<新着>建設業法に違反するとどうなる?違反した場合の罰則や処分と違反を防ぐ対策について徹底解説
目次[非表示]
- 1.建設業法の違反事例
- 1.1.1.建設業許可に係る虚偽申請(建設業法第3条ないし第10条等)
- 1.2.2.主任技術者等の配置義務違反(建設業第法26条等)
- 1.3.3.一括下請負(建設業法第22条)
- 1.4.4.労働安全衛生法違反
- 2.建設業法に違反した場合の監督処分および罰則
- 2.1.1.監督処分
- 2.1.1.(1)指示
- 2.1.2.(2)営業の停止
- 2.1.3.(3)許可の取り消し
- 2.2.2.罰則
- 3.建設業法に違反した場合の対処方法
- 3.1.1.立ち入り検査時の対応
- 3.2.2.改善状況報告書の作成
- 3.3.3.処分に不服がある場合の対応
- 4.建設業法に違反しないための対策
- 4.1.1.法令遵守体制の整備
- 4.2.2.専門家の協力
- 5.執筆者
建設業法の違反事例
建設業に従事する企業が守らなければならない法律の一つに建設業法があります。建設業法に違反すると、刑事罰のみならず、営業停止処分や建設業許可の取り消しといった行政処分を受ける可能性があります。
特に、建設業許可が取り消されると建設業を行うことができなくなるため、建設業法違反を未然に防ぐための対策を講じることが非常に重要です。
本解説では、建設業法違反となるケースや、違反が発覚した場合の対処法について紹介します。
1.建設業許可に係る虚偽申請(建設業法第3条ないし第10条等)
建設業許可を取得する際に虚偽の内容を申請することは、重大な違反行為です。たとえば、財務状況を過大に申告したり、実際には存在しない技術者を配置していると偽るケースが挙げられます。
特に役員等について、過去に変更があったにもかかわらず届け出がないまま許可を申請している事案が多いです。
2.主任技術者等の配置義務違反(建設業第法26条等)
建設業法では、適切な技術者を工事現場に配置することが義務付けられています。
特に、工事現場ごとに専任の主任技術者または監理技術者を配置しなければならない工事にもかかわらず、営業所の専任技術者が配置されていたり、同期間に別工事に重複配置されている事案のほか、営業所の専任技術者が遠方での工事に配置されている事案が多いです。
3.一括下請負(建設業法第22条)
一括下請負とは、建設業者が受注した建設工事を、そのまま下請け業者に丸ごと任せてしまう行為を指します。このような行為は、発注者からの信頼を損ねるだけでなく、施工に直接関与しない業者が介入することで不当な請負代金の中抜きが発生する可能性があります。
そのため、建設業法では一括下請負を禁止し、こうした問題を防止する仕組みを設けています。
4.労働安全衛生法違反
役職員が労働安全衛生法により刑に処された場合は監督処分を行うこととなります。刑を受けた事実については、労働局から監督行政庁に通報が届くことになります。したがって、建設業者は、建設業法のみならず労働関係の法規も遵守する必要があります。
(出典:令和4年10月岡山県土木部監理課建設業班「建設業法違反事例について」)
建設業法に違反した場合の監督処分および罰則
建設業者が建設業法や、その業務に関して他の法令に違反すると、建設業法に基づく監督処分の対象となります。監督処分には以下のとおり、監督行政庁による「指示」「営業の停止」「許可の取り消し」の3種類があります。
1.監督処分
(1)指示
建設業者が建設業法に違反すると、監督行政庁(地方整備局長や各都道府県知事のこと)の指示の対象となります。指示とは、法令違反や不適正な事実の是正のため、建設業者が具体的に取るべき措置を監督行政庁が命令するものです。
(2)営業の停止
建設業者が指示処分に従わないときには、監督行政庁による営業の停止の対象になります。もっとも、一括下請負禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他の法令に違反した場合などには、指示なしで直接営業の停止を命じられることもあります。営業の停止期間は1年以内の期間で監督行政庁が判断して決定することになります。
(3)許可の取り消し
不正の手段で建設業の許可を受けたり、営業の停止に違反して営業したりすると監督行政庁によって、建設業の許可の取り消しがなされます。一括下請負禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他の法令に違反した場合などで、情状が特に重いと判断されると、指示や営業の停止を待つことなく、許可の取り消しがなされます。監督処分として最も重い処分です。
2.罰則
建設業法に違反した場合、行政処分とは別に、罰則の適用があります。最も重い罰則だと、無許可での建設業の営業や、特定建設業者でない者が一定金額以上の下請け契約を締結して営業した場合、虚偽または不正の手段で許可を受けた場合などは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。
また、法人に対しては1億円以下の罰金となります。懲役および罰金の併科も情状によりなされることがあります。
(出典:国土交通省中部地方整備局)
建設業法に違反した場合の対処方法
建設業法に違反した場合、適切な対応を行うことで被害の拡大を防ぐことが可能です。
1.立ち入り検査時の対応
行政機関から検査が行われた際には、誠実に対応することが重要です。不備が指摘された場合には速やかに是正措置を講じるべきです。
2.改善状況報告書の作成
指摘事項に基づき、社内で再発防止のために必要な措置を検討し、改善状況報告書の作成を行います。
3.処分に不服がある場合の対応
処分内容に不服がある場合は、行政不服審査請求や訴訟を通じて異議を申し立てることができます。この際には、弁護士等の専門家の助言を受けることが推奨されます。
建設業法に違反しないための対策
建設業法に違反しないためには、事前の準備と体制整備が重要です。
1.法令遵守体制の整備
社内で法令遵守に関する教育を徹底し、定期的に社内監査を行うことで、潜在的なリスクを早期に発見し是正することが可能です。
特に国土交通省が定める「建設業法令遵守ガイドライン」を参照して遵守できているかを確認していくことがいいでしょう。
(出典:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」)
2.専門家の協力
法令遵守体制の構築には、行政書士や弁護士など、建設業法に詳しい専門家に相談し、支援を得ることが有効でしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設業法に違反した場合、どのような処分を受ける可能性がありますか?
A:建設業法違反の場合、監督行政庁による「指示」「営業の停止」「許可の取り消し」の3種類の監督処分を受ける可能性があります。特に、営業停止や許可の取り消しは建設業の継続に致命的な影響を及ぼします。また、行政処分とは別に罰則も適用され、無許可営業や虚偽申請などの重大な違反行為には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)が科されることがあります。
Q:建設業法に違反しないための効果的な対策は何ですか?
A:建設業法違反を防ぐには、法令遵守体制の整備が重要です。具体的には、従業員への法令教育、定期的な社内監査の実施、ガイドラインの活用などがあります。また、行政書士や弁護士などの専門家に協力を依頼し、法令遵守体制の構築や改善を支援してもらうことも有効です。これにより潜在的なリスクを早期に発見し、違反を未然に防ぐことができます。
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執筆者
弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)
単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。