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工務店の利益率を上げるには?上がらない要因から対策までを解説

工務店の利益率を上げるには?上がらない要因から対策までを解説

工務店を経営するうえでは、単に規模や売り上げの増加だけを目指すのではなく、「利益率」にも目を向けることが大切です。利益率が高ければ、経営が安定するとともに人材採用やマーケティングにもより力を入れやすくなり、経営戦略の幅が広がります。

今回は工務店の利益率を上げるポイントはどこにあるのか、利益率が上がらない要因と対策について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.工務店における利益率の目安とは
    1. 1.1.売上高総利益率とは
    2. 1.2.売上原価とは
    3. 1.3.工務店における平均利益率は25%
  2. 2.利益率が重視される理由
  3. 3.利益率が上がらない要因
    1. 3.1.【1】販売価格が低い
    2. 3.2.【2】仕入れコストが高い
    3. 3.3.【3】施工ミスが多い
  4. 4.利益率をアップために実行すべき対策
    1. 4.1.【1】販売管理を改善する
    2. 4.2.【2】仕入れ管理を見直す
    3. 4.3.【3】歩留まりを改善する
  5. 5.利益率の目標値を定め、定期的に見直そう
  6. 6.この記事を監修した人

工務店における利益率の目安とは

利益率というと、売り上げに対する利益の割合を指しているという点まではイメージしやすいでしょう。しかし、具体的にどのような利益を指すかによって、指標の意味は大きく異なります。

ここではまず、利益率の基本的な定義と工務店における利益率の割合について見ていきましょう。

売上高総利益率とは

利益率とは、売り上げに対する特定の利益の割合を示す数値です。どの利益を対象とするかによって、売上高総利益率や売上高営業利益率、売上高経常利益率などのさまざまな種類がありますが、ここでは基本となる「売上高総利益率」について見ていきましょう。

売上高総利益率とは、「売り上げに対する粗利益(売上総利益)の割合」を示す数値です。売上総利益とは、「売上高から売上原価を差し引いたもの」を指します。利益率が高いほど、経営状況が安定していると判断できるため、財務・会計上、特に重要性の高い指標とされます。

売上原価とは

利益率を割り出すには、売上原価についても正しく理解しておく必要があります。建築業における売上原価には、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つが含まれます。材料費は建設工事に必要な材料の仕入れコスト、労務費は建設工事を行う職人や技術者の人件費、外注費は外部の企業や職人に委託した際の費用です。また、経費には、工具を動かすための光熱費や現場までの交通費が含まれます。

このときに注意しなければならないのは、「営業職や事務職の人件費は労務費に含まれない」「事務所の光熱費や営業の交通費は経費に含まれない」という点です。これらの費用は、「販売費および一般管理費」(販管費)として、「営業利益」を割り出す際に差し引くこととなっているので混同しないように注意しましょう。

工務店における平均利益率は25%

工務店の平均的な利益率(売上高総利益率)は、25%程度とされています。大手ハウスメーカーなどでは35%前後、中小の工務店では20%前後とされていますが、20%を下回ると企業としての利益を出すのは難しい状況であると判断できます。

なぜなら、実際の利益を割り出す際には、ここからさらに販管費を差し引く必要があるためです。利益率の段階である程度のゆとりがなければ、広告宣伝費や事務所の家賃、営業・事務の人件費を賄うだけで手いっぱいといえるでしょう。

利益率が重視される理由

売上高総利益率が重視されるのは、自社の経営状況を直接的に理解できる指標となるためです。利益率の計算は、売上高と売上原価のみのシンプルなデータで行えるため、数字が思わしくない場合に問題の所在を明らかにしやすいのです。

また、利益率が分かることで、人件費や広告費などにいくらお金を使うかといった判断ができるようになります。利益率が低ければ、集客のためにお金をかけられず、ますます売り上げが減るといった悪循環に陥る可能性があります。

そのため、しっかりと目標を定めて、十分な利益を出していくことが大切です。

利益率が上がらない要因

売上高総利益率が上がらない要因には、大きく分けて3つの理由が考えられます。ここでは、それぞれの原因について見ていきましょう。

【1】販売価格が低い

1つ目の要因としては、販売価格が低いという点が挙げられます。売上高を優先するあまり、一件当たりの価格を下げてしまうと、同じ仕入れコストでも原価率が高くなります。表向きの売り上げ目標を達成できていても、利益が十分に上がらないという場合は、価格の低さが原因であるケースも多いです。また、必要以上に値下げを行えば、他社との価格競争に巻き込まれるリスクも上がるので注意が必要です。

