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新ZEH「GX ZEH」とは? 押さえるポイントや適合基準など解説

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2027年4月以降の一戸建て住宅で適用予定とされる新ZEH「GX ZEH」は、従来のZEHに比べて、断熱性能も設備要件も一段とハードルが上がります。

住宅会社・工務店にとっては、「GX ZEHの適合要件」はもちろん、現場で混同されやすい「GX ZEHとZE Hの違い」まで含めて早めに整理しておくことが、提案の精度を左右するポイントになってきます。

本記事では、GX ZEHの全体像を押さえたうえで、主な適合基準と従来のZEHからの変更点を分かりやすくまとめます。

ZEHの新しい定義「GX ZEH」とは?

GX ZEHは、経済産業省が2025年9月に公表した新しいZEHの定義で、2027年4月以降に建てられる一戸建て住宅に適用される予定の省エネ基準です。

高断熱と高効率設備、太陽光発電などで一次エネルギー収支ゼロを目指す考え方は従来のZEHと共通ですが、断熱等級6などより高い一次エネルギー削減率やGX志向型住宅並みの性能を求める点が特徴です。

主なGX ZEHのシリーズは以下のとおりです。

  • 標準グレードの「GX ZEH」
  • 上位グレードの「GX ZEH+」
  • GX ZEHに近い水準の「Nearly GX ZEH」
  • 集合住宅向けの「GX ZEH-M」

これらの区分によって市場全体の性能底上げを図り、「2030年に新築はZEH水準が当たり前」という政策目標の達成を支える中核基準となります。

「GX ZEH」とこれまでの「ZEH」の主な違い

GX ZEHは、従来のZEHと同じく「断熱+省エネ設備+創エネ」でエネルギー収支ゼロを目指しながら、性能水準と設備要件を一段引き上げた新しい基準です。

ここでは、これまでのZEHと比べて何が変わるのかを、主な4つのポイントに分けて解説します。

断熱性能水準が「等級5」から「等級6」へ変更

最も大きな違いの一つが、前提となる断熱性能の水準です。従来のZEHは「断熱等級5以上」であればよいとされていましたが、GX ZEHでは「断熱等級6」が必須となり、外皮性能のハードルが明確に引き上げられました。

断熱等級6は、暖冷房に必要なエネルギーをより小さく抑えられる水準であり、断熱材の厚みや窓性能、開口部の取り方まで含めた計画がこれまで以上に重要になります。

一次エネルギー削減率・創エネ要件がより厳しい水準に

GX ZEHでは、一次エネルギー消費量の削減率が見直され、省エネ・創エネの両面で従来より高い性能が求められるようになっています。

主な水準を整理すると、以下のとおりです。

区分

再エネ除く一次エネルギー消費量削減率

再エネを含む一次エネルギー消費量削減率

説明

従来ZEH

20%以上

(※ここでは規定を省略)

従来基準。GX ZEHより緩やかな水準

GX ZEH

35%以上

100〜115%未満

省エネ・創エネの両面で性能を強化した基準

GX ZEH+

35%以上(GX ZEHと同等以上)

115%以上

GX ZEHより創エネ量が多い上位グレード

再生可能エネルギーを除いた削減率は、従来の「20%以上」から「35%以上」へと大きく引き上げられました。

さらに、太陽光発電などを含めた削減率についても、GX ZEHでは「100〜115%未満」、GX ZEH+では「115%以上」と新たな基準が設定されています。

そのため今後は、高断熱・高効率設備による省エネ性能の底上げに加え、十分な発電量を確保できる創エネ計画が、これまで以上に重視される流れといえるでしょう。

太陽光+HEMS+蓄電池のセット導入が前提条件に

従来のZEHでも太陽光発電の設置は推奨されていましたが、GX ZEHでは導入すべき設備の組み合わせが、より明確に示される点が特徴です。

太陽光発電に加え、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)や定置用蓄電池の導入が要件化され、発電した電気を「見える化」しながら、自家消費やピークカットまで含めた運用を行うことが前提となりました。

さらに、停電時でも一定時間は家庭内の電力をまかなえるようにするなど、レジリエンスの向上も重要な目的の一つです。住宅を単なる住まいではなく、「小さなエネルギーインフラ」として捉える考え方が、これまで以上に強まっているといえるでしょう。

GX志向型住宅の性能水準が新しいZEH基準として位置づけ直された

GX ZEHの性能イメージをつかむうえでは、「GX志向型住宅」との関係を整理しておくと分かりやすくなります。子育てエコホーム支援事業(旧・子育てグリーン住宅支援事業)などで先行して示されていたGX志向型住宅の基準が、そのまま新しいZEHであるGX ZEHの性能水準として再定義された、という構図に近いといえるでしょう。

今後は、従来のZEHや「ZEH水準住宅」とGX ZEHとの違いが、補助金額、断熱性能、創エネ設備の要件といった点で、よりはっきりと分かれていきます。新築計画や商品企画を進める際には、どの性能水準を目指すのかを早い段階で整理しておくことが重要になります。

「GX ZEH」の主な適合基準

GX ZEHに適合するためには、断熱性能だけでなく、一次エネルギー消費量や再生可能エネルギー設備、エネルギーマネジメントまでを含めた総合的な基準を満たす必要があります。

ここでは、その主な適合基準について紹介します。

外皮性能(断熱等級・UA値)の基準

GX ZEHの外皮性能は、一戸建て住宅で「断熱等級6相当」が前提となります。地域区分ごとにUA値の上限が定められ、北海道など寒冷地と温暖地で求められる数値が異なります。

