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新築住宅のローン控除には省エネ性能が必須 住宅性能と住宅ローン減税の関係とは

新築住宅のローン控除には省エネ性能が必須 住宅性能と住宅ローン減税の関係とは

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、2024年度の住宅ローン減税の仕組み、加えて住宅性能ごとに異なる控除額について解説します。

ご存じの通り、新築住宅については2023年以降住宅ローン減税の控除率が年間1%から0.7%に引き下げられた代わりに、控除期間が10年から13年に延長されており(中古住宅は10年に据え置き)、併せて住宅性能の水準によっても年末の住宅ローン元本の上限が異なりますから、住宅性能が高いほど減税効果が大きくなること以外に、補助金・助成金制度や不動産取得税・登録免許税・固定資産税の各軽減措置などもあって“何かとお得”であること、をユーザーにアピールして欲しいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.中古は減税の対象なのに新築は対象外…住宅ローン減税と住宅性能の関係とは
  2. 2.中古(既存)住宅は温室効果ガスを大量発生しないので住宅ローン減税の対象
  3. 3.新築住宅の住宅ローン控除も段階的に引き下げる傾向
  4. 4.子育て&若者世帯に対する控除維持は異次元の少子化対策の一環
  5. 5.今回のまとめ:住宅ローン減税は“住宅性能&購入者属性で適用が異なる”ことに注意

中古は減税の対象なのに新築は対象外…住宅ローン減税と住宅性能の関係とは

現行の住宅ローン減税制度で最も大きなポイントになるのは、省エネおよび断熱性能が現状の基準以下(各等級4を満たさない)である場合は、住宅ローン減税の対象外、つまり新築住宅を建てても買っても住宅ローンは一切控除されないという事実です。

非常に強いインパクトがある制度変更であったため、2023年中に建築確認を受けた住宅および2024年6月までに竣工した住宅については元本上限2,000万円で10年の住宅ローン減税を適用するとの“経過措置”が設けられたほどです。

この制度変更により、2024年以降に建築・販売される新築住宅は、事実上、住宅性能が省エネおよび断熱性能とも等級4以上であることが必須となりました。もちろん基準を満たさない住宅を建設することはできますが、住宅ローン控除が受けられない以上、恐らく誰も買ってはくれないでしょう。

中古(既存)住宅は温室効果ガスを大量発生しないので住宅ローン減税の対象

ちなみに、中古住宅については、省エネおよび断熱性能が等級4以上でなくても、元本上限2,000万円で10年の住宅ローン減税が受けられます。既に建築されていて温室効果ガスを今後大量に発生させる可能性の少ない中古住宅が減税の対象になるということは、住宅ローン減税は温室効果ガスの削減の程度に応じて控除額を段階的に引き上げる制度に変更されたと理解する必要があります。今後もこの方針に沿って制度設計が行われ、2050年のカーボン・ニュートラル実現に寄与する制度として活用されるものと考えられます。

新築住宅の住宅ローン控除も段階的に引き下げる傾向

このように、住宅性能の高さと住宅ローン減税の控除額には明確な関係性がありますが、2025年4月から、住宅だけでなくオフィスや倉庫などほぼすべての新築建築物に対して、省エネ基準への適合を義務付ける「改正建築物省エネ法」が施行されますから、これからの住宅もこの省エネおよび断熱性能が一定の基準を満たしていることが徐々に当たり前の世界になっていくことになります。

したがって、省エネおよび断熱性能の高い新築住宅についての建設・購入インセンティブはなくならないものの、省エネ基準適合住宅のシェアが増えるに連れて、住宅ローン減税における控除額も減額される方向で検討されていますから、住宅ローン控除をなるべくたくさん受けたいというユーザーは早めに(新築)住宅を購入したほうが良いでしょう。

子育て&若者世帯に対する控除維持は異次元の少子化対策の一環

今後、住宅ローン減税の控除額(年末の住宅ローン元本の上限額)は引き下げられる可能性がありますが、代わって19歳未満の子どもを有する子育て世帯、夫婦のいずれかが40歳未満である若者世帯(※)については、現状の住宅ローンの控除額は2023年までの水準が維持されています。

すなわち、長期優良住宅などの認定住宅については、2024年から元本の上限が4,500万円に引き下げられたのに対して、子育て世帯および若者世帯については、元本の上限が5,000万円までとなっています。したがって、13年間に受けられる住宅ローン控除額も最大409万5,000円から455万円へと45万5,000円優遇され、ZEH住宅、ZEH-M、省エネ基準適合住宅についても元本の上限に応じた同様の措置が実施されています。

これは現・岸田政権(政権が代わっても制度は維持されますから安心してください)が推進する“異次元の少子化対策”の一環で、補助金や医療扶助などの対策が予算(財源)ありきなのに対して、減税は控除のみで予算枠を確保する必要がないので、対策の表明に合わせていち早く2024年から実施されています。

※子育て世帯、若者世帯とも13年間の住宅ローン控除期間中に子どもが満19歳を迎えたり、夫婦とも40歳に達すれば、控除元本の上限は引き下げられます。

今回のまとめ:住宅ローン減税は“住宅性能&購入者属性で適用が異なる”ことに注意

日本の夏は最高気温が40度を超えることが珍しくなくなり、台風や大雨など自然災害の激甚化・広域化も加速していますが、これは長年にわたる温室効果ガスの放出による地球温暖化が主な原因とされています。これ以上の地球温暖化を防ぎ、安全な生活環境を次世代以降に残すためにも、温室効果ガスの削減が急務であり、その当面の目標が2050年のカーボン・ニュートラルの達成です。

住宅・不動産分野でも全体の14.4%にあたる約890万キロリットル(原油換算)の温室効果ガス削減が求められており、その削減のためには住宅性能の向上や既存住宅の省エネおよび断熱改修が必須であるため、住宅ローン減税も住宅性能の水準に応じた控除額の段階的な設定に変更されたという経緯があります。また2025年4月に施行される「改正建築物省エネ法」による全新築建築物の省エネ基準適合義務化も、同じ方向を目指すものと言えるでしょう。

ただし、この温室効果ガス削減は、現状必ずしも順調に進んでいるとは言い難く、今後削減目標達成のためにより高い基準が適用される可能性もあります。毎年末に公表される次年度の「税制改正大綱」はこれらの制度変更を詳細に示すものですから、毎年必ず関心をもって情報収集してほしいと思います。

新築住宅のローン控除には省エネ性能が必須 住宅性能と住宅ローン減税の関係とは​​​​​​​

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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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