建築・施工管理

建設業許可は個人事業主でも引き継げる?3つの方法とその流れについて解説!

建設業許可は個人事業主でも引き継げる?3つの方法とその流れについて解説!

目次[非表示]

  1. 1.建設業許可の引継ぎとは?
  2. 2.個人事業主が建設業許可を引き継ぐための基礎知識
  3. 3.建設業許可の3つの引き継ぎ方法
    1. 3.1.①法人化
    2. 3.2.②事業譲渡
    3. 3.3.③相続
  4. 4.共通の要件と注意点
    1. 4.1.役所への事前相談をしておくこと
    2. 4.2.認可が必要
    3. 4.3.後継者の適格性
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

建設業許可の引継ぎとは?

建設業許可の引継ぎとは、現在の許可保有者がその許可を他者に移転または承継するプロセスを指します。具体的には、個人事業主が法人化する際や、事業譲渡、相続といった事業承継の一環として行われます。特に事業譲渡や相続の場合、建設業許可の許可番号をそのまま引き継ぐことを指します。

建設業界では、個人事業主として活動を行っている方も多く存在します。そうした中で、建設業許可を他の個人や法人に引き継ぐニーズが増えてきました。特に、令和2年の建設業法の法改正により事業承継が正式に認められるようになったことが、大きな転換点となっています。

個人事業主が建設業許可を引き継ぐための基礎知識

建設業法の法改正前までは、建設業者が事業の譲渡、会社の合併、分割を行った場合、譲渡、合併後又は分割後の会社は新たに建設業許可を取り直すことが必要でした。その結果、新しい許可が下りるまでの間に建設業を営むことができない空白期間が生じ、不利益が生じていました。

しかし、近年の制度変更により、事業承継の規定が整備され、事前の認可を受けることで、建設業の許可を承継することが可能になりました。

具体的には、親族間での事業承継や、個人事業主から法人化を行う際の許可の引き継ぎが想定されています。この仕組みにより、長年培った経営資源や信用を継続して活用することが可能になり、建設業界における事業の持続性が向上しました。

また、建設業は地域密着型の事業が多いため、許可を適切に引き継ぐことで地域の顧客や取引先との関係を維持することができます。これにより、事業承継の際に発生しがちな混乱や業務の停滞を最小限に抑えることができます。

建設業許可の3つの引き継ぎ方法

建設業許可を引き継ぐには、以下の3つの方法があります。それぞれの特徴や注意点を理解することで、最適な方法を選択することが重要です。

①法人化

個人事業主が建設業許可を法人に引き継ぐ場合、もっとも一般的なのが法人化の手続きです。具体的には、現在の個人事業を法人に転換し、その法人が許可を取得する形になります。

法改正前からあった方法ですが、今回の改正により、個人で取得した建設業許可を法人に引き継げるようになりました。したがって、建設業許可の許可番号もそのまま引き継ぐことが可能です。
法人化により、法人の信用力向上により、大規模な案件の受注が容易になることが期待されます

また、社会保険への加入が義務化されるため、従業員の福利厚生の向上にもつながります。
具体的には、以下のような流れとなります。

(1)法人を設立する。
(2)個人事業主と法人が事業譲渡契約をする。
(3)事業譲渡契約書を行政庁に持って事前相談を行う。
(4)行政庁に認可申請を行い、認可を受ける。


許可の有効期間は事業譲渡日の翌日から起算して5年間となります。引き続き建設業を営む場合は、更新手続きが必要となります。

②事業譲渡

事業譲渡は、個人事業の一部または全体を第三者に売却し、その際に建設業許可も引き継ぐ形態です。

これにより、空白期間なく譲渡先の建設業者が、譲渡元の個人事業主が許可を受けていた建設業を営業することが可能となりました。また、経営資源や顧客基盤をそのまま活用可能となり、迅速な移行が実現できるとともに、譲渡価格を通じて事業主が資金を確保できます。

具体的には、以下のような流れとなります。

(1)事前に事業譲渡等について認可を申請
(2)許可行政庁において、申請の内容について審査
(3)認可について通知(不認可の場合はその旨を通知)
(4)事業譲渡等の日に建設業の許可についても承継


建設業について許可を受けている業種について、異業種間の承継は可能ですが、一部のみの承継は不可です。

また、同一業種の場合、たとえば一般建設業の許可を受けている者が、その許可に係る建設業のいずれか同一種類の建設業に係る特定建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐようなケースは、この制度による承継の対象外なので、譲渡先が当該一般の業種の許可を事前に廃業することで承継可能となります。

許可の有効期間については、事業譲渡の日に、事業譲渡等の日に承継する許可と元々持っている許可の両方の有効期間が更新され、事業譲渡日の翌日から起算して5年間となります。引き続き建設業を営む場合は、更新手続きが必要となります。

③相続

相続によって親から子へと事業を引き継ぐ場合においても、建設業許可も承継させることが可能です。

家族間でのスムーズな承継が可能であること、長期的な事業継続が可能であり、既存の人間関係や経営スタイルを維持しやすいことがメリットとして挙げられます。
具体的には、以下のような流れとなります。

(1)建設業者の死亡後30日以内に相続の認可を申請
(2)許可行政庁において、申請の内容について審査
(3)認可について通知(不認可の場合はその旨を通知)


​​​​​​​認可の申請をした場合、認可の申請に対する処分があるまでは、相続人は建設業の許可を受けたものとして扱われることになります。

譲渡・合併・分割の許可の条件付与の規定、有効期間の規定は相続についても準用されます。

(参考:国土交通省『3.(2)建設業者の地位の承継について (建設業法第17条の2・3)』)
(参考:『関東地方整備局資料

共通の要件と注意点

いずれの方法を選択する場合でも、建設業許可を引き継ぐ際には共通の要件や注意点があります。

役所への事前相談をしておくこと

建設業許可を引き継ぐには、事前に役所へ相談を行い、具体的な手続きや必要書類について確認することが不可欠です。特に、申請に必要な期間を正確に把握することが、手続きの円滑化につながります。

認可が必要

引き継ぎにあたっては、後継者が許可のすべての要件を満たしていることが前提となります。たとえば、経営業務管理責任者や専任技術者の資格・経験が適合しているかの審査が行われます。行政庁の認可については、元々の許可に付されていた条件の変更や新たな条件の付与が可能です。

後継者の適格性

建設業許可の承継には、後継者の方が建設業許可の要件を満たしている必要があります。特に、経営業務の管理責任者等を設置することの要件と、専任技術者を設置することの人的要件に注意が必要です。

(参考:国土交通省『3.(2)建設業者の地位の承継について (建設業法第17条の2・3)』)
(参考:『関東地方整備局資料』)


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:個人事業主でも建設業許可を引き継ぐことは可能ですか?
A:
はい、可能です。令和2年の法改正により、一定の条件を満たす場合には、建設業許可を引き継ぐことが認められています。たとえば、個人事業主から法人化する際や親族間の事業承継において、建設業許可の承継が可能です。ただし、後継者が許可要件を満たす必要があります。これには、経営管理者や専任技術者の資格条件などが含まれるため、事前の準備と役所への相談が重要です。

Q: 建設業許可の引き継ぎで注意すべき点は何ですか?
A:
引き継ぎの際には、後継者が建設業許可の要件を満たしているかが重要です。要件には、経営業務管理責任者の経験や専任技術者の資格が含まれます。また事前に役所への相談を行い、必要書類や手続き期間を確認することが不可欠です。さらに、法人化や相続では、費用や税金に関する財務計画も必要です。



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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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