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<新着>長期優良住宅やZEH住宅の性能を上回る⁉ GX志向型住宅ってなんだ

長期優良住宅やZEH住宅の性能を上回る⁉ GX志向型住宅ってなんだ

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、2024年11月22日の閣議決定で誕生した「GX志向型住宅」とは一体どのようなものかについて解説します。

なお、この日の閣議では2025年の住宅性能向上のための3省合同キャンペーン、総額4,480億円もの巨額な補助金事業も決定されましたから、住宅産業にとっては極めて重要な閣議であったと思われます。補助金についてはまた機会を改めて詳しく解説します。

最近よく聞くようになったGXとはグリーントランスフォーメーションの略で(大きな変革を伴う事業を実施するトランスフォーメーションはXで表現されます)、化石エネルギー中心の産業だけでなく、その上に成り立っていた社会構造自体も、クリーンエネルギー中心の構造に転換していくという、経済社会システム全体の改革への取り組みを示す言葉です。

目次[非表示]

  1. 1.GXは産業、消費、金融、経済連携外交までクリーンエネルギーを基盤とする社会構造の実現のこと
  2. 2.GX志向型住宅とは断熱等級6以上かつ一次エネルギー消費量削減率35%以上の住宅

GXは産業、消費、金融、経済連携外交までクリーンエネルギーを基盤とする社会構造の実現のこと

まずはGXについてその概要・考え方を記します。これまではガソリンや石油・石炭といった化石燃料に多くを依存して物を加工し、生み出し、利用することでさまざまな産業が発展してきた歴史がありますが、GXは燃やしてエネルギーに変換する際にCO2などの温室効果ガスを発生させてしまうものを極力使わず、風力、太陽光など再生可能エネルギーを中心とした産業構造を組成することを企図しています。

原子力も含まれますが、核のゴミを再利用する“核燃料サイクル”は実現のめどが立っていませんから、当面は風力、太陽光に水素およびアンモニア発電を活用するイメージです。

GXは資源・エネルギー部門では、S+3E(安全性:Safety、安定供給:Energy security、経済性:Economic efficiency、環境:Environment)を前提にエネルギー源の脱炭素化が推進されます。またそのエネルギーを利活用する産業部門では、新技術開発や新事業開発を通じてカーボンニュートラルに貢献する素材・サービスの提供、それらを通じた国際的な産業競争力の強化が求められ、企業・組織の活動を支える新たなファイナンスの確立・普及も必要とされています。

これらの活動を通じて、地球環境に優しくて安全な製品が社会に流通するわけですが、住宅産業においてこれらの総論および産業の循環を具体化したものがGX志向型住宅ということになります。

つまり、脱炭素に貢献する住宅を生産することに主眼を置いていた従来の長期優良住宅やZEH住宅とは発想が異なり、脱炭素社会の構築を踏まえて、その社会で演繹的に生産される住宅がGX志向型住宅です。

やや観念的ではありますが、環境を汚染したり、気候を大きく変動させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、技術、エネルギーなどを総称した“ゼロ・エミッション”の社会構造バージョンがGXのイメージです。

GX志向型住宅とは断熱等級6以上かつ一次エネルギー消費量削減率35%以上の住宅

前置きが長くなりましたが、GX志向型住宅=GXの実現に寄与する住宅という意味ですから、GXについての理解は必要不可欠です。そしてGX志向型住宅の定義は、まず「断熱性能等級が6以上」であることです。

2025年4月から義務化される省エネ基準適合住宅が断熱等級4、長期優良住宅やZEH住宅でも断熱等級5ですから、断熱等級6は熱貫流率(UA値)が0.46~0.28W以下と住宅性能先進国であるフランスやドイツ、韓国の水準に並ぶ高い断熱性能を有する住宅です。

また、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率が「35%以上」であることが必要です。再エネなしで35%以上削減ということは一次エネルギー消費量等級4の水準ですが、再エネありだと「100%(寒冷地では75%以上)」という極めて高い省エネ性能を有する住宅ということになります。

雑駁(ざっぱく)な表現になりますが、現状最も普及しているとされる高性能住宅であるZEH水準の性能を2倍程度上回る断熱性・省エネ性を有する仕様ですから、この住宅を建築・販売するには相応のコストの上積みが必要になることは言うまでもありません。

具体的には断熱性を高めるためにダブル断熱(内断熱と外断熱両方)を実施したり、気密性を極めて高く維持したり、樹脂製などの高性能断熱サッシおよびLow-Eトリプルガラスを使用したり、玄関や勝手口にも断熱ドアを採用する必要があるでしょう。

当然のことながら、太陽光パネル、蓄電システムを設置し、蓄電池の役割も果たす電気自動車への買い替えも検討することになります。全館空調システムおよび高効率給湯器も必要ですから、これらをすべてそろえると住宅の規模や広さにも寄りますが、1,000万円単位の追加コストが発生することになります。

ハウスメーカー最大手は、既にGX志向型住宅の開発に着手しており、これまでの集積で技術的にクリアできない問題は特にないとのことなので、後はコストの課題をどのようにクリアするかが最大のポイントになります。

このコストの課題を軽減するべく用意されたのが「子育てグリーン住宅支援事業」です。これは子育てと命名されてはいますがGX志向型住宅については、購入・建築した全世帯が対象で一戸当たり最大160万円が補助金として支給されることになっています。

住宅ローン減税においても元本上限は最大額の4,500万円(子育て&若者世帯は5,000万円)なので、13年間で最大409.5万円(同455万円)が控除されます。さらに、「給湯省エネ2025事業」において高効率給湯器の設置にも最大20万円の補助金が支給されますから、500万円前後の補助・控除が受けられます。

これらの補助金や制度を有効活用して、まだ販売・建築実績が確認されていないGX志向型住宅の第1号が2025年中に登場することを期待したいと思います。


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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