸での取り組みが必要となります。建設業における粗利の平均は20%程度とされていますが、人件費の高騰を踏まえるとさらなる改善が求められるでしょう。
差別化戦略
安定した受注を獲得するためには、適切な差別化戦略の実行が重要です。お客さまのニーズを把握したうえで、市場動向や競合他社の動きなども分析し、自社の強みを打ち出す必要があります。まずは業界における自社の立ち位置や役割を客観的に分析し、適切なポジションを探ることからスタートしましょう。
集中戦略
中小企業においては、限られた経営資源を最大限に活用するための集中戦略も重要なポイントとなります。自社の人的リソースやコスト、ノウハウを用いて、どの市場でシェアを取っていくのかを十分に精査しましょう。一口に建設業といっても幅広い市場が存在するため、事業を展開するマーケットやターゲットを明確にし、集中的に力を注いでいくことが大切です。
ブランディング活動につなげる取り組み
お客さまから自社を選んでもらうには、ブランディング活動が重要となります。ここでは、建設業におけるブランディングの重要性ややり方について見ていきましょう。
ブランディングとは
ブランディングとは、自社のサービスや商品について、ターゲットとなるユーザーに対して理想的なイメージを形成することを指します。単に自社のことを知ってもらうだけではなく、明確なターゲット像を描き出してアプローチするのが特徴です。
メインの取扱いサービスによっても異なりますが、中小の建設業の場合は、基本的にある程度のユーザー層を想定した状態で営業を行います。たとえば、住宅会社であれば単に「家を持ちたい人」ではなく、「自社の営業エリアで家を建てたい人」がターゲット層となります。ブランディング活動にはコストがかかるため、きちんとターゲット設定を行い、費用対効果を高めることが大切です。
Webを通じたブランディング活動
ブランディングにはさまざまな手法がありますが、Webを通じた施策をメインに取り組むのが基本です。代表的な手法としては、自社でWebサイトなどのオウンドメディアを運営する方法が挙げられます。多くのお客さまがインターネットを通じて情報収集を行う現代では、自社サイトの充実度が企業の信頼性を左右するケースも珍しくありません。自社の企業価値を高めるためにも、まずはオウンドメディアのクオリティを向上させるのが王道といえます。
ただし、ブランディング活動は効果が表れるまでに時間がかかるため、ある程度の中長期的なスタンスで取り組む必要があります。オウンドメディアの運営には人手が必要になるので、リソースに十分な余裕を持たせるためにも、基本業務の効率化が重要なカギとなるでしょう。
なお、戦略やブランディングを考える際には、フレームワークを活用する方法もあります。国が推進しているシートもありますので、まず自社の把握から始めたい方はこちらも検討してみましょう。
- 首相官邸「経営デザインシート」
- 経済産業省「ローカルベンチマーク」
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設業界を取り巻く現状は?
A:人口の減少に伴い、全体的な新設住宅のニーズも低下していくと考えられています。一方で、老朽化対策や災害対策、国・自治体のプロジェクトなどを踏まえると、建築業界全体としてはそれほど需要が低下しないと見られている面もあります。
Q:建設業の経営戦略で重要なポイントとは?
A:まずは売り上げの増加と原価の最小化による粗利の改善が重要です。そのうえで、競合との差別化戦略、限られたコストを効果的に投下する集中戦略の2つを軸に経営戦略を考えていくのがポイントです。
この記事を監修した人
西 優(中小企業診断士/山月記経営研究所代表)
東京大学大学院 新領域創成科学研究科卒。2019年中小企業診断士登録。
上場企業や中小企業での勤務や起業の経験を活かし、様々なステージの企業の支援を行う。
趣味は反物から着物を仕立てて着ることと100kmマラソン。自己ベストは11時間55分。
マラソンのように粘り強い伴走支援で、経営者と共に企業の課題を解決に導く。
千葉県中小企業診断士協会では理事を務め、協会の運営の一端を担う。
また、同協会の生成AI研究会では幹事を担当。
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