従来のZEHよりも外壁・屋根・床の断熱強化や高性能サッシの採用が不可欠になり、設計段階から外皮仕様を慎重に選択することが重要です。

一次エネルギー消費量(再エネ除く)の基準

一次エネルギー消費量については、冷暖房・給湯・換気・照明を対象に、再エネを除いた削減率35%以上という基準が適用されます。設計値の評価には、基準一次エネルギー消費量に対する比率を示すBEI(Building Energy Index)を用いるのが一般的で、GX ZEHではこのBEIを0.65以下に抑えることが目安になります。

高効率エアコンや給湯器、LED照明などの採用が欠かせません。

再生可能エネルギー・自家消費の基準

再生可能エネルギーについては、太陽光発電などの導入が必須とされています。再エネによる自家発電を含めた一次エネルギー消費量の削減率は、GX ZEHで100〜115%未満、GX ZEH+で115%以上という水準が目標です。

積雪地域や寒冷地など、一部の地域では日射条件などを踏まえた緩和措置も用意されており、地域特性に応じて計画することが求められます。

エネルギーマネジメント・蓄電・その他要件

設備面では、HEMSによるエネルギーの計測・制御と、定置用蓄電池の導入がGX ZEHの要件とされています。太陽光で発電した電気を蓄電池に貯めて、HEMSで消費タイミングを最適化することで、自家消費率の向上と電気料金の抑制、停電時の備えを同時に実現できます。

EV充電設備も推奨事項とされており、「創って・貯めて・賢く使う住宅」がGX ZEHの基本コンセプトといえます。

「GX ZEH」本格始動に向けて押さえるべきポイント

GX ZEHは、省エネ性能と設備要件を大きく引き上げる新しい基準であり、2027年4月以降の住宅供給に大きな影響を与えます。

ここでは、工務店や住宅会社が本格始動までに押さ えておきたい実務面のポイントを解説します。

標準仕様をGX ZEH水準に引き上げる

今後の新築供給を見据えると、自社の標準仕様そのものをGX ZEH水準に引き上げることが重要です。断熱等級6を前提に、断熱材の性能や厚み、サッシのグレード、高効率設備機器の型番などを「GX ZEH対応仕様」として整理し、どのプランでも一定以上の性能が担保される状態をつくります。

プランごとに性能や一次エネルギー削減率がばらつかないよう、仕様一覧やチェックリストで作成しておくと対応しやすくなります。

建築コストと補助金・単価戦略をセットで考える

GX ZEHでは、断熱強化や設備追加、太陽光発電と蓄電池の組み合わせにより、建築コストは従来より高くなる傾向があります。

一方で、GX志向型住宅や今後想定されるGX ZEH向けの補助金枠を活用すれば、実質負担を抑えた提案も可能です。

補助金を前提にした価格設計や、長期の光熱費削減効果を含めたライフサイクルコストの提案を行い、「初期費用」と「ランニングコスト」をセットで説明することが求められます。

認定・評価の実務フローを早めに整える

GX ZEHに対応するには、性能を証明する各種書類の取得フローを早めに整理しておく必要があります。

BELS評価書や住宅性能評価書、ZEHビルダーとしての実績報告など、関係する認定・評価の手順を洗い出し、社内で標準フローとして文書化することが有効です。

設計担当、申請担当、営業担当の役割分担を明確にし、どの案件でも同じ手順で進められる体制を整えることで、補助金申請や認定取得の抜け漏れを防げます。

2027年以降を見据えた情報収集と人材育成

GX ZEHの適用開始となる2027年4月までの期間は、制度や補助金の内容が段階的に更新される可能性があります。国や自治体、業界団体からの最新情報を継続的に収集し、自社の仕様や提案内容に反映していく仕組みづくりが重要です。

同時に、設計・営業・現場監督それぞれがGX ZEHの基準やメリットを自分の言葉で説明できるよう、社内研修や勉強会を実施すると、本格適用後の変化にもスムーズに対応しやすくなります。

記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:GX ZEHとは?
A:
GX ZEHは2025年9月に公表された新しいZEH定義で、2027年4月以降の一戸建てに適用予定です。従来のZEHより断熱や設備要件が厳し くなります。要点を先に整理しておきましょう。

Q:GX ZEHは従来のZEHと比べて、何が大きく変わりますか?
A:
断熱は等級6必須となり、再エネを除く一次エネルギー削減率も35%以上へ強化されます。太陽光に加えHEMSと定置用蓄電池が要件化され、運用まで含めた性能が重視されます。

Q:GX ZEHの主な適合基準は、どこを見ればよいですか?
A:
外皮は断熱等級6相当と地域区分別UA値を満たす計画が前提です。一次エネルギー消費量は再エネ除き35%以上削減(BEI0.65以下が目安)とし、太陽光・HEMS・蓄電池まで含めて評価します。

Q:GX ZEHの本格始動までに、住宅会社や工務店が押さえるべき実務ポイントは何ですか?
A:
標準仕様をGX ZEH水準へ引き上げ、プランごとの性能差を提示できるようにすることがポイントです。コストは補助金や光熱費も含めて説明し、BELS等の評価取得フローと社内研修を行うと本格始動後もスムーズに提案できるでしょう。

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執筆者

瀧澤 成輝(二級建築士)

住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。

大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。

特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。

編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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