建築確認申請とは?申請に必要な書類とよくあるトラブルの対処法を解説!
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建築確認申請とは?
建築確認申請とは、新築工事や大規模な増改築工事等を着手する前に、確認検査機関もしくは特定行政庁に必要書類を添えて申請し、建築基準法や関連する条例に適合しているか確認を受ける手続きをいいます。
この制度は、建築基準法第6条および第6条の2に基づいて定められており、建築物が安全性、耐久性、さらには防火性や衛生性など、法令で定められた基準を満たしていることを確保するために実施されます。また、違反建築物を排除することにより、その建物の利用者および周辺に住む人の安全や生命を守ることに寄与しています。
確認申請は、主に以下のような建築工事が対象となります。
- 新築工事
- 床面積の合計が10m2を超える増改築や用途変更
- 特定建築物に該当する建築物の変更
なお、防火・準防火地域の場合は床面積計10m2以内の増築であっても申請が必要です。
申請を怠った場合、工事の中断や撤去命令といった法的措置が取られる可能性があります。また、建築確認済証が交付されていない建物については、売買や賃貸などの取引に支障を来すこともあります。さらに、近隣住民からの苦情やトラブルの原因となる場合もあるため、申請を確実に行うことが求められます。
建築確認申請後の間取りの変更や、仕様の変更はできず、申請と差異が生じる場合は、軽微な場合であっても必ず計画変更の申請が必要になることに注意が必要です。
(参考:e-Gov法令検索『建築基準法第6条、第6条の2』)
申請に必要な書類
建築確認申請を行う際には、正確かつ適切な書類をそろえる必要があります。不備のある書類や情報が不足している場合、審査がスムーズに進まず、場合によっては申請が拒否されることもあります。以下は主な必要書類の一覧です。
1.審査受付表 |
申請内容を確認するための基本情報を記載します。 |
2.確認申請書 |
建築物の概要や設計者、工事施工者などを明記した書類です。 |
3.建築計画概要書 |
建築物の配置、用途、面積などの基本情報を記載します。 |
4.建築工事届 |
建築工事の開始時期や工事内容を通知するための書類です。 |
5.各種図面 |
配置図、平面図、立面図、断面図、構造図などです。 |
6.その他必要書類 |
地域や物件の特性によって異なる書類 |
特に図面は、建築物が建築基準法や条例の基準を満たしているかを確認するために重要な役割を果たします。そのため、正確かつ詳細に作成することが求められます。
また、地域によっては追加の書類が必要となる場合があります。たとえば、景観条例が厳しい地域では、建物の外観や高さに関する詳細な資料が求められることもあります。これらの地域特有の要件を把握し、適切に対応することが重要です。
(参考:e-Gov法令検索『建築基準法施行規則第1条の3ないし第3条の6』)
建築基準法違反となる建築物
建築基準法違反に該当する建築物は、大きく以下の2つの項目に分類されます。
1.法令上求められる基準に違反している建築物
・構造基準の違反:耐震性や耐火性に関する基準を満たしていない建築物が該当します。特に、耐震性能の不足は、地震時に建物が倒壊する危険性を高め、居住者や周囲の人々に深刻な影響を及ぼします。
・用途制限の違反:都市計画区域内で用途地域の規制に反する建築物です。たとえば、住宅地に工業施設を建設する場合がこれに該当します。このような違反は、地域の環境や住民の生活に悪影響を与えるため、厳しく規制されています。
・防火性能の不足:防火地域や準防火地域内で、防火構造や防火設備を適切に設置していない建築物も違反対象となります。このような建物は、火災発生時に周囲へ被害が拡大するリスクを高めます。
2.手続に関する規制への違反がある建築物
・未確認での着工:建築確認申請を行わずに着工することは、手続き上の重大な違反となります。必要な確認や許可を受けずに工事を進めた場合、行政から是正命令が下される可能性があります。
・不適切な書類の提出:申請書類や設計図面に不備がある場合も違反に該当します。不正確な情報を含む書類や必要書類が不足している場合、審査を通過しないだけでなく、罰則の対象となる場合もあります。
・虚偽申請:意図的に虚偽の内容を記載して申請することは、建築基準法違反の中でも特に重大とされる行為です。これが発覚した場合、行政指導や罰則が科される可能性があります。
違反が発覚した場合、行政から是正命令が下されることがあります。これには、建物の改修や使用停止命令が含まれる場合があり、違反の程度によっては建物の撤去を命じられることもあります。また、違反を放置すると、罰則が科せられるリスクがあります。法令を遵守し、適切な手続きを行うことが、建築物の安全性と価値を守るうえで不可欠です。
(参考:e-Gov法令検索『建築基準法第6条、第6条の2、第7条等』)
建築確認申請が通らない場合の対処法
建築確認申請が通らない場合、その主な原因として不適合点や書類の不備が挙げられます。このような状況に陥った場合には、以下の手順を踏むことで解決を図ることができます。
指摘事項の確認 |
確認検査機関や行政庁からの指摘内容を詳細に確認し、どの基準に適合していないかを明確にします。 |
設計の見直し |
建築設計に問題がある場合、設計者と協議して必要な変更を加えます。 |
追加書類の提出 |
不足している書類や資料を整え、再度提出します。 |
専門家への相談 |
複雑なケースでは、建築士や行政書士などの専門家に相談することで、適切な対応策を見つけやすくなります。 |
再申請の実施 |
修正後の書類を準備し、再度建築確認申請を行います。 |
不適合点の見直しにあたっては、設計図面や工事計画書を詳細に確認し、基準に合致するかどうかを慎重に判断することが求められます。また、建築士や確認検査機関との密接な連携が重要です。これにより、必要な修正作業を効率的に進めることができます。
さらに、指摘を受けた項目が専門的で理解が難しい場合には、法令に精通した弁護士や建築士、コンサルタント等の専門家の助けを借りることも有効です。こうした専門家のサポートを受けることで、問題解決までの時間を短縮し、スムーズな再申請が可能となります。
再申請においては、指摘内容を確実に反映した修正案を提出することが求められます。たとえば、耐震基準に適合する設計変更を行った場合、その根拠となる資料や計算書を添付することで、審査の通過率が大幅に向上するでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建築確認申請をしないとどうなりますか?
A:建築確認申請を行わずに工事を着手すると、行政から是正命令を受ける可能性があります。最悪の場合、工事の中断や撤去命令が下されることもあります。また、建築確認済証がない建物は、売買や賃貸などの取引で支障をきたすことがあります。さらに、近隣住民とのトラブルの原因にもなりかねないため、事前に適切な手続きを行うことが重要です。確認申請は法令遵守の基本であり、建築物の安全性や資産価値を守るうえで欠かせないものです。
Q:建築確認申請が通らなかった場合、どう対処すれば良いですか?
A:まず、確認検査機関や行政庁からの指摘事項を正確に把握し、どの基準に適合していないかを明確にします。その後、設計者と協議し、設計や書類に必要な修正を加えます。不足している資料があれば追加提出を行いましょう。複雑なケースでは建築士や弁護士、行政書士のような専門家の助けを借りることが効果的です。適切な対応と再申請を行うことで、多くのケースでは問題を解決することができます。
執筆者
弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)
単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。