【2】仕入れコストが高い

2つ目に考えられる要因は、仕入れコストの高さです。建材の仕入れ価格が高ければ、それだけ売上原価も大きくなるため、どうしても利益率が下がってしまいます。

【3】施工ミスが多い

利益率が下がる3つ目の要因として、施工ミスの多さが挙げられます。施工ミスが起これば、仕入れた材料と職人の工賃が無駄になってしまうため、売上原価の増幅につながります。

利益率をアップために実行すべき対策

売上高総利益率を上げるためには、基本的に「売上高を向上させる」「売上原価を下げる」という2つの観点で戦略を考える必要があります。ここでは、具体的な改善策を3つご紹介します。

【1】販売管理を改善する

まずは、販売価格を上げて売り上げの向上を目指すのが、利益率を改善する近道となります。サービスや企業努力によって付加価値を持たせ、同じ原価でも高い価格で取引できるように戦略を切り替えることが大切です。

また、一件ごとの利益率ではなく、事業全体における利益率に目を向けることも重要となります。場合によっては、利益率の低い工事を引き受けなければならない場面もあるため、「利益率の低い案件や利益率の高い案件で補う」「値下げ価格の限度を定める」といったルールを決めておくとよいでしょう。

【2】仕入れ管理を見直す

仕入れルートを増やし、価格の比較や交渉が行えるように努めることも重要です。仕入れの原価が下がれば、同じ売上高でも利益率の向上が図れるため、仕入れ管理に力を入れるのも大切な戦略といえます。

また、「一括購入による値下げ交渉」や「運送費などの削減」の可能性にも目を向けてみるとよいでしょう。ただし、必要以上の仕入れは在庫の増大につながるため、コストダウンとのバランスを十分に考慮することも重要です。

【3】歩留まりを改善する

歩留まりとは、投入した原料に対する完成品の割合のことです。工務店でいえば、材料に対して有効利用できる部分の割合を指します。建築工事ではあらかじめ建材を適したサイズにカットしますが、このときに材料ロスが多くなると、売上原価の増加につながってしまいます。細かなポイントではありますが、仕入れた材料の活用方法を見直し、ロスをできるだけ減らすことも利益率の改善につながる重要な施策です。

利益率の目標値を定め、定期的に見直そう

利益率を改善させるためには、やみくもに施策を打ち出すのではなく、数字に裏打ちされた戦略を立てることが大切です。単に目先の利益率のみを追求すれば、「いきすぎた価格の上昇による客離れ」や「仕入れコストの削減による取引先との関係悪化」などを招くおそれがあります。

そのため、まずは自社の実情を見直し、事業規模や現状に応じた目標設定をすることが重要です。目標設定については、業界平均のデータなども参考にしながら、年間、月間のゴールをそれぞれ定めていきましょう。

そのうえで、個別の現場ごとに利益率の設定を行うことも大切です。一件ごとの利益率にこだわれば、自然と価格の見直しや原価の削減に目が向き、従業員や管理者の意識改革にもつながっていくでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:売上高総利益率とは?
A:
利益率にはさまざまな種類がありますが、売上高総利益率は「売り上げに対する粗利益(売上総利益)の割合」を指します。売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益のことです。

Q:建設業における売上原価とは?
A:
建設業における売上原価には、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つが含まれます。ここには、事務や営業の人件費、事務所の運営費などは含まれないので誤解がないように注意しましょう。

Q:工務店の利益率を改善するには?
A:
工務店の売上高総利益率を改善するには、売り上げの増加と売上原価の削減の両軸に目を向ける必要があります。それには、販売管理の見直し、仕入れ管理の見直し、歩留まりの改善などが重要な対策となります。

この記事を監修した人

西 優(中小企業診断士/山月記経営研究所代表)

東京大学大学院 新領域創成科学研究科卒。2019年中小企業診断士登録。
上場企業や中小企業での勤務や起業の経験を活かし、様々なステージの企業の支援を行う。
趣味は反物から着物を仕立てて着ることと100kmマラソン。自己ベストは11時間55分。
マラソンのように粘り強い伴走支援で、経営者と共に企業の課題を解決に導く。
千葉県中小企業診断士協会では理事を務め、協会の運営の一端を担う。
また、同協会の生成AI研究会では幹事を担当。


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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